肌寒くなってくると、選択肢の上位に浮上するのがカレー南蛮。蕎麦のつゆを利用した懐かしい味もあれば、計算され尽くした新発見の味も。新旧を食べ比べれば、カレー南蛮を見る目が変わりますよ。
画像ギャラリー撮影/石井和明(やぶ久)、髙井 潤(ならや)、大西尚明(泰明庵)、鵜澤明彦(新橋てんか)、小澤晶子(朝松庵) 取材/井島加恵
日本橋 やぶ久(最寄駅:日本橋駅)
厳選した七味が生み出す奥深い旨みと辛みのカレー南蛮そば
『日本橋 やぶ久』の看板メニューとも言えるカレー南蛮は、平成14年に4代目の高橋義明さんが受け継いでから多様な七味を取り入れ、辛さが普通・辛口・大辛・激辛の4種類になった。辛口は、ピリリとしたスパイシー感のあと、複雑な辛さがじわじわと攻めてくる。同時につゆの濃厚な旨みが溶け合い、「醤油に負けないように、ダシには特注の厚切りの鰹節を惜しみなく使っています」という高橋さんの言葉に納得。外二で打つ蕎麦の風味が調和の役目を果たし、辛さと旨みがこれまた絶妙なバランスになる。あっさりとキレがいい後味にも大満足だ。
カレーへのこだわり
ならや(最寄駅:池袋駅)
コクのある辛さに導く手間暇かけたルウが決め手
『ならや』で34年前の創業時から根強い人気を誇るのが、カレー南蛮だ。ひと口目は甘いと感じるが、徐々にスパイスの複雑な辛みが広がって、パンチが利いたダシの鰹風味が溶け合い、まろやかな味へと変化する。「常に研究を重ね、作り方を見直しています」と話す店主・奈良順一さんの真摯な姿勢が垣間見える。さらに、7年前に日本料理店で修業した2代目となる息子の卓也さんが加わってから、「ふぐ天とすだちのおろし香味蕎麦」1000円(11月~4月)など季節限定の蕎麦のファンも増えた。
カレーへのこだわり
泰明庵(最寄駅:銀座駅)
セリの爽快な食感が濃厚な味わいを引き締める
『泰明庵』で毎年10~3月頃に登場する「せりカレーそば」も、探究心旺盛な2代目・江端貞夫さんが偶然あったセリを入れてみたところ、相性の良さを発見したという。
そばとセリがよく絡むカレーはとろとろで、いわゆるカレーとは一線を画すカレー餡。口の中で濃厚なダシの風味が広がると同時に、セリのしゃきしゃき感が小気味いい。10月下旬からは、ゴボウのような歯触りのセリの根っこが加わる。魚屋時代の流れで刺身や旬の食材を使った料理も豊富なので、蕎麦前の時間も粋にゆったり楽しみたい。
カレーへのこだわり
朝松庵(最寄駅:中目黒駅)
一子相伝の大切な味を生きている限り
「小学生の頃から、いつも祖父のカレー粉作りに呼ばれて手伝ってました」という『朝松庵』4代目の角田米子さん。明治41年に、祖父が大阪で売り出したカレー南蛮の作り方を今も忠実に守っている。材料を測るのもなんとすべて尺貫法だとか。黄色みがかったとろとろのカレーは、子供のファンも多いというやさしい口当たり。あとからじわじわ広がる辛みもほどよい。
カレーへのこだわり
注文が入る度に、3日かけて作ったカレー粉をダシで溶き、蕎麦のつゆを加えて一杯分ずつ作る。ダシに使う鰹節の量、そばの茹で時間などもすべて祖父直伝
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