旬の食材は食べて美味しいだけではなく、栄養もたっぷり。本コーナーでは魚や野菜、果物など旬食材の魅力をご紹介します。
さて、今回のテーマとなる食材は?
文/おと週Web編集部、画像/写真AC
■不思議な実
正解:ヒシの実
難易度:★★★★★
中国や台湾ではおなじみの食材です
ヒシの実とは、現在の植物分類ではミソハギ科(古くは独立したヒシ科)に属する、池や沼などの穏やかな淡水域に自生する一年草の水草「ヒシ」がつける果実です。
かつては日本各地のため池や水路でヒシの実が採られ、おやつや保存食として親しまれていました。しかし、現在では採集して食べる文化が薄れ、食材として目にする機会も少なくなっています。
水面に放射状に広がる、縁がギザギザとした葉。その葉の間から伸びた花柄の先に、ヒシの実はつきます。夏に小さな白い花を水面に咲かせ、花が終わると花柄が下を向いて水中へ沈み、その先で実が少しずつ大きくなっていきます。
旬の時期は、9月から11月頃。秋の深まりとともに実が熟して殻が黒っぽく硬くなり、実にしっかりとデンプン質を蓄えて美味しくなります。
産地として知られているのは佐賀県や福岡県を中心とする九州地方です。
とくに佐賀県神埼市周辺には、「クリーク」と呼ばれる農業用水路が網の目のように張り巡らされています。この地域に伝わる在来のワビシは、現在も大切な特産品として守られています。
秋になると、「ハンギー」と呼ばれる大きな桶に乗り、水草をかき分けながら一つひとつ手作業で実を摘み取ります。このヒシ採りの風景は、神埼市ならではの秋の風物詩です。
真っ黒な殻と、悪魔の角やコウモリを思わせる少しグロテスクな見た目ですが、硬い殻を割ると、中から真っ白な実が現れます。
食べると栗やサツマイモに似た、ホクホク、ねっとりとした食感があり、噛みしめるほどに素朴で優しい甘みが広がります。
塩ゆでにしてそのままお茶請けやおやつとして食べるのはもちろんのこと、むいた実を炊き込みご飯にする「ヒシの実ご飯」も秋の絶品郷土料理です。
ほかにも、細かく刻んでかき揚げの具にしたり、鶏肉やレンコンなどの根菜類と一緒に炒め物にしたりしても美味しくいただけます。
中国や台湾でも「菱角(リンジャオ)」と呼ばれ、街角の屋台でゆでたものが量り売りされていたり、炒め物の具材として日常的に愛されている人気の食材です。
スーパーに並ぶことはめったにないのですが、産地の直売所やインターネットのお取り寄せなどで購入することが可能です。



