冠雪の庭はさぞ格別だろうなぁ……と冬に思いを馳せ。
山門前には鯉の泳ぐ池が広がり、初夏には鮮やかなつつじが彩りを添えています。山門をくぐると正面の本堂と仏舎利大塔に圧倒され、規模の大きさを実感。境内にはかえで園や桜園もあって、四季折々の彩りが来訪者を喜ばせてくれるそうです。目的の「雪の庭」は右手の本坊に。
岩倉に妙満寺が移ったのは1968(昭和43)年。貞徳の作庭意図を汲み、借景として比叡山をしっかり見据える場所に「雪の庭」を再現したいという思いもあってこの地が選ばれたそうですが、今では手前の山が生い茂り、比叡山は頭のほうしか見ることができません。
客殿からの額縁庭園をしばし堪能したら縁側に。真正面から借景の比叡山まで全景を眺めれば、山から湧く水が枯滝を通り、池に流れ込むさまを感じることができるでしょう。枯池に並べられた青みを帯びた石が水の気配を漂わせ実に写実的。石組みには黒く高さのある石が選ばれており、これは雪の白とのコントラストを強く意識してのこと。ただ近年では雪も減り、積雪は年に1週間あるかないか……と。
庭で一句。風流な時を過ごす。
貞徳が生きた時代、この庭を前にして「雪の会」という日本初の俳諧興行も行われており、現在も貞徳を顕彰する「俳句の会」が折々に開催されているとのこと。いわば俳諧発祥の寺といえるのですね。
春に北野天満宮で梅の咲き誇る「花の庭」を堪能し、秋は名月に輝く清水寺の「月の庭」を愛で、冬の妙満寺で「雪の庭」の静けさを知る……といきたいところですが、「花の庭」も「月の庭」も期間限定公開の庭。簡単には観ることができません。
その点、妙満寺「雪の庭」は基本的に常時一般拝観が可能。京都市街から少しだけ足を延ばせば、喧騒とは無縁の空間が待っています。ゆったり静かに一句読む……なんて往時の都人に倣った風流な庭鑑賞なら、ぜひ岩倉へ。
顕本法華宗総本山 妙満寺
[住所]〒606-0015 京都府京都市左京区岩倉幡枝町91
[電話]075-791-7171
[拝観時間]本堂・雪の庭・展示室9:00~16:00、境内6:00~17:00
[拝観料]本堂・雪の庭・展示室:一般500円、小・中学生350円、境内:無料(※有料期間あり)、拝観説明:3,000円
[アクセス]地下鉄烏丸線「国際会館駅」から徒歩で約20分、京都バス「幡枝(妙満寺)」停留所すぐ、叡山電鉄「木野駅」から徒歩で約5分
編集/エディトリアルストア
取材・執筆/成田孝男、渡辺美帆
写真/児玉晴希
※情報は令和4年7月21日現在のものです。