いま思い出してもあの衝撃は記憶に残る……。 「なにこれ⁉ 美味い!」と思わず声を張りあげてしまったほど。 この素敵な出会いは、ディナーに誘われて迷い込んだお店で始まった。それが、内外観には草木の緑とレンガで彩られ、入った瞬間、なんとも言えない温かい空気を感じる「ONZORO.」というビストロだった。
画像ギャラリー予約必須! シェフのこだわりが詰まった食の玉手箱、扇町のビストロ「ONZORO.」
いま思い出してもあの衝撃は記憶に残る。
実は、メニューにあっても自らは注文しない食材がこの世の中にたった一つだけある。
その食材こそがジャガイモであり、できれば避けたいという気持ちがどこかにある。
ところが選び抜いた食材で、シェフの手で魔法をかけると、仕事の打ち合わせ中に「なにこれ
この素敵な出会いは、ディナーに誘われて迷い込んだお店で始まった。
その店は、内外観ともに草木の緑とレンガで彩られ、入った瞬間、なんとも言えない温かい空気が流れていた。
場所は天満駅から徒歩10分にある扇町界隈。
件のお店こそ、ビストロ「ONZORO.」(オンゾロ)だ。
そのときいただいた料理は、皆さんもご存じの「フライドポテト」。
北海道産ジャガイモのキタアカリという品種を仕入れたときだけ、メニューに掲載されるそうだ。
これがシェフの調理でナンとも甘くて美味な仕上がりになる。
口に入れた途端、まろやかな甘味と風味が口内に広がり、ジャガイモを心から美味しいと初めて感じた。
ぜひとも画像でも紹介したいが、訪れたこの日は残念ながら「ない日」。
旬を過ぎると糖度やでんぷん量に大幅な違いが出るそうで……。
「時期も秋から冬。それで良い物が入荷できた場合だけ提供しているんです。ごめんなさい」
こう説明するのは、いつも忙しく店内を駆け回るシェフの奥様。
このお店は夫婦で切り盛り、オープンして今年の8月で丸8年となる。
とにかくオーナーシェフは食材へのこだわりが強い。
お客からリクエストがあってもシェフの目利きで不可がとなれば、その日は出さない。
強いこだわりがあるからこそ、フライドポテトもキタアカリ以外のジャガイモでは一切提供する気持ちすらない(笑)。
今のスタイルを築いたのも経歴に関係するそうだ。
「正直言うと、今のビストロはほぼ独学で勉強したようなものなんです。主人はエスニック系の料理を7年、その後知り合いの鉄板焼きで2年間、経営を任された。この経験が食材のこだわりに繋がったかもしれません」
「自家製パンの盛り合わせ」(730円)というように、パンすらも自家製にこだわった。
言わずもがな、欧米好みのハード系も自家製だから欠かせない。
画像にはないが、オリーブの漬物も自家製だ。
輸入食品売り場には当たり前のようにオリーブの漬物が安価で売られているが、それすらも手にしない。
食べればわかる。
まったく別物の料理に仕上がる。
まずは常連になるとお任せで「オードブルの盛り合わせ」(応相談)を注文。
「丹波鶏レバーのコンフィ 生生姜とアーモンドの砂糖がけ」「キッシュ」「黒豚のリエット」などの盛り合わせ。
スプーンに置かれたレバーのコンフィは、パリッと張りのある外側と裏腹、中は柔らかく、生生姜の風味に加えてアーモンドの食感が絶妙。
しかも、丹波鶏を選別するところが素晴らしい。
丹波鶏は安全な飼料と広々とした鶏舎で飼育に知られた地鶏である。
「フレンチとかスペインとか、ジャンルを絞ってないんです。ヨーロッパの美味しいものを集めた洋食屋さんにしたいんです」
食に国境はないというように同店のメニューはまさに玉手箱だ。
「生ハム・桃・アンティーブのサラダ」(1580円)と「剣先イカとそら豆 ピスタチオのピュレ」(1000円)の、クオリティの高さよ。
生ハムと桃の相性もさることながら、いっしょに添えたアンティーブ。
英語名はチコリーで、色使いを見てもインスタ映えするヤツだ。
さらに続けて提供された「剣先イカとそら豆」も、刺身で食すなら今が旬の剣先イカを短時間で調理。
火を少し加えて身の張りを残していた。
そこにピスタチオのピュレとは……初めて食す味わいだ。
食材を殺さず、実に生かしている料理である。
続けて本日のメイン「山形牛のロティ 大葉のピュレ」(150g 3200円~)をオーダー。
「ロティ」とはフランス語。
英語では「ロースト」である。
オーブンで焼いた肉を表し、「山形牛のランプ肉を使用しています」とのこと。
山形牛の最大の特徴は、低い脂の融点にある。
山形の代表的な米沢牛は、脂がとける温度が違う。
神戸牛や松坂牛より、融点が6度ほど下。
22度で溶けてしまう。
脂身の少ないランプ肉でも山形牛の特徴が垣間見られて、大葉のピュレとの相性も驚くほど良い。
普段ならココで「わたりがにのパスタ」で〆るところだが、「いい物が入らなかって今日はないんです」と寂しい返答が……。
そこで「オマール海老のドリア」(2580円)を注文。
ドリアは日本式の西洋料理で、ここに贅沢にもオマール海老をふんだんに使用。
チーズに覆われた膜をスプーンで破ると、それまで閉じ込められていた海老の風味がテーブルに拡散。
五臓六腑を刺激する。
プリプリのオマール海老がゴロゴロ。
至福のときやわ~。
ちなみに同店、デザートも種類がたくさんある。
日本でタピオカの次にブレイクするといわれている、台湾で人気のトウファ。
「豆花 ジャスミンのグラニテ 黒蜜ときな粉」(750円)という名でメニューにある。
エスニック料理でキャリアをスタートしただけあって、台湾にも精通する。
さらにフレンチの定番ショコラも人気で、「濃厚ショコラケーキ~バニラジェラートを添えて~」(700円)も注文。
何を食しても驚きの数々。
今ではオープンしてすぐに満席なるほど予約必須のお店となった。
心から美味しい料理を食べたい!
そう思う貴方、扉を開けた先には型破りのビストロが待っている。
ONZORO.(オンゾロ)
[住所]大阪市北区天神橋3-10-8 与力町スカイハイツ101
[営業時間]11:30~15:00
18:00~23:00
[TEL]06-6354-4848
[定休日]火曜・水曜のランチタイム、および不定休
加藤 慶(かとうけい)
大阪在住のライター兼カメラマン。週刊誌のスクープを狙う合間に関西圏の旨いモンを足で稼いで探す雑食系。
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