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『与志乃』や『奈加田(なかた)』(2015年に閉店)とともに”銀座御三家”と称された高級寿司店『銀座久兵衛』が2025(令和7)年で創業90周年を迎える。陶芸家で食通の北大路魯山人(きたおおじ・ろさんじん、1883~1959年)のほか、“小説の神様”と呼ばれた作家の志賀直哉(1883~1971年)やアメリカのオバマ大統領、ハリウッド映画俳優のトム・クルーズなど、数々の著名人が訪れた同店は1935(昭和10)年12月1日、東京・銀座の一角に誕生して以来3代に渡って暖簾を守り続けてきた。そんな店を代表するメニューといえば、日本初の「軍艦巻き」だ。当時のエピソードとともに『銀座久兵衛』ならではの寿司のこだわりに迫っていきたい。

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北大路魯山人の作品を展示する「魯山人ミニギャラリー」

「魯山人ミニギャラリー」 画像提供・銀座久兵衛

『銀座久兵衛』を訪れると、まずその洗練された和モダンな空間に息を呑む。創業当時から常連客であり、初代店主の友人でもあった北大路魯山人の作品を展示する「魯山人ミニギャラリー」を含め、5階建てで構成された寿司屋は、椅子席カウンターや和室など、階ごとに異なる趣で食事が楽しめる。

ちなみにかつてあった旧本店を設計したのは、フランスを拠点に活躍した建築界の巨人、ル・コルビュジエ(1887~1965年)に学んだ日本を代表する建築家、前川國男(1905~86年)だった。

今回足を運んだのは、臨場感あふれる職人の手さばきを眺めながら寛げる2階の「掘り炬燵カウンター」だ。照明は柔らかな光で構成され、寿司カウンターに立つ職人の所作を引き立てる、舞台装置のような役割を果たしている。

木挽町の修業時代の愛称が店名に

都会の喧騒とは一線を画す『銀座久兵衛』の外観 画像提供・銀座久兵衛

『銀座久兵衛』という店名は、初代の今田壽治(いまだ・ひさじ、1910~85年)さんが若き頃に修業していた木挽(こびき)町(現在の東銀座)の寿司の名店『美寿志(みすじ)』で働いていた時の愛称「久兵衛」からとったものだそうだ。

今回は壽治さんが開業に至るまでの経緯を、二代目の今田洋介さん(80)に伺った。

「当時、寿司と言えばお持ち帰りが主流でした。父は修業先で一人前と認められると、花街の料亭へ出向き、お客様の元で寿司を握るようになったそうです。そんなある日、新橋で財界人が集まる宴会があり、お客様から何か芸をやってみろと言われたものの、父は寿司を握りにきたんで芸を見せに来たんじゃねえと断り、酒だったらなんぼでも飲んでやると、大鉢に注がれた酒を一気に飲み干してしまったそうです」

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『浅野セメント』創業者の強烈な後押しで寿司屋開業を決断
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中村友美
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