私たちの体は常にウイルスや雑菌などの外敵にさらされ、さらに体内では細胞が変異して悪さをすることもあります。それにもかかわらず、健康でいられるのは免疫と呼ばれるシステムが正常に働いているからです。免疫の機能が低下すると風邪をはじめとした感染症だけではなく、がんなどの生命を脅かすような疾患の罹患リスクも高まります。
では、体を守る免疫システムを正常に機能させるためにはどうしたらいいのでしょうか? ここでは、インフルエンザをはじめとした感染症が流行する季節に知っておきたい免疫の基礎知識と、免疫を高める方法を考えていきましょう。
栄養監修/篠原絵里佳 (管理栄養士) 、文/吉川幸子(健康系ライター)、写真/写真AC
免疫力の低下は万病のモト
免疫とは、外から体内に侵入してきたウイルスや雑菌、変異した細胞などを攻撃することで病気から体を守るシステムです。免疫には、自然免疫と獲得免疫の2種類があります。
自然免疫は、ウイルスなどの敵を感知したら瞬時に攻撃をしかける速攻免疫で、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)やマクロファージと呼ばれる細胞がその代表格です。自然免疫が敵を退治できれば発症することなく難を逃れることができます。難点は、戦闘力がさほど高くないということです。
そこで登場するのが獲得免疫です。すでに戦いを終えた自然免疫から送られた敵の情報を記憶して抗体を作って敵を退治します。攻撃力は自然免疫よりもはるかに強力ですが、抗体を作るまでに時間がかかるのが難点です。ただし、一度記憶した敵に関しては抗体ができているため、次に同じ敵が侵入してきた時には効率的に攻撃できるようになります。その結果、重症化を防ぐことができるのです。
獲得免疫が敵と戦っている時はその代償として発熱などの症状が表れます。風邪をひいた時に解熱剤を飲まないほうがいいと言われるのは、薬で熱を下げてしまうと獲得免疫の働きが低下してしまい、回復が遅れてしまう恐れがあるためです。
免疫力アップの鍵を握る「腸活」には発酵食品!
腸は免疫を司る臓器で、免疫細胞の約7割が腸に集まっていると言われています。腸には常に食べ物などを介して雑菌やウイルスなどが侵入してきます。それらが体に悪さをしないように常に免疫が監視をして、不測の事態が発生したらすぐに対処できるようにスタンバイしておく必要があるからです。
そして免疫は腸からの情報をもとに働いているため、腸が不調だと免疫が正常に働くことができなくなってしまうのです。つまり、免疫力を高めるためには腸のコンディションを整えて活性化させるための「腸活」が必須ということになります。
腸活の土台となるのは、腸内にすみつく善玉菌です。善玉菌が増えることで免疫細胞が活性化されるためです。そこでまず行いたいのが、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を含んだ発酵食品を食べて腸に善玉菌を届けることです。
発酵食品には、ヨーグルト、チーズなど動物性の食品を発酵させたものと、納豆、味噌、キムチなどの植物性の食品を発酵させたものがあります。いずれも腸内の善玉菌を増やす効果があることがわかっています。理想は、1日3食のなかに両方の発酵食品をバランス良くとり入れること。それで定期的に腸に必要十分量の善玉菌を届けることができます。