野菜を煮込んでもビタミンCの60%以上が残る
堂園博士のところでは、鍋料理も患者さんにすすめているという。
「先日も60代の女性の患者さんが来ましたが、肌がすごくきれいになっているんです。娘さんから”お母さんどうしたの、毛穴が小さくなって肌がすごい”と言われたそうです」
堂園博士が注目しているのは、鍋や「野菜スープ」でビタミンCが摂れることだという。
「野菜を煮たらビタミンCが壊れるというのが常識だったのに、野菜は煮込んでもビタミンCは壊れず(前田教授によれば、多くは60%以上残るという)、冷凍に保存しても栄養素がなくならないというのは、常識を覆すような画期的発見です」
と述べ、免疫系とビタミンCの関係についてこう説明してくれた。
「免疫系を健全に保つのに必要なビタミンは、ビタミンA、ビタミンB12、パントテン酸、葉酸、ビタミンCです。特に効果的なのはビタミンCで、人体にとってなくてはならない抗体の産生量も、実はビタミンCの摂取量に影響されることがわかっています。風邪(ウイルス感染)にかかるとビタミンCの量は半減し、その後数日は低い値が続くので細菌感染を受けやすくなります。また、もう一つの免疫物質にインターフェロンがありますが、この産生量もビタミンCの影響を受けることがわかっています。日頃からビタミンCを摂取していると、風邪などの罹患率が低下するうえ、ウイルス感染しても、二次的な細菌感染を防止することが期待できるのです」
野菜の多くは、抗酸化物質だけでなく、ビタミンAやビタミンC、葉酸などを豊富に含んでいる。ちなみに、老化を防ぐには細胞の修復が重要で、それに必要なのが葉酸だ。これは緑の濃い野菜に多く含まれている。鍋料理や野菜スープは、ウイルスに感染しにくい体をつくるだけでなく、老化を遅らせ、がんなどの予防にもなるということだ。
文・奥野修司
おくのしゅうじ。ノンフィクション作家。1948年、大阪府に生まれる。立命館大学卒業後、1978年から日系移民調査。帰国後、フリージャーナリストとして活動。『ナツコ 沖縄密貿易の女王』(文藝春秋)で講談社ノンフィクション賞と大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。近年、『怖い中国食品、不気味なアメリカ食品』(講談社文庫)、『本当は危ない国産食品 「食」が「病」を引き起こす』(新潮新書)などを通じ、日本を取り巻く食事情と食環境に警鐘を鳴らし続けている。
新刊情報
『野菜は「生」で食べてはいけない』奥野修司(著)講談社ビーシー/講談社
健康や美容のため、生野菜をたくさん食べ、野菜ジュースを日課とする人が大勢います。しかし実は、こうした生野菜の摂取は、健康効果の点からはまったくおすすめできません。むしろ、「野菜は生で食べるな」というのが基本。本書は、その理由と、「唯一の解決策」を追った健康ノンフィクションです。