スープと同じくラーメンの味を左右する麺。自家製麺の店も増えているが、今回は業界を代表する 3つの製麺所に注目。『おとなの週末』ライター肥田木が取材しました。それぞれの麺作りの姿勢は……いやあ、こうも奥深いものとは。感動を呼ぶ(?)麺物語。今回は三河屋製麺!
画像ギャラリー『三河屋製麵』
徹底したマニュアル化でブレない麺を毎日作る
生中華麺に特化した製麺所の成功物語
生中華麺1本に特化して取り組んでいるのが『三河屋製麺』だ。近代的な工場が3か所あり、多い時は1日10トンもの麺を生産している。
こう書けばスケールが大きい企業の話で終わるが、実は宮内厳社長にはドラマがあった。父親から会社を継いだ20年ほど前は、わずか10人の従業員だったというのだ。
「当初はうどんや蕎麦など全般的に麺を作っていました。でもそれらの専門店は自家製を出す場合も多いので需要がない。スーパーや立ち食い店に卸しても大手との価格競争に勝てない。目に留まったのが、まだ自家製が少なかった中華麺でした」
当時はラーメン店1軒1軒に飛び込みで営業しても全く相手にされなかったという。それでも「理想の麺を作ります」という姿勢を貫き、足繁く通った。
地道な営業と品質の確かさが次第に店主を納得させ、選ばれる製麺所に。現在は従業員約150人とおよそ15倍に成長し、ラーメン店を中心とした全国1000店に麺を卸している。
宮内社長が大事にするのは同じ品質を毎日作ることだ。つまりブレない麺を提供すること。そのためには作業工程を完全マニュアル化し、工場内の温度や湿度など適正に管理している。
「私たちのお客様はラーメン店の店主。厳しい職人ですから、日々同じクオリティを提供しなければならない。だから工場は冷蔵庫と同じ断熱性のある構造にし、何より“麺第一”の環境に整えています」
そう、何もかもが麺のため。それほど大切にしてくれるなんて、さぞ麺も幸せだろう。
新規の場合、まず店主の要望を聞く。それに合った麺がなければ納得してもらえるまで追求する姿勢は今も変わらない。作ってくれと言われたら、まずはやってみる。
既存の機械を改良してまで開発した麺もあるとか。その心意気、恐るべしである。
「三河屋製麺」社長。30歳過ぎで父親から会社を継ぎ、麺全般の製造から生中華麺に特化した工場体制に変換した。ブレない麺作りのためマニュアル化と安全・衛生管理を徹底する。今も毎日どこかでラーメンを食べているという
三河屋製麺の麺を堪能できるラーメン店
『中華そば 西川』@千歳船橋
圧倒的な煮干しの旨みをブレない麺が吸い上げる
煮干しは香るが、えぐみは皆無。濃厚だが口当たりはサラリ。このスープを歯切れのいい中細麺が見事に絡め取り、口内に煮干し特有のほろ苦さ、酸味、甘みが津波にように押し寄せる。
「太い麺では粘度の少ないうちのスープを拾わない。小麦香も強い希望通リの麺に出合った」と店主。
品質に絶大な信頼を置くこの麺が、ブレない一杯を完成させる。
宮内 厳さん
「硬めの中細ストレート麺が煮干しの上質なスープに合う。旨さを存分に楽しめます」
店主:西川拓也さん 知子さん夫妻
「うちのスープとの絡みを考えてパツンと歯切れいい低加水の麺を選びました」
[電話]090-9152-9673
[営業時間]11時~15時
[休日]月・火
[交通]小田急小田原線千歳船橋駅南口から徒歩13分
※店のデータは、2021年2月号発売時点の情報です。
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