週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で連載中の「クッキングパパ」は、主人公のサラリーマン荒岩一味が、得意の料理の腕を振るって、家族や同僚らとの絆を深めるストーリーが人気。 著者のうえやまとちさん自身が、試行錯誤を繰り返…
画像ギャラリー週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で連載中の「クッキングパパ」は、主人公のサラリーマン荒岩一味が、得意の料理の腕を振るって、家族や同僚らとの絆を深めるストーリーが人気。
著者のうえやまとちさん自身が、試行錯誤を繰り返しながら作り上げた自信作のオリジナルレシピを、詳細なイラストと臨場感あふれる筆致で紹介しています。本稿では3月3日号で通算1600話を突破した膨大なエピソードのなかから、毎週1つを取り上げ、その料理にまつわる四方山話をお届けします。
長引くコロナ禍で、自炊をする人が増えているいま、「クッキングパパ」を参考に料理を作って食べて楽しんでみませんか。第6回目は、「味噌汁」です。
現代に通じる!? 33年前の「クッキングパパ」が鳴らした食生活の警鐘
33年前、著者のうえやまさんが、単行本第17巻の帯で、日本の食卓に警鐘を鳴らし、自炊の大切さを訴えるこのようなメッセージを発しています。あれから、日本人の食料事情はどう変わったのでしょうか。
フードデリバリーサービス「GOFOOD(ゴーフード)」を運営する「ゴーフード」(本社・東京)が、2022年1月、500人を対象に「一人暮らしの食生活」に関する調査で「理想の食事」について聞いたところ「栄養バランス考えた食事」が57%と最も多い一方で、「自炊中心の食事」は18%にとどまっています。
また、「一人暮らしの食事で不足していると感じている栄養を補う方法」では、「補っていない/補う方法がわからない」が36%に上っています。補っている方法として「サプリメントを飲む」が38%であるのに対し、「他の食事で補う」は26%と低い水準でした。
一人暮らしをしている人のなかには、食事の大切さはわかっているものの、日々、仕事に追われ料理の時間が限られていたり、相次ぐ物価の高騰を受け、一人分を作るのが割高で面倒などの理由で自炊よりも、手軽に栄養を摂取したい実態が浮き彫りになっています。
魚をまるごと一匹投入! “おかず味噌汁”でパワーアップ
手軽に栄養を補給するならば、具だくさんで栄養満点の“おかず味噌汁”はいかがでしょうか。
「COOK.65 心の中からあったまるミソ汁を」では、なんと米のとぎ汁にメバルやカサゴなど魚を丸ごと一匹入れた豪快なミソ汁が紹介されています。
味噌汁の具に魚一匹とはいっけん驚きですが、たんぱく質が豊富で良いだしが出て何とも滋味豊かな味わいがたまりません。最後にミソを2種類混ぜることをお忘れなく!コクと風味が増してグッと美味しくなります。その際、煮立てるのはご法度です!
「日本の味噌汁ってほんと ほっとする味ね」「身体がポカポカしてきてなんだか元気出てきたっス」。香港出張でお疲れ気味の妻や、風邪で寝込んでいる同僚をたちまち笑顔に変えてしまう魔法の一杯、まさに「ミソ汁一杯三里の力」のことわざ通りのパワーがあります。
ご当地味噌、手前味噌…郷土料理にも多く使われる「みそ」
日本各地には、その風土にふさわしい材料や製法で作られるさまざまなミソがあります。ミソは大きく分けて「米味噌」「麦味噌」「豆味噌」「調合味噌」の4種類に分類できます。
「全国味噌工業協同組合連合会」が集計した2020年ミソの種類別出荷数量データによると、米味噌が81.8%と断トツ。名古屋など中京地方で作られ、豆麹を使った赤褐色で硬さがある「八丁味噌」に代表される「豆味噌」が4.8%、主に九州地方で生産される「麦味噌」は3.8%とそれぞれ希少なものになっています。
せっかくですから、自分が住んでいる地域以外のご当地ミソを何種類か選んで、ブレンドするのはいかがでしょう。さらにご当地ミソを使ったなめろう(千葉県)、味噌煮込みうどん(愛知県)、冷汁(宮崎県)など郷土料理も多くありますから、マネして作ってみるのも楽しいものです。
一方、ミソを手作りして、我が家の味を伝承しているご家庭も多いことでしょう。自慢することを表す「手前味噌」の由来は、かつてミソはそれぞれの家庭で趣向を凝らして作られており、その出来栄えが良いことを自慢しあった際に使われたと伝えられています。
◆ミソのアレコレ、大人顔負けの麻布中の入試問題
「味噌などの発酵食品が消化や吸収されやすいといわれる理由を答えなさい」
「味噌が腐敗しにくく、長く保存できる理由を答えなさい」
これは、2022年2月に行われた私立麻布中学校(東京)の入試の理科で出題された問いの一部です。問題文のなかで、米味噌づくりに関する記述があり、発酵の過程で麹菌や塩がどのような役割をしているのかを問うています。ふだん料理をしている大人でも「何となくこうであろう」というあいまいさを払拭させる良問です。
時には、家族で台所に立ち料理を科学的に考察することも、立派な受験、いや社会勉強になるはずです。いえいえ、勉強だなんて、堅苦しいことを言わずに子供と一緒に料理を楽しむ、その経験が単に入試で役立つ以上に、いつか子供が独り立ちしたとき、理想の食事を自分でつくる際の“財産”になることを願わずにはいられません。
※現在は当時の状況と異なる場合があります。
文/中島幸恵、漫画/うえやまとち、メイン画像/Tsuboya-Stock.Adobe.com
◆『クッキングパパ』とは?
福岡市博多を舞台に、商社の営業課に所属するサラリーマン、荒岩一味が家族や同僚、友人らに得意な料理の腕前を披露、食を通じて周囲の人々に笑顔とパワーを与える物語。作中ある料理のレシピは、定番料理からオリジナルメニュー、地元九州の郷土料理まで多岐にわたり、詳細なイラストとポイントを押さえた簡潔な説明はいま、すぐ作りたくなると好評を博している。
週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で1985年から連載している人気シリーズで、2022年1月現在、単行本は160巻。
※「おとなの週末Web」の記事では本稿紹介の漫画、クッキングパパ 「COOK.65 心の中からあったまるミソ汁を」 を一話丸ごと読むことができます。
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