冬の京都(2)庭、町家、古布…街にあふれる“洗練された美”3選

『何必館・京都現代美術館』上質のアートと刻々と変化する光庭を眺めてリフレッシュ 京都の花街・祇園にひっそりと建つ私設の美術館。常設する北大路魯山人作品室や日本画家・村山華岳を始め、近代・現代の絵画、工芸、フォトアートなど…

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冬の京都は、観光客が比較的少なく、ゆったりとした気持ちで街を歩けます。ストレスの多い毎日。疲れた心を癒すために庭を愛でたり、美に触れたり―― 。冬の京都で心をととのえてみませんか。

「光庭」を眺めて過ごす贅沢

「光庭の前に座って、光が移動するのを一日中見ている方もいらっしゃいますよ」と『何必館(かひつかん)・京都現代美術館』の学芸員・内田真紀子さん。なるほど、常設展も企画展も興味深いが、ただ光庭を眺めて過ごすというのはなんという贅沢な時間の使い方だろう。

少しユニークな名称は、定説に甘んじず“何ぞ、必ずしも”という自由な精神を持ち続けたいとの願いから名付けられた。こちらはふらりと訪れて楽しめるところもよく、5階の紅葉が植えられた光庭と展示用の茶室は必見だ。

『何必館・京都現代美術館』

この階には日常からふっと離脱できる浮遊感が漂っている。丸く切りとられた天井からは自然の光が差し込み、時間によって変化する様が光のアートのようで見飽きないのだ。

京都の美を感じる場所といえば町家も外せない。ギャラリーカフェ『ザ ターミナル キョウト』の建物は元呉服問屋だった敷地150坪の町家を復興したもの。京都で生まれ育った店主が「京都に何か恩返しを」と取り組んだという。

『The Terminal KYOTO』

今、京都では多くの町屋が維持できずに取り壊されていて、そこに少しでも歯止めをかけたい、と店主は語る。奥庭を眺めながら喫茶で過ごす時間は、京都人の美意識を体感できる濃密なひと時だ。

京都にはマニアックなギャラリーが多いが、世界的にも珍しい日本の古布を収集する『ギャラリー啓』は中でも異彩を放つ。「日本では外国の古布が人気ですが、実は日本には他国でも類をみない繊細な手仕事の古布がたくさんあるんです。それをもっと知って欲しい」と店主の川崎さん。

『ギャラリー 啓』

仕事着や生活用具として使われてきた古布は、年代を経てさらにテキスタイルアートとしての輝きを増している。ここはそんな未知の日本の美と出会える、京都ならではのギャラリーなのだ。

今まで紹介した3軒はどこも散歩の途中や旅の隙間時間にふらりと行ける場所。京都ならではの美に、気軽に触れてみてはいかが。

『何必館・京都現代美術館』上質のアートと刻々と変化する光庭を眺めてリフレッシュ

京都の花街・祇園にひっそりと建つ私設の美術館。常設する北大路魯山人作品室や日本画家・村山華岳を始め、近代・現代の絵画、工芸、フォトアートなど多くの質の高い所蔵作品の企画展を開催する。

『何必館・京都現代美術館』

また空に開けた5階の光庭や村上華岳の仏画を展示する茶室など、都会の中の小さな美術館ながら、心落ち着く空間も特筆すべき。地下1階から5階までゆっくり見学してみたい。

『何必館・京都現代美術館』

[住所]京都府京都市東山区祇園町北側271
[電話]075-525-1311
[営業時間]10時~18時(入館17時半まで)
[休日]月(1月9日は開館)、夏季、12月26日~1月6日、展覧会準備期間
[交通]京阪電気鉄道祇園四条駅から徒歩3分

「エリオット・アーウィット」展(2022年10月15日~2023年1月29日)

『何必館・京都現代美術館』エリオット・アーウィット「プロヴァンス、フランス 」1955 何必館・京都現代美術館蔵

25歳で世界的な写真家集団「マグナム・フォト」のメンバーとなり、ニューヨークを拠点に活躍してきた写真家エリオット・アーウィット(1928年~)の代表的な作品を展示。

『The Terminal KYOTO』ゆるやかな時間が流れる京町家でゆったりくつろぐ

裕福な呉服問屋・木崎商店の創業者が贅を凝らして造らせた、町家を復元したギャラリーカフェ。建物の棟上げは1932年(昭和7年)、当時は日本建築の円熟期とあって、建材などその恩恵を存分に受けている。

手作りケーキ&ドリンクセット 1760円 ※数量限定

『The Terminal KYOTO』手作りケーキ&ドリンクセット 1760円(写真はバスクチーズケーキとヴァンショー)※数量限定

敷地150坪と広く、奥庭には優美な日本庭園がある。そこに面した和室は喫茶室で、人気の手作りケーキ&ドリンクセットは1760円(※数量限定。写真はバスクチーズケーキとヴァンショー)。

『The Terminal KYOTO』

[住所]京都府京都市下京区新町通仏光寺下ル岩戸山町424
[電話]075-344-2544
[営業時間]9時~18時
[休日]年末年始
[交通]市営地下鉄四条駅6番出口から徒歩6分

『ギャラリー 啓』いまだ知らない日本古来の布のロマンに触れる

通称“自然布”と呼ばれる古布や古民具を集めた唯一無二のギャラリーショップ。置かれているのはすべて日本国内のもので、大麻や苧麻(ちょま)、藤布など草木の繊維を使って作られた布が中心。

『ギャラリー 啓』

まだあまり知られていない日本の古布をこれだけ収集しているのは希少で、品揃えは博物館クラスともいわれる。オーナー川崎啓さんの丁寧な説明を聞いて、日本の布の奥深い歴史を紐解きたい。

『ギャラリー 啓』

[住所]京都府京都市中京区寺町通夷川上ル久遠院前町671-1
[電話]075-212-7114
[営業時間]12時~18時
[休日]月~水、お盆、年末年始
[交通]京都市営バス「河原町丸太町」から徒歩5分

撮影/村川荘兵衛、取材/岡本ジュン

※2022年12月号発売時点の情報です。

※全国での新型コロナウイルスの感染拡大等により、営業時間やメニュー等に変更が生じる可能性があるため、訪問の際は、事前に各お店に最新情報をご確認くださいますようお願いいたします。また、各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いいたします。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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