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つゆがひたひたに染みた、蕎麦屋のカツ丼。熱々の湯気からは、食欲を刺激してやまない甘く芳醇な香りが。町の蕎麦屋には必ずある“脇役の主役”に注目!

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戦後から続く 返しの味をたっぷり含んだ熱々のカツ

『いなりや』@南砂町

かつ丼(900円)
丼はサラダに具沢山のみそ汁つきで栄養バランスもばっちり

明るく広々として入りやすい雰囲気の店内。2020年で70年、親子4代でのれんをつないできた老舗店舗を数年前に改装した。
蕎麦前や食事メニューも充実し、平日・休日の昼夜ともに地元民で賑わいを見せる。

太白ごま油をブレンドし、国産豚ロースを香ばしく揚げた大きなカツに絡むのは、甘さと辛さのバランスがちょうどよいまろやかなつゆ。
お客の好みに合わせて、丼の汁を多くしたり少なくしたりすることもあるのだとか。

千葉県産のコシヒカリに、つゆをしっかり含んだ卵・カツ・玉ネギが絶妙になじみ、香ばしさと甘い香りが一体となる。

丼汁は数日寝かせた本返しに、上白糖・みりんで甘さを加え、一番ダシを加えたもの。
ダシは本節を中心に宗田節、サバ節で構成

天ざる(1600円)
長野県産と北海道産の蕎麦粉を使った打ちたての自家製蕎麦。
天ぷらのエビは特大サイズにこだわるのがいなりやの心意気。
地元客が多く訪れ、今も出前注文も続けている。町の頼れるお蕎麦屋だ

[住所]東京都江東区南砂4-7-25
[電話]03-3648-2121
[営業時間]11時~15時(14時半LO)、16時半~20時(19時45分LO、土・日・祝16時半~19時半LO) ※売り切れじまいあり
[休日]木
[交通]地下鉄東西線南砂町駅1番出口から徒歩10分

味・お値段・ボリュームの三冠王! 練馬の良心が丼につまる

『松月庵』@桜台

上かつ丼(890円)
国産ロースはしっとりと柔らかく、つゆは甘さ控えめ。
ご飯の中に海苔が隠れているのもポイント。白米の量は約2合分!

「お客さんに毎日喜んでもらいたいからね」とほほ笑む店主が供するメニューは、とにかく量がすごい!
値段は手頃ながら、大きな丼に蕎麦もうどんもカツもご飯もたっぷりと運ばれてくる。

蕎麦つゆや料理に使うダシは、カツオの本節・サバ節・宗田節を丸のまま仕入れてお店の機械で掻いたもの。
揚げたてのカツは、縦に切ったあと横にも包丁を入れ、食べやすいサイズに。一番ダシが利いたつゆが肉の中までたっぷり染みるのだ。

丼の「上」は、半熟の卵がもうひとつのる。熱々でとろりと濃厚な黄身がカツにかかれば、ご飯がもう止まらない旨さだ。

本節を丸ごと鍋で蒸し、表面を柔らかくしてから店で厚削りにする。
枕崎産のサバ節、屋久島産の宗田節も同じく厚削りに

ガマゴリそば(800円)
店主が愛知出身のため、ご当地メニューも楽しめる。
蒲郡から直送された柔らかいアサリがたっぷり。うどんも選べる

[住所]東京都練馬区桜台4-11-14
[電話]03-3994-2552
[営業時間]11時~21時(出前は2品以上より、11時半~20時半)
[休日]不定休
[交通]西武池袋線桜台駅北口から徒歩5分

地元客でいつもにぎわう 老舗蕎麦屋の優しい味

『花村』@木場

カツ丼(980円)
丼ものにも使う本返しは、2週間から3週間寝かせる

割り箸袋には、今はなき旧地名「洲崎」の文字。創業明治29年(1896)、5代続く店ではカツオ節だけで毎日たっぷりのダシをとる

ほんのり甘いカツ丼にはそのカツオ鰹のダシが力を発揮し、角のとれた優しいつゆの味が染み渡る
カツの衣をつける卵液には牛乳を少し混ぜ、生パン粉をつけて揚げているのだとか。
しっとりと口当たりのいいカツと、優しく煮込まれた玉ネギの相性はバツグン。カツ丼と蕎麦をセットで頼むお客さんも多い。

地元で親しまれた蕎麦は、弁当にしてお土産にもできる。

厚削りのカツオ節のみでダシを取り、返しと合わせて蕎麦つゆに。
カツ丼はそのつゆにさらに甘めのかえしを加えたもの

志の田そば(680円)
名物の「志の田」は油揚げ・揚げ玉・ネギ入り。
揚げ玉は“天かす”ではなく、その日の最初の油で、蕎麦用にわざわざ揚げているもの。
そのためくどくなく、コクのあるつゆが楽しめる。二八蕎麦も店で毎日仕込んでいる

[住所]東京都江東区東陽3-5-8
[電話]03-3644-4052
[営業時間]11時~15時、17時~20時
[休日]日・祝
[交通]地下鉄東西線木場駅1番出口から徒歩5分

