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SLやまぐち号と、津和野駅近くで食べるさくさくの「源氏巻」/1979年~2017年

2019年には、走り始めて40年という、SLやまぐち号。
終点の津和野駅に行ったとき、SL運転日にしか食べられない、さくさくの「源氏巻」を楽しみに、必ず寄る和菓子屋さんがあります……。

国鉄からSLが牽引する列車が廃止されたのは1975年。
操車場で細々と入れ替え作業をしていた機関車も、1976年になくなりました。
もう本線上を走るSLは見られないと思っていたのですが、その直後に、SLを復活させて山口県の山口線を走らせるという知らせがありました。
SLやまぐち号の復活運転開始は1979年ですから、現役SLが廃止されて、わずか3年ちょっとでした。
運転区間は、山陽新幹線、山陽本線に接続する新山口駅(運転開始時は小郡駅でのちに改名)から山口線の津和野駅までです。

[運転を開始したころのSLやまぐち号、客車は青い12系(1979年撮影)]

当時の私は大学生で、ワイド周遊券を買って運転開始直後に乗りに行きました。
貧乏学生です。
新幹線は使えません。
さすがに東京からは少しばかり遠かったのですが、3日くらいかけて、寄り道をしながら各駅停車で向かいました。
初めて見るSLやまぐち号。
機関車は、くしくも北海道で最後の旅客列車を牽引したのと同じ形式のC57型。
スマートでカッコいい機関車です。
客車は、そのころ通学列車などで現役で使われていた、青い客車12系でした。
驚くほど見学の人が多くて、当時のSL人気がすごかったことを覚えています。
2019年には、SLやまぐち号が走り続けて40年。
時間が経っても、人気は衰えません。
青い客車は後にレトロ調に改造されて、茶色に白帯のデザインになりました。
当時も、SLによく似合っていました。

[2017年夏まで走っていた12系客車改造のレトロ客車。このときはSL2両で牽引する重蓮運転をしていた(2012年撮影)]

2017年になって、この客車が老朽化したために、なんと真新しい車両が作られました。
色は茶色でレトロ調のままです。
編成の両端には、表に出られるデッキまでついています。
今回は、新造されたこの客車の撮影に行ってきました。
季節は晩秋、紅葉した山々の中を煙を上げてSLやまぐち号が走ります。

[C57に牽引されて走る、新型客車のSLやまぐち号(2017年撮影)]

実は2017年の運転のうち、最後の2日はD51、通称デゴイチが牽引しました。
SLやまぐち号をD51が引くのは、営業運転ではこれが初めてです。
現役を引退してから、京都の梅小路蒸気機関車館(現在の京都鉄道博物館)で保存されていて、近年大々的に修復されて、久々の再デビューです。
残念ながら、このときの運転には行けなかったので、今年は必ず撮影に行こうと思っています。

[京都で保存されていたころのD51。今後はC57かD51の、どちらか(ときどき2両で)SLやまぐち号を牽引する(1987年撮影)]

SLやまぐち号が走るのは、その名の通りほとんどが山口県。
しかし、停車駅のうち終点の津和野駅だけが島根県に入ります。
津和野は山陰の小京都と呼ばれるほど町並みの美しいところ。
鉄道ファンだけでなく、観光の方々もSLに乗って訪れます。

白壁の美しい殿町通り、
水路を泳ぐコイは津和野名物。

津和野を見下ろす山にある
太皷谷稲成神社。

太皷谷稲成神社への参道は、
赤い鳥居がトンネルのように続く。

津和野は、隠れキリシタンの殉教の地。
美しい“津和野カトリック教会”もある。

津和野に行ったら必ず食べる山本風月堂の“できたて”和菓子「源氏巻」

見所のたくさんある津和野の町ですが、SLが到着したころ、観光そっちのけで必ず行く店があります。
津和野駅を出て右に300mほどにある和菓子屋、“山本風月堂”です。

津和野駅近くの山本風月堂。

津和野のお土産といえば「源氏巻」。
つぶあんか、こしあんをカステラ生地で薄く巻いたお菓子です。
お土産に買って、あとで食べるときには、しっとりとして美味しいです。
山本風月堂では、「源氏巻」をSLが走った日だけ店頭で焼いて、焼き立てを食べさせてくれます。

SL運転日には店頭で焼いている。
おすすめは、つぶあんでもこしあんでも、
「焼き立てをください!」と注文して、
すぐその場で食べること。

焼き立ての源氏巻は、甘い香りがたって、食べると「さっくっ」とした食感がたまりません。

焼き立て源氏巻。
曲げると「さっくっ」と割れる。

餡もお店で炊いたもので、品の良い甘さです。
SLに乗って津和野に着いたら、ぜひ食べてみてください。
 次回は山口線の後半、芋煮編です。

佐々倉実(ささくら みのる)
 鉄道をメインにスチール、ムービーを撮影する“鉄道カメラマン”。初めて鉄道写真を撮った小学生のころから約50年。鉄道カメラマンなのに、列車に乗ると走るシーンを撮影しにくいので、撮影の8割はクルマで移動。そんなワケで1年のかなりの期間をクルマで生活しています。ちなみに、鉄道の他に“ひつじ”の写真もライフワークで撮影中、ときどきおいしいひつじの話も出てきます。
 主な著作に「富士鉄」(講談社)「新幹線ぴあ」(ぴあMOOK)「鉄道ムービー入門」(玄光社)「ひつじがすき」(山と溪谷社)など多数、映像集に「感動の美景鉄道」(MAXAM)「日本の新幹線・特急」(シンフォレスト)など、担当番組に「素晴らしき日本・鉄道の旅」(BS-TBS)など

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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