×

気になるキーワードを入力してください

SNSで最新情報をチェック

旅先で見つけた新しい感情

すっかり胃袋が満ちた私は、中華街を見終わった後も腹ごなしに歩くことにした。

天気もよく気持ち良かったので、あてもなくふらふら歩いていると、山下公園に出る。

特に他に目的もないので、山下公園へ侵入して、ベンチに座わり、ぼーっとしてみる。

気持ちがいい。

幼少期には、公園でベンチに座ってぼーっとしている大人を見て「なんだあいつ。特に遊ぶこともせずにただ座っていて気味悪いな」と思っていたけれど、この歳になると、座って景色を眺めているだけでも充分に気持ちが満ちる。当時の大人の気持ちがわかった。

適度に緑が目に入るし、海の眺めも良い。

普段コンクリートで作られた物ばかりを目にしているからなのか、単に心が疲れているからなのか定かではないけれど、癒されるなあ、と実感する。

少し離れたベンチに、私と同じようにベンチに腰掛けている老いた男性が目に入った。その人も、特に何をする訳でもなく、景色を見つめていた。

何だか、40年後の自分を見ているような気持ちになった。

ふと、私が彼のような年になっても山下公園のこの光景が残っていたらいいな、と思う。

ちょっとでもこの景色を保てるように、普段では気にもしなかったのに、急に足元に落ちているゴミを拾ったりしてみた。

忙しない日常の中では思いもしなかった感情と出会えたので、もう横浜での旅は成功だと言えよう。

この時期は日が落ちるのも早いので、どれくらい座っていたか分からないけれど、あっという間に太陽が沈むまで見届けてしまった。

30歳になって、公園に座っているだけで充実した時間を過ごせるようになったと実感した、そんな自分を発見できたいい旅だった。

前田裕太(まえだ ゆうた)
1992年8月25日生まれ、神奈川県出身。愛媛県の名門、済美高校野球部の同期である高岸宏行とのお笑いコンビ「ティモンディ」のツッコミ担当。趣味はサッカー観戦、読書。テレビ番組で画力を披露したり、複数メディアでコラムを執筆するなど、マルチな活動で注目を浴びている。

ティモンディ
高岸宏行・前田裕太によるお笑いコンビ。コンビ結成は2015年、グレープカンパニー所属。高岸のポジティブなキャラクターや、二人の野球経験と身体能力などがバラエティ番組で引っ張りだこに。コンビの野球経験をいかしたYouTubeチャンネル『ティモンディチャンネル』の登録者数は約28万人。

icon-gallery
icon-prev 1 2
関連記事
あなたにおすすめ

この記事のライター

ティモンディ前田裕太
ティモンディ前田裕太

ティモンディ前田裕太

最新刊

全店実食調査でお届けするグルメ情報誌「おとなの週末」。11月15日発売の12月号は「町中華」を大特集…