週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で連載中の「クッキングパパ」は、主人公のサラリーマン荒岩一味が、得意の料理の腕を振るって、家族や同僚らとの絆を深めるストーリーが人気。 著者のうえやまとちさん自身が、試行錯誤を繰り返…
画像ギャラリー週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で連載中の「クッキングパパ」は、主人公のサラリーマン荒岩一味が、得意の料理の腕を振るって、家族や同僚らとの絆を深めるストーリーが人気。
著者のうえやまとちさん自身が、試行錯誤を繰り返しながら作り上げた自信作のオリジナルレシピを、詳細なイラストと臨場感あふれる筆致で紹介しています。本欄では連載漫画を収録した単行本のなかから、毎週1つを取り上げ、その料理にまつわる四方山話をお届けします。
長引くコロナ禍で、自炊をする人が増えているいま、「クッキングパパ」を参考に料理を作って食べて楽しんでみませんか。第4回目は、「おはぎ(ぼたもち)」です。
意外と知らない? 年によって変わる「春分の日」
内閣府のホームページ(HP)によると、「春分の日」は国民の祝日に関する法律で「自然をたたえ、生物をいつくしむ」日と定められており、仏教では、この日をはさんで前後3日間、合わせて7日間を「(春の)彼岸」と呼んでいます。
ところで、春分の日ですが、年によって20日か21日のいずれかに変動することにお気づきでしょうか。詳しくは、国立天文台のHPを参考にするとして、「暑さ寒さも彼岸まで」と言われているこの時期、柔らかなひざしのぬくもりに誘われて、ご先祖さまのお墓参りに出かけることも多いでしょう。その際、墓前に供えるのが、ぼたもち(おはぎ)ではないでしょうか。
◆ぼたもち=牡丹餅、おはぎ=御萩。小豆の収穫の時期によっても使い分け
ぼたもちとおはぎは同じ食べ物ですが、ぼたもち=牡丹餅、おはぎ=御萩とそれぞれ春に咲く牡丹の花、秋に咲く萩の花に見立てて風流な名前がつけられています。また、地域によってはこしあんを使ったものをぼたもち、粒あんを使ったものをおはぎと呼び分けています。
なんでも、9月から10月上旬頃に収穫してすぐの小豆(あずき)は風味がよく皮も柔らかい特性を生かし、煮た後にこさずに粒の食感を残して使うため、その粒が萩の花に似ていることから、おはぎと称されるとか。現に国内の小豆生産量の90%以上を誇る北海道では、おはぎという名称が一般的です。
一方のぼたもちは、「棚からぼたもち」ということわざで知られ、日常会話では「たなぼた」と略されて使われることもありますね。その意味は、「思いがけない幸運が舞い込んだり、苦労せずして良いものを手に入れること」。砂糖が手に入りにくい貴重品だった昔、庶民にとって甘いぼたもちは幸せの象徴に映ったようです。
さて、「COOK.71 お彼岸におはぎ(ぼたもち)を作ろう!!」では、「小豆、ゴマ、きな粉の3種類を食べると栄養的にも非常にすぐれた食べ物なのだ!!」と力説され、それぞれの作り方が紹介されています。ここでは小豆をひと晩水につけた後、煮てこしあんを作る(つまり、ぼたもちですね)のがポイントです。一見、手間がかかるように思われるかもしれませんが、小豆の効能を知れば、むしろ積極的に調理する楽しみが増えそうです。
ポリフェノールは赤ワイン以上! 体質改善&病気予防にも「小豆」
炭水化物とたんぱく質が主体の小豆には、ほかにも食物繊維や鉄分、ミネラルなどが豊富に含まれ、体質改善や病気予防が期待できます。
特筆すべきはアンチエイジング(老化予防)として注目されるポリフェノールの多さ! 赤ワインを凌駕する含有量だとか。疲労回復に効果的なビタミンB1 も多く含まれており、現代の偏った食生活のなかで、不足する栄養素を効率的に補ってくれる“元祖スーパーフード”と言えるでしょう。
また、きな粉の原料である大豆やゴマには、それぞれたんぱく質やビタミン、ミネラル、食物繊維や脂質などこれまた、小さなひと粒にぎっしり含まれており、小豆とともに非常にバランスのとれた栄養食になるというわけです。
「糖質制限ダイエット」なんて騒ぎ立てずに、日本古来の栄養食品の良さをいま一度見直せば、安心して口にすることができますね。
ところで、荒岩家ではお彼岸に妹とその同棲相手が帰郷し、母親も含めて3世代6人で父親の墓参りに出かけます。母親と初めて顔を合わせ緊張する同棲相手が墓前に手を合わせると、その口から思いがけない“告白”が飛び出して…やはり、ご先祖さまの前では身心が清められるのか、正直にならざるを得ないようです。
◆「改葬」は5年間で4万件も増加。変わる供養の在り方、変わらぬ心
このように家族そろって墓参りをする日本の風習ですが、急速に進む核家族化、高齢化社会のなかで、供養の在り方も変わってきています。
「将来、子供や孫の代にまで墓を維持・管理するための負担をかけさせたくない」「墓を継ぐ子供がいない」「老後のお金が心配で余計な支出を減らしたい」といった理由から、先祖代々の墓を他の地へ引っ越す「改葬」や、墓そのものを処分して永代供養ができる納骨堂などに入る「墓じまい」をする人も増えています。
厚生労働省「衛生行政報告例」によると、「改葬」をした件数が、2014年には8万3000件ほどでしたが、2019年には12万件以上とわずか5年間で4万件も増加しています。この傾向は、今後も続くものと思われます。
さまざまな事情はあるにせよ、春と秋のお彼岸、夏のお盆にはぼたもち(おはぎ)や花を手向け、静かにご先祖さまを思う気持ちは変わらないであり続けたいですね。
※現在は当時の状況と異なる場合があります。
文/中島幸恵、漫画/うえやまとち、メイン画像/Kinusara-Stock.Adobe.com
◆『クッキングパパ』とは?
福岡市博多を舞台に、商社の営業課に所属するサラリーマン、荒岩一味が家族や同僚、友人らに得意な料理の腕前を披露、食を通じて周囲の人々に笑顔とパワーを与える物語。作中ある料理のレシピは、定番料理からオリジナルメニュー、地元九州の郷土料理まで多岐にわたり、詳細なイラストとポイントを押さえた簡潔な説明はいま、すぐ作りたくなると好評を博している。
週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で1985年から連載している人気シリーズで、2022年1月現在、単行本は160巻。
※「おとなの週末Web」の記事では本稿紹介の漫画、クッキングパパ 「COOK.71 お彼岸におはぎ(ぼたもち)を作ろう!!」 を一話丸ごと読むことができます。
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