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トマトはどう食べる派?

暑い季節、よく冷えたトマトって本当に美味しいですよね。噛むと皮がパツンと弾け中から旨みの強いゼリーがとろりと出て、甘酸っぱさとほんのり青臭さにキュンとする、そんな瞬間もまた魅力的です。

そんなトマトについて、埼玉県羽生市で『Bonz farm(ボンズファーム)』を営む大貫伸弘さんと、埼玉県行田市『PAZZO-DI-PIZZA GYODA(パッツォ・ディ・ピッツァ・ギョーダ)』のオーナーシェフ・岡田英明さんにお話を伺いました。

料理人から熱い視線が注がれる『ボンズファーム』の大貫伸弘さん(右)と料理を提供してくれた『PAZZO-DI-PIZZA GYODA』の岡田英明さん
※撮影のため、特別にマスクを外しています

――イタリアンのシェフである岡田さんにとってトマトとはどういう存在ですか?

岡田さん「トマトは子どもの頃から日常的に食べていました。冷蔵庫から出して洗ってガブリと、シンプルにそのまま食べるのがいちばん好きですね。いまはちゃんと切って食べてますが(笑)。常温のほうが香りなどは強く感じられますが、暑いときにはキンキンに冷やして食べると美味しいと思います」

大貫さん「僕も冷やしたものをガブッと食べるのが好きです。我が家では子どもの頃、トマトには塩とマヨネーズをかけていました

――子どもの頃、私の家では塩をかけていましたが、叔母がトマトに砂糖をかけて食べていたことに子どもながら衝撃を受けたことを覚えています。でもある時やってみたら、デザート感覚になって「これはこれで美味しい!」と思いました。

大貫さん「昔のトマトは今ほど甘くなかったということもあるのかもしれませんね」

――最近のトマトは昔に比べて味も種類も多様になってきているので、個人的にはそのまま食べることがほとんどです。ただ、トマトが食べられないという方も中にはいますよね。

大貫さん「昔ながらの味わいのトマトは、苦手とおっしゃる方ほど意外と食べられたりします」

――へぇ! 青臭くて食べられないって言いませんか?

大貫さん「そういう方はあのゼリー感とか食感がダメと聞きますね。最近は子どもも食べやすいとかで、ゼリー状が少ない品種が出てきています」

岡田さん「ゼリーが美味しいのに! あそこだけ食べたい」

大貫さん「それはそれでどうかと思いますが(笑)、個人的には酸甘のバランスが整っているほうが好みです」

――いっとき、野菜でも果物でも高糖度一辺倒だった傾向がありました。ここのところは揺り戻しがきて本来の味を求めるようになってきたかなと感じますが。

大貫さん「本当は『メニーナ』という、酸味と甘味のバランスがいい中玉の品種を作りたいんです。お年を召した方ほど“コレよ、コレ”と喜ばれます」

岡田さん「大貫さんのところの『メニーナ』は、昔ながらの懐かしい味がしてすごく美味しいんです。むしゃむしゃと食べちゃうトマトです」

大貫さん「露地栽培なので、なかなかうまく出来ないこともありまして。最近はミニトマトのほうが人気なので、ミニトマト作りに浮気中です(笑)」

――ミニトマトは手間なくまるごと食べられますもんね。

岡田さん「でも『メニーナ』はお客様から評判がよかったので、来年はよろしくお願いします!」

大貫さん「がんばります」

家庭でもできるトマトの美味しい食べ方

――『PAZZO-DI-PIZZA GYODA』では、トマトはどのように提供していますか?

岡田さん「ミニトマトはランチのサラダに入れたり、カットしてピッツァに入れたり、それこそミニトマトのピッツァもあります。パスタに色味を加えたい時に入れるときもありますし、普段からたくさん使いますね。先ほどお話しした冷やしトマトですが、アンチョビとオリーブオイルだけですごく美味しいんです」

「色々ボンズトマトとアンチョビ」650円

――そのシンプルな組み合わせは、おうちでもできるのでいいですね。トマトの旨み成分はグルタミン酸でしたっけ?

岡田さん「はい、グルタミン酸はゼリー部分に多く含まれているそうです。アンチョビにはイノシン酸が含まれているので、旨みと旨みの相乗効果が楽しめます

――ちなみにこれだとお酒は何が合いますか?

岡田さん「白ワインはもちろんですが、今の時期は日本酒のソーダ割りをオススメしています。熟成系の日本酒を炭酸で割って出すと相性抜群です」

――さらに日本酒のふくよかさを足す感じですね。
シンプルなトマトソースの「ポモドーロ」は、ピッツェリアならではの美味しさです。

岡田さん「うちの『ポモドーロ』は、窯で焼いたトマトをトッピングして崩しながら食べていただきます。他では食べられないとそれを求めて来てくださる方もいる人気メニューです。窯で焼くことでよりトマトの味が凝縮されます」

「ボンズトマトでパッツォ風ポモドーロ」980円

大貫さん「トマトは焼いたり揚げたり、油を絡めつつ火を通したほうが味が濃くなりますし、旨みは強くなります。天ぷらなんかも美味しいですよ」

――フレッシュなままで食べることがほとんどなのでやってみたいと思います。
岡田さんはピッツァにBonzさんの「すずこま」という加熱調理用のクッキングトマトを使っているんですね。

