まだまだ暑さが残る夏、秋に向けて新しいことを始めたい。そんなあなたのために、金継ぎ体験をご紹介。古くは縄文時代、漆を使った土器の修復から始まり、茶道が隆盛を極めた室町時代に技法が確立。そして江戸時代に陶磁器の修復需要が増えたことで大衆文化となった金継ぎ。傷や割れを隠すのではなく、器の“景色”として楽しむという金継ぎの世界を、少し覗いてみませんか。後編では、金継ぎの工程から体験内容をお届けします。
【教えてくれる人】金継ぎ作家・金継ぎ教室主宰:林聖子さん
金継ぎ作家・金継ぎ教室主宰。鎌倉彫なども手掛ける作家に師事して金継ぎを習得後、漆芸・蒔絵を修める。現在は金継ぎをベースに幅広い漆芸表現を展開。東京都中央区にて教室を主宰。
Instagram:@lin_shengzi
基本の「金継ぎ」手順
1.接着
割れた器を接着する。最初に断面に軽くサンドペーパーをかける。小麦粉と水と漆を混ぜて粘りのある状態にした麦漆(むぎうるし)を竹べらを使い、断面に薄くまんべんなく塗る。しっかり圧着し、ずれがないか確認してテ―プで固定する。
2.錆付け
器の欠けや接着面に錆漆をつける。錆漆は、砥の粉(砥石の粉)と漆を混ぜたもので、欠けや割れの隙間を埋めて土台となる。錆漆が乾いて硬化したら、彫刻刀ではみ出た錆を整え、元の器の形になるように水研ぎをする。
3.錆固め
錆び付けを完成させる。水研ぎした錆漆の上から筆で生漆を塗る。錆漆にある微細なムラに生漆を浸透させ、錆漆をしっかり固める。生漆は漆の樹液を濾したままの天然の漆だ。水分が多いため、浸透性が良く、硬化しやすい。
4.下塗り
水研ぎをし、筆を使って錆の上から呂色漆で描く。呂色漆は生漆の水分を飛ばし、鉄分を加えた黒色の漆。厚みのある塗膜を作る効果があり、下地に水分が入るのを防ぐ。下塗り、乾かす、水研ぎの順に2~3回繰り返す。
5.地塗り
水研ぎをし、筆を使って呂色漆の上から、黒い線が隠れる様に絵漆で描き、金を蒔くまで少し乾かす。絵漆を使うのは金で蒔く場合で、金の発色をよくするためだ。銀粉や真鍮など、使う金属によって、下に描く漆の種類は異なる。
6.紛蒔
真綿にたっぷりと金粉を含ませ、クルクルと円を描くようにして金が輝きを放つまで優しく磨き上げる。蒔いた後は余分な金粉を払い落として整える。そのまま金粉がしっかりと定着するまで1~2週間ほど静かに休ませる。
7.完成
流れるように美しいラインが器に新しい命を吹き込む
主な工程は6つだが、器の破損状況によってもステップが変わる。
まずは欠けの器に竹のヘラで錆漆をつけてみる。これがなかなか難しく、盛っては削り、削っては盛るを繰り返すうちに、器本来の形を見失いそうになった。
蒔絵筆はいざ持ってみると、ほ、細い!しかも漆は粘度があって、ゆっくり筆先に降りてくるので、「1mm1秒くらいの気持ちで線を引いてね」という。

思った通りの細い線なんて、とても引けません(笑) 冷や汗ものだ。そんな時でも、林さんは優しかった。
「細い繊細な線だけがいいわけではないのよ。線が太くとも味わいや温かみがあればいいの。金継ぎには、芸術的なセンスや器用さは必ずしも必要ではないのです」と安心させてくれる。
仕上げの粉蒔きはたまらなく楽しい。真綿をクルクルと走らせると、それに応えて光が差すように金が輝く。割れた器が復活した満足感は、まさに感無量だ。

壊れたものに新しい価値を見出す金継ぎのマインドは、今や海外でも注目の的。千年続く技法でありながら、実は意外とモードという、和の趣味なのだ。
撮影/松田麻樹、取材/岡本ジュン
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
※画像ギャラリーでは、金継ぎ体験の画像をご覧いただけます。
※月刊情報誌『おとなの週末』2026年9月号発売時点の情報です。
■おとなの週末2026年9月号は「ぶっかけと冷やかけ」

■『おとなの週末』2026年10月号は「いま飲みたい焼酎96本」