ダシの利いた丼つゆがしっとりカツになじむ

『翁庵 そば店』@神楽坂

かつ丼(900円)
創業は明治17年(1884)。
ちなみに「カツ丼ライス」(900円)というメニューは、カツの頭とライスが別々に出てくる

席につくと、まず出てくるのはお豆腐。「お待たせしちゃ悪いから」と、いつの頃からか始まった気遣いだ。

136年前から神楽坂で蕎麦を作り続け、大手資本の飲食店が増えた今でも、家族経営で町の胃袋を支えている。
国産あきたこまちに鎮座するカツは、地元の肉屋に特注し、やや薄めに揚げてもらったもの。汁がさっと染み込み、米や蕎麦によくなじむ厚さにしている。

昔ながらのしっかりした甘い味付けだが、不思議と重すぎることはない。最後の米粒ひとつまで、すいすいと入ってしまう。

丼汁は蕎麦つゆにみりん、上白糖で甘みを足したもの。
つゆに含まれるダシは、厚削りの宗田鰹節のみで取ったものを使用している

かつそば(900円)
蕎麦との珍しい組み合わせも大人気。
店で仕込むコシのある蕎麦と、コクのあるカツのバランスは季節を問わず冷・温ともに不動の味だ

[住所]東京都新宿区神楽坂1-10
[電話]03-3260-2715
[営業時間]月~金11時~15時、17時~22時(21時半LO)、土・祝11時~18時(17時半LO)
[休日]日・月の祝日
[交通]地下鉄南北線ほか飯田橋駅B3出口からすぐ

ダシがふわりと香り立つ あっさり上品な一杯

『手もみそば 長壽庵』@落合

かつ丼(並)(950円)
昭和53年(1978)に「長壽庵本店」からのれん分け。
屋号に「手もみそば」と付く理由は、製麺部分のみ機械のため、言葉を忠実に選んだ結果

国産豚ロースを塊で仕入れ、店で切り分けてから注文に応じて揚げている。カツオ節のダシの味を感じる、上品な味付けがうれしい。
東京の老舗蕎麦の系譜に連なる長壽庵のれん会に属する店だが、味は各店舗ごとにオリジナリティがあるそうだ。

米は生産者から直接仕入れた、千葉県産の天日干し米。丁寧に炊かれたお米が、卵にとじられたカツの旨みを受けとめ、味わい豊かな丼となっている。

副菜の小鉢も毎日日替わりの手作りで、上質な食事を楽しめる名店だ。

カツを煮る蕎麦つゆには、うす削りのカツオ節だけでとったダシが入る。
味の濃さは客層の変化に合わせ調整し、現在は甘さ控えめに

天もり(1300円)
栃木産原木しいたけは店主自らが仕入れたもの。
天ぷらの衣の9割は国産の米粉で歯触りを軽くしている。うどんも自家製

[住所]東京都中野区東中野3-15-13 パークネスタ落合1階
[電話]03-3362-4941
[営業時間]11時~19時半 ※早じまいあり
[休日]土
[交通]地下鉄東西線落合駅1番出口から徒歩1分

蕎麦屋にしかない味、その幸せを噛み締めろ!

12日間、全力集中で蕎麦屋のカツ丼を食べ続けたライター・赤谷。揚げ物対策で運動にますます力が入る担当編集・武内と、丼談義に花が咲きました。

赤谷「カツ丼って蕎麦屋が発祥 なんだそうですね」

12キロ痩せた武内「諸説あるけど、東京の早稲田にあった蕎麦屋で大正7年(1918)に作られた のが始まりらしい。そのお店はもう閉店しちゃったけど」

赤谷「誰かさんがダイエットの間、私は毎日カツ丼を食べ続けていたんですが、蕎麦屋の美味しいカツ丼は『甘いのにくどくない』、これにつきます」

武内「蕎麦つゆに使う良いダシがた〜っぷりと入ってるのがポイントだろうね」

赤谷「今回は16軒ほど巡ったんですが、<「取材したい!」とまではいかない、あと一歩のカツ丼>店は「肉の味が薄い」「ご飯とカツの一体感に欠ける」というのが特徴でした」

武内「そういえば、今回の蕎麦屋は国産の材料を扱うお店ばかりだね。肉は特に」

赤谷「味のいいお店は、肉・米 ・卵の味がひと口で折り重なってくるんです。甘みがしっかり利いてるのに、素材の風味を感じられるという。不思議!」

武内「赤谷さん、取材を決めた店では丼を掴んで離さなかったからな……」

赤谷「いやいやっ、美味しいカツ丼は誰でもそうなりますって! 飽きずにワシワシとかっこめる、脂と甘みの超合法・ジャパニーズ・ドラッグです」

武内「そこまで言うか。でもカツ丼って、もっと外国人人気が出てもいいかもね。スシ・テンプラ・カツドゥ〜ン」

赤谷「蕎麦屋のカツ丼は、その日にとったダシや返しの入ったつゆが関わってくるので、日本に来たら、ぜひ食べてほしい逸品ですね」

武内「よっ、カツ丼大使!」

赤谷「ちなみにカツ丼上手なお店は、小皿の漬物まできちんと丁寧な味がします。

武内「箸休めとしての漬物の塩梅が絶妙なんだよね。手作りの浅漬けとか、名脇役」

赤谷「私はね、”蕎麦屋のカツ丼セラピー”を提唱します! ! 落ち込んだら、町の蕎麦屋に行きましょう。優しいつゆで煮込まれた、優しいカツ丼を食べて気力を養うべし!」

撮影/小澤晶子(いなりや、松月庵、花村、翁庵)、谷内啓樹(長壽庵) 取材/赤谷まりえ
※店のデータは、2020年3月号発売時点の情報です。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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