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コース料理「風姿花伝・梵スペシャル」を銘酒とともに堪能する

『水戯庵』のメニューは、基本的に、昼と夜ともコース料理。ほかに季節のお料理アラカルトがあります。コース料理は、フルコースの「風姿花伝」(昼8800円、夜1万3200円)とライトコースの「花鏡」(昼4400円、夜8800円)=いずれも税込み、別途サービス料10%。コース料理を注文した場合、能などのショーチャージはコース料金に含まれます。

「梵ウィーク」には、長田渉料理長による「風姿花伝」の「梵スペシャル」が用意されていました。能を観て、銘酒7種類+フルコースを味わって3万250円。内容は下記の通りでした。

【先付】
菜吹寄せ盛り(鮑、毛蟹、枝豆、無花果、豆腐、玉蜀黍、長芋、いくら、花穂)

「先付」

【先御膳】
水戯庵豆腐、夏ふぐの唐揚げと木ノ子の天麩羅、前菜盛り合わせ(梅貝バジル味噌、芋茎雲丹のせ、越のルビー、紫芋カステラ、福井サーモン小串)

「先御膳」

【御椀】
清汁仕立て鮎魚女葛打

【後御膳】
季節の御造り三種、冷やし煮物(蛸柔煮、南瓜饅頭、湯葉、青茄子、アスパラ、蔓紫、胡桃餡、振酢橘)

「後御膳」の美しい器

【焼物】
甘鯛若狭焼、イチボのステーキ

【御食事】
鰻ひつまぶし、薬味、香の物、出汁

【デザート】
本日の甘味

福井の地酒にあわせて、福井の食材も使われています。料理長自ら現地に足を運んで吟味してきたものだそうです。甘鯛は、若狭湾で獲れたもの。福井のサーモンは上品な脂ともっちりとした肉質が特徴です。

繊細な料理を、銘酒とともに味わう至福の時間が、ゆったりと流れていきます。

『水戯庵』のオーナーは、木村英智さん。話題の水中アート展覧会「アートアクアリウム」をプロデュースしたことでも知られるアーティストです。食、酒、上演内容はもちろん、美術品や内装など空間の全てを統括。和の文化をいっそう親しみやすくし、すばらしさを発信していこうという熱意は、いたるところに見て取れます。店内には茶室もあり、エントランスから客席に抜ける通路はギャラリーとして浮世絵などが定期的に入れ替えながら展示されます。

その思いは、器へのこだわりにも表れています。例えば、坂本龍馬も訪れたと伝わる長崎市の老舗料亭「富貴楼(ふうきろう)」で使われた器。江戸時代に創業したお店を起源として、伊藤博文が命名したとされる由緒ある高級料亭でしたが、老朽化などを理由に2018年に解体されたのを機に、譲り受けたとのことです。

「おもひでカクテル」で“甘酸っぱい”記憶に酔う

季節のうつろいを感じる料理とお酒を堪能できるのが『水戯庵』の魅力。ただ、個人的に、お勧めしたいさらなる魅力があります。

併設のバーです。

日本酒や焼酎、ビールをはじめ、日本のウイスキー、日本のワイン、日本のクラフトジンなど多種多様な国産のお酒に加え、季節に合わせたノンアルコールカクテル「二十四節気カクテル」や、「七十二候カクテル」などが楽しめるのですが、中でも、興味を惹かれたのが「おもひでカクテル」でした。

バーテンダーの河野成未さんによると、オーナーの木村さんの発案とのこと。河野さんが以前勤めていたバーに、木村さんが訪れた際、「こういう思い出があるんだけど、そのときの気持ちを表現してほしい」と注文を受けたことがきっかけだそうです。

そのエピソードを聞き、我が身を振り返ります。学生時代に「ぴあmap」を持って、映画館通いをしていた頃、特に渋谷の街の光景が浮かびました。内容を伝えると、河野さんが作ってくれたのが、ジンとウォッカをベースにしたカクテルでした。

「映画が好きだというので、『007』の映画『カジノ・ロワイヤル』に出て来るカクテルのことが頭に浮かんで…」

ジェームズ・ボンドが頼む有名なカクテルのドライマティーニを想像したのだといいます。

河野さんが咄嗟に考案したレシピは、クラフトジン「香の森」、「奥飛騨ウォッカ」、キナリキュール、グレープフルーツジュース、グレープフルーツビターズ、レモンジュース、レモンピール、ザラメ。

柑橘系の香りがふわっと漂い、甘くさわやか。ザラメの糖分が、柑橘系の刺激を和らげて“甘酸っぱい記憶”に誘います。うん、美味しい。そして、心が和みます。

客の思い出をカタチにしたオリジナルの「おもひでカクテル」

「渋谷」は当然日本国内の地名なので、メインのお酒を国産にするというこだわり。「香の森」は「養命酒製造株式会社」が造っているのですが、その本社は渋谷にあります。「渋谷」つながりで、セレクトしたという心憎い演出です。その心遣いに、感じ入りました。

日本の伝統芸能、和食、銘酒、調度品…。『水戯庵』は、日本文化の「粋」を心ゆくまで堪能できる空間です。

文・撮影/堀晃和

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おとなの週末Web編集部 堀
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