海軍の軍艦をイメージした寿司、一躍人気メニューに
試行錯誤の結果、誕生したのが海苔で囲ったシャリの上にウニを乗せた「軍艦巻き」である。この形状であれば、口に運ぶまでに寿司が崩れることもない。日本軍が真珠湾攻撃に成功した時代背景もあり、海軍の軍艦をイメージした寿司は、たちまち人気メニューになったという。
「一方で伝統にこだわる同業者からは揶揄され、NHKラジオでは、コメンテーターにウニを寿司にするゲテモノが出てきたと非難されたそうです。そんな批判の声もあがるなか、父はめげずにイクラやアオヤナギの小柱をはじめ、握るのには難しいネタを活かした軍艦巻きを次々と考案していきました」
手から手へ手渡すことで、海苔の食感を生かす
『銀座久兵衛』では、今でもこの「軍艦巻き」を目当てに訪れる客も多い。一見簡単そうに見えるシンプルなメニューだが、提供する時のこだわりがあるそうだ。
「寿司は食感が命なので、ウニとシャリの水分で海苔が湿ってしまっては台無しです。お客様が召し上がる時間を計算して、提供する直前に握り、手から手へとお渡しすることを心掛けています」
こうすることで、海苔のパリパリとした食感を最大限に引き出すことができるという。ゲストは受け取ったら、間髪いれず口に入れるのが寿司をおいしくいただくコツなのだ。この日も甘みを感じるバフンウニのとろけるような食感と、パリっとした海苔の食感のコントラストを存分に感じることができた。