撮り鉄の『車中食・車外食』

撮り鉄の「食」の思い出(72)大村線でイイダコ料理&大村寿司/2008年~2020年

大村線は、長崎県内の早岐(はいき)駅と諫早(いさはや)駅を結ぶ50Km弱のローカル線です。 大村線の旅の魅力は、なんといっても大村湾。 湖のように波静かで穏やかな海です。 海岸線を走る区間も多く、窓いっぱいに広がる海を楽しみながら旅することができます……。

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大村線でイイダコ料理&大村寿司/2008年~2020年

大村線は、長崎県内の早岐(はいき)駅と諫早(いさはや)駅を結ぶ50Km弱のローカル線。
早岐駅から1駅目のハウステンボス駅までは電化されていて、博多駅からの特急電車も走っています。
ハウステンボス駅からは一転して非電化の単線です。
この大村線は、もともと長崎本線でした。
現在の有明湾に沿って敷かれた路線が開通した昭和9年に、長崎本線の名前を譲って大村線となりました。
その名残で、ローカル線にしては駅も大きく、すれ違いの路線も長い列車がすれ違えるほどの規模です。
大村線の旅の魅力は、なんといっても大村湾。
湖のように波静かで穏やかな海です。
海岸線を走る区間も多く、窓いっぱいに広がる海を楽しみながら旅することができます。

ディーゼルカーは、波の穏やかな大村湾に沿って走る(2005年撮影)

海に近いところを走る区間が多く
車窓も楽しめる(2007年撮影)

午後にはきらきら光る海を見ながら走る(2008年撮影)

大村線でいちばん新しい駅、
千綿駅はオーシャンビューの駅(2020年撮影)

もうひとつ。
大村線の魅力は、国鉄時代から走り続けるディーゼルカーに乗れることです。
それも、当時と同じ色で塗られて、懐かしい様子で走っています。
この車両を目当てに、鉄道ファンも集まります。

国鉄時代からの車両も走り続けている(2020年撮影)

時が止まったかのような大村線ですが、近年になって大きな変化が起きています。
まず、2020年春には新型のハイブリッド車両が導入されました。
これまでの車両とは雰囲気が異なる車両です。
まだ、旧型車両がいつまで走るのか発表はされていませんが、そう遠くない時期にこの車両で統一されそうです。
そしてもうひとつは、長崎新幹線。
現在工事中ですが、かなり工事が進んでいます。
長崎本線は有明湾に沿って長崎県の東側を走っていますが、長崎新幹線は大村湾に沿って西側を走ります。
現在の計画では2022年度開通となっています。
これから数年で、大村線の周辺は大きく変化しそうです。

2020年に走り始めたハイブリット車両YC-1(2020年撮影)

大村線沿線では長崎新幹線の
工事も進んでいる(2020年撮影)

この路線には、お気に入りの撮影地があります。
大村湾の小さな漁港で、海の中の築堤に線路が敷かれている場所です。
漁船が出入りする姿や、出入りのない時には水面に列車がうつる姿を見ることができます。
静かな港で、船の横にはカニ籠が並んでいます。

大村湾の小さな港と
カニ籠(2008年撮影)

春早い時期に出かけた今回の撮影でも、この港を訪れました。
狙いは、この港を走る新型車両のYC-1。
無事に撮影を終えて機材を片付けていると、地元の漁師さんに声をかけてもらいました。
聞くところによれば、この時期においしいのは「イイダコ」だそうで、獲ってきたイイダコを見せてもらいました。

網をあげてくれる
漁師さん(2020年撮影)

これが、びっくりです。
イメージとして、イイダコはひと口サイズ。
なんならたこ焼き一個に一匹入りそうな大きさだと思っていました。
しかし、でかい!
「これ、本当にイイダコですか!?」と聞いてしまったほどです。
(後で調べたら、最大で30センチくらいになるようです)
「もちろん小さいのも獲れるけど、この季節が旬で、このサイズがおいしいんだ」

知らなかったぁ。
漁の方法も教えてもらいました。
カニ籠に餌を入れずにメスを入れて沈めておくと……たくさんオスが入るそうです。
……バカですね、男って。

上がってきたイイダコは
……でかい(2020年撮影)

このイイダコを食べられる場所を聞くと、近くの道の駅に卸しているとのこと。
さっそく向かいます。

イイダコを卸しているという道の駅
「彼杵の荘(そのぎのしょう)」(2020年撮影)

