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冠雪の庭はさぞ格別だろうなぁ……と冬に思いを馳せ。

山門前には鯉の泳ぐ池が広がり、初夏には鮮やかなつつじが彩りを添えています。山門をくぐると正面の本堂と仏舎利大塔に圧倒され、規模の大きさを実感。境内にはかえで園や桜園もあって、四季折々の彩りが来訪者を喜ばせてくれるそうです。目的の「雪の庭」は右手の本坊に。

山門前の池まわりには緑がたっぷり。近年は山から鹿がやってくるようになり、草花を食べてしまうとか。池にも入るそう。
妙満寺の象徴でもある、インド・ブッダガヤの大塔(ストゥーパ)を模した仏舎利大塔。由緒ある信仰の意匠だ。
仏舎利大塔の足元にはインドの四聖獣のレリーフが刻まれる。5層の造りで最上階には妙満寺に伝わる仏舎利が収められている。
本堂の裏山一体に「妙満寺の森」再生計画を立ち上げた。桜やモミジが山を彩る。

岩倉に妙満寺が移ったのは1968(昭和43)年。貞徳の作庭意図を汲み、借景として比叡山をしっかり見据える場所に「雪の庭」を再現したいという思いもあってこの地が選ばれたそうですが、今では手前の山が生い茂り、比叡山は頭のほうしか見ることができません。

客殿からの額縁庭園をしばし堪能したら縁側に。真正面から借景の比叡山まで全景を眺めれば、山から湧く水が枯滝を通り、池に流れ込むさまを感じることができるでしょう。枯池に並べられた青みを帯びた石が水の気配を漂わせ実に写実的。石組みには黒く高さのある石が選ばれており、これは雪の白とのコントラストを強く意識してのこと。ただ近年では雪も減り、積雪は年に1週間あるかないか……と。

「雪の庭」は広い庭園ではないが、奥にいくほど狭くなる形状で実際よりも奥行きを感じる。もともと子院・成就院の庭であったため空間が余り、そのあたりの整備も兼ねて改修された。
背景の山々の水脈が大岩に流れこみ、滝となって手前の池の水面を揺らす。そんな動的な風景を表現した枯山水。
飛び石があっても現在は庭に降りることはできないが、いずれは回遊式に整備される予定。
晴れた日には本堂から一段とくっきり比叡山が見渡せる。季節の移ろいを見せてくれる比叡山は「雪の庭」の重要な借景。

庭で一句。風流な時を過ごす。

貞徳が生きた時代、この庭を前にして「雪の会」という日本初の俳諧興行も行われており、現在も貞徳を顕彰する「俳句の会」が折々に開催されているとのこと。いわば俳諧発祥の寺といえるのですね。

庭鑑賞は客殿にある三間続きの広間から。赤い毛氈を敷いた席が用意される。雪見障子から見る庭もまた違った印象。
「山からの颪(おろし)風が吹き込む冷える土地ですが、それでも近年降雪は少なくなりました」と執事・中村英司さん。

春に北野天満宮で梅の咲き誇る「花の庭」を堪能し、秋は名月に輝く清水寺の「月の庭」を愛で、冬の妙満寺で「雪の庭」の静けさを知る……といきたいところですが、「花の庭」も「月の庭」も期間限定公開の庭。簡単には観ることができません。

その点、妙満寺「雪の庭」は基本的に常時一般拝観が可能。京都市街から少しだけ足を延ばせば、喧騒とは無縁の空間が待っています。ゆったり静かに一句読む……なんて往時の都人に倣った風流な庭鑑賞なら、ぜひ岩倉へ。

顕本法華宗総本山 妙満寺

[住所]〒606-0015 京都府京都市左京区岩倉幡枝町91
[電話]075-791-7171
[拝観時間]本堂・雪の庭・展示室9:00~16:00、境内6:00~17:00
[拝観料]本堂・雪の庭・展示室:一般500円、小・中学生350円、境内:無料(※有料期間あり)、拝観説明:3,000円
[アクセス]地下鉄烏丸線「国際会館駅」から徒歩で約20分、京都バス「幡枝(妙満寺)」停留所すぐ、叡山電鉄「木野駅」から徒歩で約5分

編集/エディトリアルストア
取材・執筆/成田孝男、渡辺美帆
写真/児玉晴希

※情報は令和4年7月21日現在のものです。

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おとなの週末Web編集部
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