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2025年には創業75周年を迎えるケンミン食品(本社・神戸市)。「ケンミンの焼ビーフン」のCMは、昭和・平成時代を過ごした人なら懐かしいのではないだろうか。というか、「ケンミンの焼ビーフン」は2020年、最も長く販売されている焼きビーフンブランドとして、ギネス世界記録に認定されたんだそう。ギネス認定って響き、憧れる!そのケンミンが現在挑戦しているのが完全グルテンフリーによる、ラーメンやうどん、パスタの製麺。同社代表取締役社長の高村祐輝さんに、小麦を使わない美味しいラーメンを求めた様々な出合いや工夫について伺った。

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「The 乾麺グランプリ」の中華麺部門賞!

2024年5月18日・19日の2日間、東京・駒沢オリンピック公園で開催された「The 乾麺グランプリ」。部門賞として中華麺部門に選ばれたのが、ケンミンの「行列ができる人気店『TSURUMEN』監修グルテンフリー醤油ラーメン」だ。

「The 乾麺グランプリ」では、何度も並び直しながらこのグルテンフリー醤油ラーメンを10杯近く平らげたり、2日間ともに訪れたりという小学校低学年くらいの子どもさんがいたんだとか。美味しいものに対して、子どもはまっすぐで正直だ。

グルテンフリーラーメンは、一般的なラーメンで使用される小麦粉を一切排除したライスヌードル。中華麺部門でお米の麺がグランプリを取るなんて前代未聞じゃなかろうか。

この「グルテンフリー醤油ラーメン」の監修者は、アメリカ・ボストンで行列のできる人気ラーメン店「Tsurumen Davis」を営む大西益央さん。ケンミンとタッグを組んで「GF RAMEN LAB」を立ち上げ、この研究所の初代所長を務めている。

つるりとした喉越しとコクのあるスープが魅力の乾麺

グルテンフリーマーケットは年々拡大中

グルテンの摂取が原因で免疫反応が正常に機能しなくなり、小腸に炎症など起こすセリアック病という自己免疫疾患があり、アメリカでは100人に1人ほど存在するとされている。島根大学医学部の調べによると、セリアック病の有病率は、日本人は0.05%程度と少ないそう。だから大西さんが日本でラーメン店を開いていた時は尋ねられたこともなかったし、気にもしていなかったそう。しかし、現在アメリカで開業している大西さんは毎日数人のお客さんに「グルテンフリーメニューはどれ?」と聞かれるのだとか。

グルテンアレルギーやグルテン不耐性、グルテン過敏症などもあり、グルテンフリーは社会的に求められるもの。それだけ、グルテンフリーやビーガン、ベジタリアンといったメニュー展開は、アメリカでは当然になっているらしい。

なおざっくり言うと、グルテンとは小麦類に含まれていて、水を加え捏ねた時に生じるタンパク質のこと。消化されにくい特質を持つため体に残り、場合によってはアレルギー反応や倦怠感などを引き起こす。
近年、パンや麺などでもちもち食感が人気だが、その美味しさを追い求め、小麦粉を品種改良した結果グルテン含有量が多くなってきているという。近年、日本人も小麦食が増えているため、セリアック病患者が増えるのではと懸念されているのだそう。厳密には小麦アレルギーとも異なる。

このグルテンフリーだが、世界的に著名なアスリートやセレブ、モデルなどが体調管理の一環としていたり、ダイエットとして行っていたりと生活に取り入れているのだそう。だからグルテンフリーマーケットは年々拡大していて、欧米では日本の10倍以上もあるのだとか。

大西さん自身、毎日ラーメンの試食をしていたが、不調を感じて週に2回はグルテンフリーの生活にしたところ、体調が回復した。「グルテンフリーで美味しいラーメンを食べたいという欲求をかなえつつ、食の多様性を上げることに貢献したい」と大西さんは言う。

これが人生初のラーメンになる方もいるのかも

70年以上米粉で作ったビーフンのトップシェアを持つケンミンと一緒に

ビーフンとは、紀元前220年頃、秦の始皇帝が中国統一を成し遂げたあたりの中国南部に起源を持つとされている。日本では終戦後にアジアや台湾から引き揚げてきた方が現地で食べたあのビーフンがもう一度食べたいという声に応えて、ケンミン創業者の高村健民氏が神戸で製麺し始めたのが、日本におけるビーフンの興りだ。

ケンミンは、国内ビーフン市場シェア50%を誇り、そのほかフォーやライスパスタ、ライスペーパーなど、米を原料とした加工食品の企業。静岡県藤枝市やタイに完全グルテンフリーの工場を有している。

2020年10月、共通の知人を介して知り合ったという、大西さんとケンミン社長の高村祐輝さん。

いざ共同開発が始まると、高村さんたちケンミンチームは、まず改めて「ラーメンってなに?」というところから取り組んだのだそう。結局、ラーメンらしさは練り込んだかんすいの量によって生まれると結論づけた。様々な配合を試していくが、少量のバランスで麺の食感や風味が変わるので試行錯誤を繰り返した。

そうした中でできあがったのがグルテンフリーラーメン。2021年9月頃からモニターテストを開始し、2022年3月には麺のみの乾麺が、5月には具材とスープ付きの冷凍麺の発売に至った。なお、2022年8月には冷凍焼きそばが発売。

具材入りの「TSURUMEN×GF RAMEN LAB」シリーズの冷凍麺は、宮崎地頭鶏(じとっこ)などの丸鶏や鶏ガラ、モミジなどを使い、旨みを抽出している。

第1弾が「黄金の鶏油しょうゆラーメン」、第2弾は「鶏清湯のすっきり柚子塩ラーメン」、第3弾は「鶏白湯しょうゆラーメン」といずれもこだわりの美味しさだ。

そして、2024年3月に発売されたのが、最初に触れた「グルテンフリー醤油ラーメン」。

ラーメンはしなやかでコシがあって啜り心地も抜群。ほんのりお米の甘い香りがするような気がする。スープは鰹節や昆布のエキスが入り、素材の旨みが効いていてコクがあるのにスッキリ。醤油ももちろんお米由来でグルテンフリー。動物性の素材は不使用だ。10杯食べた子の気持ちがわかる美味しさで、あっという間に平らげてしまった。

素ラーメンでいただいたが、麺・スープの美味しさがよくわかる

なお、この乾麺は「レゴランド・ジャパン・リゾート」(名古屋市)の和食レストランや「京都炎神」(京都市)というお客さんがほぼ外国人というラーメン店でも使用されているのだそう。

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2024年9月1日発売、ミッキーマウスとコラボの麺の断面に見...
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この記事のライター

市村 幸妙
市村 幸妙

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