月刊誌『おとなの週末』の好評連載「口福三昧(こうふくざんまい)」(計146回)は、漫画家のラズウェル細木さんが、試行錯誤を繰り返しながら食を楽しむ様子を描いた漫画エッセイです。2021年6月には、連載をまとめた単行本『ラズウェル細木の漫画エッセイ グルメ宝島 美味しい食の探検へ』(講談社ビーシー/講談社)が刊行されました。単行本未収録の雑誌掲載作を『おとなの週末Web』で特別公開します。ラズウェルさんの“自作解説”とともに、お楽しみください。
魚介に合う「ディル」、肉料理に合う「セージ」
今回ご紹介するのは、「ディルとセージを和風の味にマッチング!」の回(『おとなの週末』2021年11月号掲載)。ディルとセージ。つまり、「ハーブ」がテーマです。
ラズウェルさんの漫画エッセイ『グルメ宝島』に収録した回にも、ハーブは登場します。「慣れ親しんだ日本の味にいくつかのスパイス&ハーブ」を加えたら、どうなるのか。そんな好奇心がもとになって、親子丼に挑戦していました。
この2021年11月号掲載回で試したのも、「親子丼」です。単行本収録回では使わなかったディルとセージを、今回はダブルで投入しています。他に作った料理は魚系で、「鯖味噌煮」と「マグロのづけ」です。
ディルは、セリ科の一年草で、古代エジプト時代から栽培されてきたといわれています。さわやかな香りが特徴。魚介に合うことで知られ、「魚のハーブ」とも呼ばれます。
セージは、シソ科の多年草。樟脳(しょうのう)に似た強い芳香が、肉の臭みをやわらげます。脂っこい料理をすっきりとした味わいに仕上げるので、肉料理にぴったりです。
ラズウェルさんは、この二つのハーブがお気に入り。合わせる料理を選んだ理由について次のように話しています。
「ディルは、魚介類と合うハーブとして知られていますので、ひとつには魚介を入れようと。セージは肉料理と合うハーブということで、肉は何にしようかなと考えたときに、日本料理っぽいソフトな肉をということで、鶏肉を選びました。そこから、親子丼となったわけですが、これは、親子丼やかつ丼には、三つ葉がのっているイメージがあるので、ディルやセージをのっけたらどうかと思ったからです。魚系で、サバやマグロを選んだのは、一般的によくある魚介の料理だからですね」
ただ、肉系と魚系のいずれの料理にも、ディルとセージを一緒に使っています。
「肉はセージ、ディルは魚に合うといいますが、厳密には、どうかわからなかったので、一緒に使ったという感じですね。日本料理には、まだ、どちらも使ったことがないので、とりあえず、両方、入れてみようかと」
ハーブを使うことで料理の味がグレードアップ
ハーブは、ラズウェルさんからみて、どんな存在なのでしょう。この点を訊ねますと、以下のような答えが返ってきました。
「『ハーブ』と、カタカナで書くと、外国からやってきたイメージ。ですが、厳密に言うと、紫蘇(しそ)もハーブなんです。でも、ハーブとは思わずに食べているでしょう?ハーブというと、西洋料理、エスニック料理で使われているイメージ、エキゾチックなイメージを受けます。パクチーとかは、日本では当初のころ、嫌う人は多かったようですが、その後、受け入れられていきました。今では、日本でも日常的な食材のひとつになってきているのかなと」
ハーブは料理にとって、どんな存在になるか―――と、重ねて聞きますと。
「使うことによって、ちょっと、料理の味がグレードアップする。自分の味が、お店の味に近づく、そんな気がします」
そして、最後に、最も好きなハーブについて質問しました。
「この漫画を描いた時点で、ディルとセージの二つが、お気に入りでした。今でも、好きなハーブのツートップですね。タイムも好きですが」