月刊誌『おとなの週末』で好評連載中の「口福三昧(こうふくざんまい)」は、漫画家のラズウェル細木さんが、試行錯誤を繰り返しながら食を楽しむ様子を描いた漫画エッセイです。2021年6月には、連載をまとめた単行本『ラズウェル細木の漫画エッセイ グルメ宝島 美味しい食の探検へ』(講談社ビーシー/講談社)が刊行されました。単行本未収録の雑誌掲載作を『おとなの週末Web』で特別公開します。ラズウェルさんの“自作解説”とともに、お楽しみください。
「日本人を栄養面から救った鯨」
今回取り上げるのは、「ちょっぴりノスタルジックな鯨呑み」の回(『おとなの週末』2021年6月号掲載)。日本の鯨食文化に触れた内容です。
「鯨は江戸時代中期頃には庶民の食べ物となり、各地に鯨食文化が根付いていきます」。日本捕鯨協会のホームページには、鯨食文化の歴史や背景が詳しくつづられています。そして、こう続きます。
「敗戦後の食糧難の時代、日本人を栄養面から救ったのも鯨でした。鯨肉は栄養価の高い安価な食材として庶民の食生活を支え、学校給食でも子どもたちの健康を育む重要なメニューとして供されてきました」
ラズウェルさんは、高度成長にあたる1960年代に小学校生活を送ります。給食には、やはり「鯨」が出ました。
「給食では竜田揚げが、代表的だと思うんですよ。小学生のときに、わりと出続けていました。当時、豚肉が出ると、脂身ばかりで美味しくないので、鯨は赤身だし、大歓迎でした。みんなも、喜んで食べていましたね」
当時の給食といえば、「脱脂粉乳に、“ぼそぼそ”のパン」(ラズウェルさん)。そんな、あまり美味しいとは言い難いメニューの中で、鯨の竜田揚げは、ダントツだったと言います。
「当時の給食は、全般的に美味しくない。ですから、鯨の竜田揚げの他に、美味しいものは思い出せないほど。小学校の6年間は給食でしたので、ずっと食べていた感じです。今は、年に4~5回程度。これでも結構な頻度だと思います」
「辛子醤油が合う」というラズウェルさん一押しの鯨料理は……
今回の漫画の中では、鯨のいろんな料理が紹介され、酒のつまみという観点から描かれています。ベーコン、さらし鯨、鯨カツ、鯨の缶詰を使ったハリハリ鍋。その中で、一番好きな料理を尋ねると、返ってきた答えは……。
「やっぱり、ベーコンです。ベーコンは、子どものころから、食卓に出てましたし。特に、今の鯨のベーコンは、品質がよくて、美味しくできあがっていると、思います。ベーコンは、(値段が比較的安い)鯨の中でもさらに安かったと思います。コマ切れにしたものを、父親は酒のつまみにしてたし、ご飯のおかずにもなりました。ベーコンの細切れ、脂の旨み。かみ切りにくかった思い出がありますねぇ」
ベーコンの食べ方は、ラズウェルさんによると、「辛子とよく合うので、辛子醤油で食べるのが、いいですね。昔は、ソースをかけていたような記憶がありますが。辛子醤油が美味しいですね」。
今回のテーマは、晩酌のための鯨料理ですから、当然、漫画では、各料理に合うお酒についても触れています。ちなみに、鯨カツは、「酎ハイ」や「ハイボール」がよいとのこと。さて、一押しのベーコンに合わせるお酒の種類は?
ぜひ、【画像ギャラリー】の漫画でご確認ください。