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800年受け継がれてきたという「豆腐の味噌漬」

山うにとうふ

熊本県五木(いつき)村。「五木の子守唄」で知られるこの山間部の村に、山うにとうふを製造・販売している「五木屋本舗」があります。1991(平成3)年、代表取締役の橋本悦治さんが、過疎化が進む郷里の村を盛り上げていきたいという思いから“脱サラ”して戻り、後の五木屋本舗となる五木かやぶき茶屋を開業。特産品の販売を始め、2年後に五木屋本舗を設立しました。

五木村は人口1028人(2021年4月末現在)で、65歳以上の割合が49.2%というほぼ“限界集落”の自治体。総面積の約96%は山林という自然豊かな村です。五木屋本舗の橋本貴也常務によると、約800年前に「壇ノ浦の戦い」で源氏に敗れた平家の一族が、五木や隣接する五家荘(八代市)一帯に落ち延び、食料の確保が厳しいことから保存食づくりを始めたと伝わっているとのことです。中でも、「豆腐の味噌漬」は貴重なたんぱく源として重宝されたそうです

“カチカチ”をソフトな味わいに

もろみ味噌に半年間漬け込み、発酵熟成

昔から伝わる豆腐の味噌漬は、豆腐を1カ月間味噌に漬け込むことで作られます。この製法では、「豆腐が堅くなり、正直に言ってなかなか食べづらい」(橋本常務)ものでした。そこで、新しいタイプの豆腐の味噌漬の開発に着手。試行錯誤の末、半年間にわたって長期熟成することで、やわらかく口当たりのよいこれまでにない食感の豆腐の味噌漬が生まれました。96(平成8)年のことでした。

当初の商品名は、「豆腐の味噌漬ソフトタイプ」。売り出したところ、その新食感が受け、大きな反響がありました。ある客が、こう感想を口にしたそうです。「海にある“うに”に(食感が)似ているね」

「いい商品名がないかと考えていたこともありましたので、すぐに名前を切り替えました」(橋本常務)。自然豊かな山間で作られていることから、「山うにとうふ」の名称に決まったそうです。好評を受け、しょうが味やゆず味、唐辛子味など味のバリエーションを増やしていき現在は計6種類。ただ、この最初に作られた「山うにとうふ オリジナル」が、不動の人気1位とのことです。

コクがあってまろやか ご飯のお伴、お酒の“あて”に最適

ご飯が進みます

その自慢の逸品を味わいます。正方形で一辺約8cm、厚さは1cmほど。容器からお皿に移し、切り分けましたが、濃厚なヨーグルトのようなやわらかさです。そのままで、まずは一口。コクがあって、なめらか。味噌のまろやかな甘さが絶妙です。ブラインドで食べると、豆腐の味噌漬とは想像できないような味と食感です

発酵、熟成されているからでしょうか、酒粕のような印象です。個人的な記憶をたどると、佐賀・呼子の名産「松浦漬」の酒粕部分に似ています。

山うに豆腐のオリジナルは、五木村を流れる川辺川の伏流水と九州産大豆「ふくゆたか」を100%使い、独自にブレンドしたもろみ味噌に漬け込まれます。豆腐と味噌だけとは思えない、重厚で複雑な味わいです。これは、温かいご飯に合います。橋本常務もご飯に添える食べ方をおすすめしていました。たしかに、ご飯が進みます。うん、うまい!!

お酒の“あて”にも、もちろん合います。きゅうりなどに付けるのもよいですが、箸で少しずつつまみながら、日本酒をちびちびというのも楽しいと思います。

日本酒に最適

熊本を代表する名品に

銀座熊本館で販売されている山うにとうふ

山うにとうふは、東京都内では熊本県のアンテナショップ「銀座熊本館」などで扱っていますが、五木屋本舗のオンラインショップでも購入できます。1個648円(税込み)と安くはありませんが、食べれば納得できます。

過疎が進む故郷の味を、熊本を代表する名品に――。そして、地域に還元したい――。山うにとうふには、そんな創業者の熱い思いが詰まっています。

「銀座熊本館」の店舗情報

銀座熊本館

1Fアンテナショップには、農産、畜産、水産加工品、菓子類、焼酎など約1500種類の特産品が並んでいます。

[住所] 東京都中央区銀座5-3-16
[電話]03-3572-1147
[営業時間]11時~19時 ※営業時間は異なる場合があります
[休日]第1月曜日、年末年始
[交通] JR有楽町駅数寄屋橋方面出口から徒歩5分、地下鉄銀座線銀座駅B9出口から徒歩1分

撮影・文/堀晃和

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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おとなの週末Web編集部 堀
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