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月刊誌『おとなの週末』の好評連載「口福三昧(こうふくざんまい)」(計146回)は、漫画家のラズウェル細木さんが、試行錯誤を繰り返しながら食を楽しむ様子を描いた漫画エッセイです。2021年6月には、連載をまとめた単行本『ラズウェル細木の漫画エッセイ グルメ宝島 美味しい食の探検へ』(講談社ビーシー/講談社)が刊行されました。単行本未収録の雑誌掲載作を『おとなの週末Web』で特別公開します。ラズウェルさんの“自作解説”とともに、お楽しみください。

秋田の伝統工芸品「曲げわっぱ」

今回ご紹介するのは、「ノスタルジック!休眠弁当箱でマイ弁当」の回(『おとなの週末』2021年10月号掲載)。弁当箱が、テーマです。

ラズウェルさんの仕事場は自宅。弁当箱はほぼ必要がなく、いくつかの弁当箱が使われることなく眠っているといいます。その「休眠弁当箱」を使ってみようというのが今回の企画です。

引っ張り出された弁当箱は、秋田の伝統工芸品「曲げわっぱ」、「松花堂弁当」、幼少のころ使っていた「アルマイト」の3つ。

まず、おかずを作ってみたのは「曲げわっぱ」。ラズウェルさんが、この弁当箱の良さについて次のように語ってくれました。

「秋田杉が使われていて、板を曲げる技術が素晴らしいですよね。板を丸く曲げる技術が驚きです。板を(きれいに)曲げる技術の素晴らしさですね」

曲げわっぱは流麗なフォルムの美しさが魅力です。ラズウェルさんは漫画の中で「可愛い」と形容しました。

「“まるさ”が、可愛いです。ふつう、お弁当は四角なので。杉の素材の良さもありますね。吸湿性があって、適度に湿気を吸ってくれますから。そういう機能性にも魅力を感じます」

伝統工芸品だけあって、値段はそれなりにします。

「1万2600円もしたので、お高いんですけど、優れた技術と、秋田杉の素材の良さを考えると、その値段は当然かなと思います。もう10数年前に、秋田(県内を北から南まで)を回ったんですけど、秋田市内の物産館で買いました」

実は、自分も、10数年前に取材で秋田を訪れた際、曲げわっぱを手に入れました。職人の技術が生きたあまりにも素晴らしい伝統工芸品なので、ここに食物を入れて汚してしまうのが惜しくて、一度も使っていません。このことをラズウェルさんに伝えると、「どうしても、そう思っちゃいますよね。私が買ったときに、秋田県の観光(の担当)課の方の話ですが、日々入れて使っていると、味が出て来ると、言っていました。ほとんど使っていないので、味は出ていませんけど(笑)。やっぱり、もったいない感がありますね」

ラズウェルさんも購入後、これまでに一度しか使っていなかったそうです。この曲げわっぱは二段になっており、けっこうな分量が入るため、おかずは10品にもなりました。

幼稚園の頃に使った郷愁漂う「アルマイト」

次に試したのが、松花堂(しょうかどう)弁当です。ネットで購入したところ、値段は3950円。木製で陶器が付いています。

松花堂弁当の「松花堂」は、江戸初期の僧、松花堂昭乗(しょうじょう)に因むといわれています。ラズウェルさんによると、おかずを作るのに、とても時間と手間がかかったそうです。

「素材をそろえてから、料理をして詰めるまで、小一時間ぐらい。品数が多く、ひとつずつ作ると、手間がかかりますね。料理屋でランチが出て来るふうな感じにして、詰めようとしたら、けっこう大変でした。真っ白なご飯とか、唐揚げとか、買ってきて詰めるだけだと楽ですが。料亭風にするのは大変でしたね。料亭は、プロですので、それを素人が真似するのは大変です」

品数は、刺身を種類別に数えて実に16品にもなりました。

最後に登場するのが、アルマイトの弁当箱です。

「幼稚園に通っていた4歳ぐらいのときに使っていたものです。一昨年、実家を壊すとき、妹が台所に眠っていたのを見つけて救出してくれたんです」

この懐かしいお弁当箱に詰めた品々は、幼少のころに大好きだったものになりました。海苔巻きが入っていますが、これはかんぴょう巻。入れたのは計3品でした。

最後に、お弁当の良さについて、ラズウェルさんに伺いました。

「まずは、ひとつの器に、いろんなものが詰まっているというのが、最大の魅力です。お皿が並んでいるのではなく、ひとつの容器に、いろんなものが詰まっている。もうひとつは、蓋が付いていて、開けたときの喜びですね。閉まっている蓋を開けたとき、喜びや、驚きがある。自分で、おかずを詰めているので、何が入っているのかは分かっているんですけど、開けたときに、喜びや驚きがあります」

ひとつの容器に入っている魅力について、尋ねますと―――。

「一目で見渡せること。中にいろんなものが、コンパクトに詰まっている美しさがありますよね。弁当の写真を、ネットに上げる人が多いですよね。食卓に並んでいる写真よりも、弁当のほうが“映える”感じがします」

たしかに、日本が生んだ美意識を感じます。漫画には、カラー写真で、作った3つのお弁当が掲載されています。脇には、メニューの記載も。今回、この記事の中では、作った料理の詳細にはあえて触れませんでした。ぜひ、漫画を楽しむ過程でご確認ください。

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おとなの週末Web編集部 堀
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