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龍が舞い、獅子が踊る。竹林の静寂、松の見事な枝振り……。さまざまな時代の中で描かれてきた障屏画が、いまも往時の姿そのまま社寺や邸宅に数多く残る京都。長谷川等伯、狩野永徳に代表される狩野派、俵屋宗達、尾形光琳、円山応挙などなど、一度は耳にしたことのある世に名を馳せた絵師たちの描く世界がそこに広がります。

現在では文化財保護という観点から、本物を精密にコピーしたものを設えるところも増えていると聞きますが、それでも彼らの力量に圧倒され、“やっぱり観てよかったなぁ”と心震わされるのは、大人だけの話? 子供たちだったらどう感じるのだろう……。

でも、せっかくの京都。子供たちと一緒に社寺にも行きたいし、京都ならではの感性に少しでも触れて欲しいと思うのも親心。そこで考えました。子供も楽しめる障屏画のあるところへ行けばいいんじゃないかと。

襖絵の印象を完全に覆す、驚き極彩色の襖絵。

最初に訪れたのは山科にある隨心院。991(正歴2)年の創建、小野小町ゆかりの寺としても知られる門跡寺院。境内周辺には小町に由来する井戸や文塚などが遺ります。

薬医門は寛永年間(1624~1631)、本堂は慶長4(1599)年の建築。格式の高い門跡寺院で婚礼前撮りでも人気のお寺。
小野小町が顔を洗ったと伝わる「化粧(けわい)の井戸」。今も水が湧いている。
百人一首でも知られる美女・小野小町の伝説が詰まったお寺だけに、絵馬も薄紅の色の板に小野小町が描かれる。
本堂裏手の竹林の中に建つ「小町文塚」。小野小町が草深少将をはじめとする当時の貴公子たちから寄せられた恋文を供養したと伝わる。

お目当てはSNSでも話題となった「極彩色梅匂小町絵図(ごくさいしきうめいろこまちえず)」。なんとこれがCGの襖絵! 2009年に奉納されたもので、作者は京都在住の絵描きユニット『だるま商店』。極彩色の影絵のような作風で、綿密な下調べによる緻密な書き込みによって小野小町の一生が描き込まれています。

“ド派手なピンク!”と言ってしまいそうですが、これはあざやかな薄紅色を指す「はねず色」。隨心院に咲く梅の花にちなんだ色だそう。左から出羽の国(秋田県)で生まれ育った様子を描く「誕生の図」、宮仕え時代の「饗宴の図」、宮仕えを辞し山科小野の里で過ごす「伝承の図」、山科小野の里を出て諸国を放浪する「夢幻の図」で、4面の襖に小町の生涯が描かれています。

「伝承の図」では隨心院がモチーフに。小野氏の屋敷は姿がわからないため、このような形になったのだとか。「書き込みが緻密なので今でも新しい発見があります」と僧侶・佐伯響月さん。小町の数奇な人生を詳しく知る人ほど発見も多いのだとか。幾度も訪れる人がいるのも納得。きっと子供たちにも親しみやすく分かりやすい、新しい襖絵の姿です。

要望が多いため「極彩色梅匂小町絵図」は常時撮影OK。院内の襖絵は基本的に撮影不可となっている。
「伝承の図」で描かれた隨心院。薬医門の前には梅園があり、襖には毎年3月に行われる「はねず踊り」も描かれ、現代とリンクする。
『だるま商店』は極彩色で影絵のような画風が特長。熊野古道をテーマにした曼荼羅絵や、祇園の都おどりなど、歴史や伝統を題材に、徹底的に調査・分析して往時を描き出す。

表書院には金箔がまぶしい「四季花鳥図」や、中国の賢人を描き一部がだまし絵になっている「四愛図」が。奥書院には「宮廷人物図」、「竹虎図」など、江戸初期の狩野派による絵もたっぷり。歴史的な遺産にももちろんにも合えます。

市街地から少々離れた場所にあるので、子供たちもゆっくりじっくり襖絵を見学できるのではないでしょうか。

格式の高い客を迎える表書院では「四季花鳥図」や「四愛図」など、狩野永納の時代に描かれた金箔まばゆい襖絵が。
奥書院は4間があり、「竹虎図」などそれぞれ趣の異なる襖絵を見ることができる。「賢聖の図」は御所から賜ったと伝わる。
獅子のほか鶴やにわとりの杉戸絵も。現在も板戸として使用されている。
寝殿造りの本堂は慶長4年(1599)の建立。1年程度の修復期間となり立ち入り禁止になるとのこと。
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おとなの週末Web編集部
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