週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で連載中の「クッキングパパ」は、主人公のサラリーマン荒岩一味が、得意の料理の腕を振るって、家族や同僚らとの絆を深めるストーリーが人気。
著者のうえやまとちさん自身が、試行錯誤を繰り返しながら作り上げた自信作のオリジナルレシピを、詳細なイラストと臨場感あふれる筆致で紹介しています。本欄では3月3日発売号で通算1600話を突破した膨大なエピソードのなかから、毎週1つを取り上げ、その料理にまつわる四方山話をお届けします。
長引くコロナ禍で、自炊をする人が増えているいま、「クッキングパパ」を参考に料理を作って食べて楽しんでみませんか。第47回は「九州鍋」です。
海の幸も山の幸も「九州産」がキメ手
クッキングパパ第20巻「COOK.195 しみじみと男同士の九州鍋」では、玄界灘の真鯛や鹿児島産の豚肉およびさつま揚げ、大分産のかぼすといった九州各地の名産をたっぷり詰め込んだ豪快な鍋料理を紹介しています。
鍋料理のキメ手になるだしも昆布以外、枕崎産の鰹節、大分産のどんこ(干ししいたけ)、薩摩焼酎と、ここでも九州産が大活躍!これらをすべて鍋に入れてから、火にかけます。なお、ここでは使いませんが、だし取りに欠かせない「いりこ」も、長崎が国内の生産量の約3分の1を誇ります。
まさに、豊饒(ほうじょう)の海の幸と、温暖な気候が育んだ山の幸に恵まれた、九州ならではの美味しさを余すところなく堪能できます。
鯛のおかしらから大根の葉まで、とことん食べ尽くす!
だしが煮立ったら、鯛のおかしら、厚さ2センチの輪切りにして面取りした大根、手でちぎったこんにゃくを鍋に投入します。鯛は、ウロコ、内臓、エラをとったらぶつ切りにしておきましょう。鯛のおかしらからは上品なだしがとれるので、身の部分よりも先に入れます。
大根の葉も捨てずに活用します。葉には、根よりも多様なビタミンやミネラルなどの栄養素が高い割合で摂取できるからです。
大根に竹串を刺してすっと通ったら、鯛の身の部分と豚肉を入れます。一気に灰汁(あく)が出てきますので、その都度、丁寧にとるのが味のキメ手になります。
具材が全て煮えたら、いよいよ味付けをしましょう。まずは弱火にして白菜キムチを投入。量で辛さを調整します。さらに醤油と味噌、塩をそれぞれ足していきます。キムチの味が強いので、調味料は少なめに味見をしながら加えていくと確実です。どうせならこの際、調味料も九州産にこだわり、甘口醤油、麦味噌をチョイスするのもおススメです。最後にざく切りにした大根の葉を入れて、かぼすをぎゅっと絞っていただきます。仕上げにバターをひと切れ加えると、さらに風味が増してコクが出るのでおススメです。
キムチを使った鍋料理にはチゲ鍋もありますが、「九州鍋」は鯛から出ただしがマイルドな辛さに仕上げているので、辛いのが苦手な人も食べやすいと思われます。
〆にはこれまた、九州ならではのうどんに限ります。具材のエキスがたっぷり溶け込んだ汁まで飲み干せば、体の芯から温まることでしょう。
「もつ鍋」「もつすき」「鶏の水炊き」人気のご当地鍋は九州発祥
食材の宝庫、九州は、全国区のご当地鍋でも知られています。
福岡の郷土鍋「もつ鍋」。あっさりした醤油味で、低カロリー、野菜もたっぷりとれるとあって女性に人気です。一方、さまざまな種類のもつと野菜や豆腐を甘辛く煮込んで、溶き卵でいただく「もつすき」もじわり人気を集めています。また、もつ鍋と並んで有名なのが「鶏の水炊き」。白濁の鶏ガラスープが、主役級の美味しさを誇ります。
文/中島幸恵、漫画/うえやまとち
◆『クッキングパパ』とは?
福岡市博多を舞台に、商社の営業課に所属するサラリーマン、荒岩一味が家族や同僚、友人らに得意な料理の腕前を披露、食を通じて周囲の人々に笑顔とパワーを与える物語。作中ある料理のレシピは、定番料理からオリジナルメニュー、地元九州の郷土料理まで多岐にわたり、詳細なイラストとポイントを押さえた簡潔な説明はいま、すぐ作りたくなると好評を博している。 週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で1985年から連載している人気シリーズで、2022年12月現在、単行本は163巻。