「バンドが好きやねん」 鮮烈な関西弁で語った本音
沢田研二の所属先だった渡辺プロダクションのスタッフから、ザ・タイガース時代のことは触れないように釘を刺された。だが、どうしても個人的にザ・タイガースについて訊きたかった。そこで収録の合い間にザ・タイガースの話を振ってみた。嫌な顔をされると思ったが、本人はいたって気さくにザ・タイガース時代について話してくれた。
“若い時からずっとバンドをやって来た。バンドが好きやねん。今もソロとかリード・ヴォーカルとして注目されてるけど、バックは固定していて、自分はバンドのヴォーカルのつもりなんや”と語った。テレビの歌番組などでは聞けない関西弁が鮮烈だったのを覚えている。
ぼくが一番訊きたかったのは、アイドルのような扱いだったザ・タイガース時代の楽曲の中で、どの曲が好きだったかということだった。“「シーサイド・バウンド」かな。あの曲はバンドで演っている楽しさがあったと思う”
数多いザ・タイガースのヒット曲の中で1967年5月に発表されたセカンド・シングルが「シーサイド・バウンド」だ。1970年中期頃の“ジュリー”ファン、ザ・タイガースのファンからは意外な答えだったと思う。ぼくも意外だった。そこに“ロック・ミュージシャン”として、バンドを愛する沢田研二の実像が垣間見られたのを昨日のことのように覚えている。
岩田由記夫
1950年、東京生まれ。音楽評論家、オーディオライター、プロデューサー。70年代半ばから講談社の雑誌などで活躍。長く、オーディオ・音楽誌を中心に執筆活動を続け、取材した国内外のアーティストは2000人以上。マドンナ、スティング、キース・リチャーズ、リンゴ・スター、ロバート・プラント、大滝詠一、忌野清志郎、桑田佳祐、山下達郎、竹内まりや、細野晴臣……と、音楽史に名を刻む多くのレジェンドたちと会ってきた。FMラジオの構成や選曲も手掛け、パーソナリティーも担当。プロデューサーとして携わったレコードやCDも数多い。著書に『ぼくが出会った素晴らしきミュージシャンたち』など。 電子書籍『ROCK絶対名曲秘話』を刊行中。東京・大岡山のライブハウス「Goodstock Tokyo(グッドストックトーキョー)」で、貴重なアナログ・レコードをLINN(リン)の約400万円のプレーヤーなどハイエンドのオーディオシステムで聴く『レコードの達人』を偶数月に開催中。最新刊は『岩田由記夫のRock & Pop オーディオ入門 音楽とオーディオの新発見(ONTOMO MOOK)』(音楽之友社・1980円)。