シラウオの生食による顎口虫(がっこうちゅう)の感染が話題になっています。アニサキスに関してはたびたびニュースとなっているため、ご存じの方も多いと思いますが、顎口虫は初耳という方が多いのではないでしょうか?
そこで今回は、アニサキスに負けず劣らず恐ろしい症状を引き起こす顎口虫についてご紹介したいと思います。
文/田村順子(フードライター)、写真/写真AC
川魚の生食が感染源の顎口虫とは?
顎口虫とひと口に言っても、さまざまな種類があります。現在国内で確認されているのは、有棘(ゆうきょく)顎口虫、剛棘(ごうきょく)顎口虫、日本顎口虫、ドロレス顎口虫という4種です。
いずれかの顎口虫を有した餌を食べたカエル、サンショウウオ、ヘビ、淡水魚類が宿主となり、さらにそれらを食べたネコ、イヌ、ブタ、イノシシ、イタチなどが最終宿主となるのが一般的です。
人間に感染する主な原因は、淡水魚の生食です。ドジョウ、ブラックバス、フナ、ライギョ、ヤマメ、コイ、イワナ、ニジマス、ヒメマス、ナマズなどの淡水魚の生食による感染が全国で確認されています。
新鮮さとはまったく関係がないため、新鮮なものなら安心というわけではありません。
また、マムシやヘビの生食など、いわゆる「ゲテモノ食い」も顎口虫症の原因となります。そのため、両生類、爬虫類などを食する習慣のある海外でゲテモノ食いをした旅行者が感染するといったケースも見られるようです。
東南アジア諸国では、ライギョなどの川魚の刺身などを提供する飲食店も多いようですが、これも感染源となるため、安易にそういったものは口にしないようにしましょう。
目や脳などにも入む!? 顎口虫を甘く見てはいけない
顎口虫も他の寄生虫感染の症状と同様、発疹、発熱、嘔吐、下痢などのアレルギー症状が現れます。アニサキス感染などと大きく異なるのは、胃の壁を食い破って体内を動き回ることです。顎口虫が皮膚の下を移動してその跡がミミズ腫れになる「クリーピング病(皮膚爬行症)」を発症することもあります。
ときには目や脳などにも入り込んで、失明や麻痺症状を引き起こし、最悪の場合は死に至ることもあります。
現在も駆虫薬による摘出以外に治療法はなく、イベルメクチンなどが使用されることもあるようですが、特効薬がないのが現状です。つまり、軽く見てはいけない寄生虫なのです。
顎口虫を死滅させるには「加熱」が一番
顎口虫による食中毒を防ぐ最善の策は、しっかり中まで加熱して食べることです。生焼けも危険です。
加熱以外では、マイナス20℃以下、3~5日間冷凍をすると死滅させることができることがわかっています。ただし、家庭用の冷凍庫は通常、マイナス18℃以下に設定されているので、自宅で冷凍をして生食することはお薦めできません。
また、お酢などの調味料によって死滅しないことがわかっています。