岡田さん「うちの生地は小麦の風味が強いので、セミドライトマトにして濃厚な味わいに仕上げました。バランスがいいと思います」

大貫さん「『すずこま』は普通のトマトに比べて身が詰まっていて水分量が少なくて果肉が多い。なので、加熱調理をしたときにより濃縮されるので、ソースやケチャップにしたり、岡田さんのように焼くなどして使うのが正解だと思います。生で食べられないこともありませんが瑞々しさはないですね」

――私も「すずこま」を購入し、調味料は塩だけで加熱してトマトソースにしましたが、本当に味が濃くて甘みがたっぷりで驚きました。味見だけで食べ切りたくなるほど美味しかったです。

「ボンズファームの色々プチセミドライトマトのピッツァ」1280円

※『PAZZO-DI-PIZZA GYODA』のトマトは、入荷により変わることがあります。

トマトの旬は7〜8月! 『PAZZO-DI-PIZZA GYODA』へ急げ‼

――大貫さんは「旬であること」「鮮度が良いこと」「美味しい品種を育てること」をモットーに露地栽培を行っています。8000種類ともされる品種数があるトマトですが、今は何を作っていますか?

大貫さん「先ほどお話しした通り、ミニトマトがメインです。今年はいわゆる赤いミニトマトの『千果(ちか)』、甘みが強い『オレンジ千果』と『イエローミミ』、濃厚な旨みがある『アイコ』、また異なる色味でいうと『トスカーナバイオレット』は紫色でブドウのような味がすると言われますが、それくらい甘いという例えですね。皮が薄いので食べやすいと思います」

オレンジ千果

――美味しかったです。

大貫さん「先程挙げた『トスカーナバイオレット』のような皮が薄い品種は、雨が降ると水を吸いすぎて中から爆発したかのように畑で割れてしまいます。露地栽培をしている方は、雨が降るとなると青いうちに収穫して、追熟させて赤くなったら出荷する人も多いのではないでしょうか」

――大貫さんは?

大貫さん「割れたらドンマイです!」

岡田さん「前向き(笑)」

――でも出せなくなっちゃうわけですものね。悲しい。それでも極力、樹になっている状態で熟成させたい?

大貫さん「そうですね。樹で熟させたほうが美味しいし、栄養価が高いと思います。
正直なところ、自分自身で両方をやってみて比べたわけではなく、勉強した話ですが」

――樹で長く成長させる分、栄養がたくさん蓄えられるんですか?

大貫さん「そうだと思います。その他に中玉トマトでは、『フルティカ』と『シンディースイート』を作っています」

――「フルティカ」はジューシーで甘いし、こちらも味が濃いと思いました。一方の「シンディースイート」は甘みもあるけど、ちょっと青臭さというか昔っぽさもあるようなバランスの良さが魅力的だと感じましたね。
様々なこだわりをもって野菜作りと向き合う大貫さんですが、トマトはいつ頃まで収穫できる予定ですか?

大貫さん「ミニトマトは早めに植えていたので7月末くらいまでです。中玉トマトは6〜7月にたくさん収穫できたあと、すごく暑くなると樹が弱ってしまうのですが、それを過ぎて落ち着いたら8月末頃にもう一度ピークが来るんです。その時なっている実が赤くなるのを狙っています。ただし、いいものがずっと穫れ続けるわけではないので、やはりいちばん美味しいのは7月いっぱいくらいまでだと思います」

――おぉ。もう名残の時期に入っているのですね。Bonzさんのお野菜などをいただける『PAZZO-DI-PIZZA GYODA』へ早めにおいでください。トマトの歴史や栽培について、保存方法などは後編へ続きます。

後編「美味しいトマトの見極め方と保存方法」はこちら!

■Bonz farm(ボンズファーム)
米作りが盛んな羽生市で数少ない野菜農家。飲食にまつわる仕事に従事したのち、味がしっかりしていて、かつ日持ちすると料理人から絶賛を受ける茨城県の「久松農園」で修業し、2015年に独立。露地栽培・無農薬で少量多品目(約100種類・約50品目)の野菜を作り、受注収穫で飲食店を中心に卸している。いずれは野菜がメインの飲食店を開くのが大貫さんの夢。※農場での直販は行っていません
https://ja-jp.facebook.com/pages/category/Agricultural-Cooperative/Bonz-farm-909476659074224/
■PAZZO-DI-PIZZA GYODA(パッツォ・ディ・ピッツァ・ギョーダ)
2021年8月に創業4周年を迎えた国産ピザ窯を備えるピッツェリア。地元・行田市の農家とオリジナルの小麦の生産に取り組むなど、埼玉県内の生産者と積極的につながり地産地消でシンプルな中にもヒネリのきいた料理を提供すると評判。ドリンク類のラインナップも垂涎モノだ。

[住所]埼玉県行田市佐間2-14-16
[電話]048-507-5917
[営業時間]11時〜15時LO、18時〜21時LO
[休日]水
[交通]JR高崎線ほか吹上駅よりバスで約12分、「佐間団地」下車徒歩3分
※記事中の価格はいずれもディナータイム価格
https://twitter.com/pdp_gyoda

参考文献:『からだにおいしい 野菜の便利帳』(板木利隆 監修/高橋書店)、『そだててあそぼう トマトの絵本』(つかだ もとひさ へん・つかもと やすし え/農文協)、『しぜんにタッチ! おどろきいっぱい! トマト』(野口 貴 監修/ひさかたチャイルド)

取材/市村幸妙

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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市村 幸妙
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