売り場を見ると、生のイイダコを茹でたものがありました。
漁師さんに茹で方を習ったもので、生から調理してみたいとは思ったのですが、車内調理では少々ハードルが高く、悩んだ末に茹でたものを購入しました。
茹でイイダコには白いタイプと赤いタイプの2種類があります。白いのは塩ゆで、赤いのは少量の醤油を入れて茹でてあるそうです。

赤い茹でイイダコ、
2匹で600円(2020年撮影)

上の丸い部分は頭(2020年撮影)

頭を切ってみると、
イイダコの名前の由来、
ご飯のような卵が出る(2020年撮影)

塩ゆでのイイダコ。
3匹で600円と
赤より少し安め(2020年撮影)

茹でても
やっぱり大きい(2020年撮影)

赤と白と両方を刺身にしてみました。
食べてみるとやわらかくて、大きめに切っても大丈夫です。
タコの香りもほわっとしてきます。
マダコほど強烈な味ではないのですが、食べやすくおいしい刺身です。
赤と白の差ですが、赤には微かに醤油の香りがするくらい。
わさびと醤油をつけると、あまり極端には変わりません。
むしろ色味の違いのようです。

赤いイイダコの刺身(2020年撮影)

白いイイダコの刺身(2020年撮影)

刺身は、やわらかさと軽さで、どんどん食べられます。
はっと気がつき、食べきる前に次の料理へと取りかかります。
次の料理は、赤と白でそれぞれ一品。
赤は醤油煮、白はアヒージョです。
調理方法は、今回から導入した焼き肉のたれ用アルミの器を使用です。
赤には醤油煮の赤いタコと日本酒、醤油、生姜を入れてセットです。
白には塩ゆでの白いタコと地元の熟成ニンニク、マッシュルームに鷹の爪をセットします。
フライパンで両方まとめて加熱、しばし待てば完成です。

アヒージョには
地元熟成ニンニクを使用(2020年撮影)

アヒージョの準備完了(2020年撮影)

続いて醤油煮の準備完了。
同時に加熱(2020年撮影)

醤油煮完成(2020年撮影)

アヒージョも完成(2020年撮影)

加熱するとタコの味が際立って、どちらの料理も最高(自画自賛)。
たまらなくおいしい料理になりました。
いっしょに食べるご飯は、地元料理の大村寿司。
これも道の駅で買いました。
ご飯にごぼう、しいたけ、ニンジン、干し大根、錦糸卵などを乗せた押しずしです。
これも、素朴さがうれしい、おいしい料理です。
道の駅だけでなく、地元のスーパーでも普通に売っているほど地元に根付いた料理です。

大村名物、大村寿司(2020年撮影)

早春の撮影で、変わりゆく大村線の変わらない大村の味を堪能しました。

佐々倉実(ささくら みのる)
 鉄道をメインにスチール、ムービーを撮影する“鉄道カメラマン”、初めて鉄道写真を撮ったのが小学生のころ、なんやかんやで約50年経ってしまいました。鉄道カメラマンなのに撮影の8割はクルマで移動、列車に乗ってしまうと、走るシーンを撮影しにくいので、いたしかたありません。そんなワケで年間のかなりの期間をクルマで生活しています。趣味は料理と酒! ヨメには申し訳ないのですが、日々食べたいものを作っています。
 鉄道旅と食の話、最新の話題から昔の話まで、いろいろとお付き合いください。
 ちなみに、鉄道の他に“ひつじ”の写真もライフワークで撮影中、ときどきおいしいひつじの話も出てきます。なにとぞご容赦ください。
NHKにて『沁みる夜汽車2020年春』放送決定。
◎本放送
4月26日(日)19:00~19:50(BS1)
◎再放送
5月5日(火/祝)23:00~23:50(BS1)
5月7日(6日深夜)1:40~2:30(総合テレビ)※5分単位で遅れる可能性あり
5月8日(金)19:00~19:50(BS1)
5月24日(日)10:00~10:50(BS1)
◎10分版「沁みる夜汽車2020春」
5月11日(月)22:40~22:50 「ふるさとへ続くレール JR上野駅」
5月12日(火)22:40~22:50 「背中を押した乗客のひと言 特急白鳥号」
5月13日(水)22:40~22:50 「50年 行商を続けて 京成電鉄」
5月14日(木)22:40~22:50 「運転士の夢をもう一度 天竜浜名湖鉄道」
5月15日(金)22:40~22:50 「桜と生きる 松浦鉄道 浦ノ崎駅」

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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