定食屋へ行こう!東京4選~お魚が主役編

『一汁三菜』 @南青山 ひと口ごとに深く染み渡る これぞ真の豊かさ 飯と汁物、主菜と副菜二品で一汁三菜。和食の基本献立であると同時に、贅沢せずともこれで十分、的な表現で使われることが多い気がするこの言葉。いや、本気で作っ…

画像ギャラリー

普通のご飯の素晴らしさをしみじみ感じさせてくれる、定食屋の存在。普段はあまり気にかけることなく過ごしがちなこの極上ご飯を、真摯にリスペクト&フィーチャーいたします!

『ふ定食屋』 @恵比寿

百年後までふつうのご飯を支えたい そんな思いが原動力

焼き鮭に箸を入れると、ふっくらとした身と外側のパリッと香ばしい焼き加減に「おぉ」と小さな感動を覚えた。奇をてらったものはないけれど、なにげない料理が丁寧に作られている。ここ『ふ定食屋』のテーマは、かつては当たり前だった普通のご飯を大切にすること。

炭火焼き鮭 500円、古雑玄米 200円、味噌汁 150円、青菜の胡麻和え 200円、ひじき紫蘇煮 200円、納豆 180円、明太子 180円、厚焼き玉子 180円

『ふ定食屋』(トレー内左から)古雑玄米 200円、(小鉢上から)青菜の胡麻和え 200円、ひじき紫蘇煮 200円、納豆 180円、(右上)炭火焼き鮭 500円、(右下)味噌汁 150円、(トレー外左から)明太子 180円、厚焼き玉子 180円 鮭は注文を受けてから炭火で焼き上げる。稲藁に住む天然の納豆菌で造る昔ながらの納豆。ご飯は「銀シャリ」か、古代米を入れた「古雑玄米」から選ぶ。おひつでの提供も可。味噌汁はレギュラーとヴィーガン用の2種を用意。熱々を運んでもらえる

伝統的な調味料や添加物無しの食材、顔見知りの生産者が作る野菜など、“真っ当な”ものを使ってごくシンプルに調理する。主菜を選び、小鉢やご飯を自由に組み合わせるスタイルは、好きな献立を選べるだけでなく、フードロスを少しでも減らすことに役立てたいと考えている。

店名の“ふ”の謎を解くと、トレンドを追わず、受け継がれてきたものを育む普遍性、化学調味料や農薬などの不添加、そして変化を楽しみ、自由であるための不定の頭文字。そんな志に引き寄せられて、個性的なスタッフが集まったことも店の強みとなった。

ミシュラン星付きフレンチ出身者や元料亭の料理長など、“定食屋”ではくくれない可能性を秘めている。でも「情報に振り回されて欲しくない」とうんちくはあえて封印。1品180円、300円と気軽な値段で、街の人たちのより良い日常をさりげなく後押ししている。

『ふ定食屋』

[住所]東京都渋谷区恵比寿4-5-23 ルイシャトレ恵比寿101
[電話]非掲載
[営業時間]7時半~15時
[休日]無休
[住所]JR山手線ほか恵比寿駅東口から徒歩3分

『青山 おとと』 @外苑前

立派な魚に惚れ惚れ 釣り好き料理長の魚が主役の定食

釣りと魚が大好きという料理人の福嶌さん。休みともなれば、店を終えたその足で車を飛ばし、朝には外房で釣りをするというほどの釣り好きだ。「本当においしい魚が食べられて、ご飯もしっかり味わえる。そんな店を目指しました」と言う。

銀鱈西京焼き 定食(昼) 2500円

『青山 おとと』銀鱈西京焼き 定食(昼) 2500円 自家製ブレンドの西京味噌で漬けた銀鱈。漬物と明太子、小鉢2品はセット。内容は日替わりで、この日は牡蠣の炊き物、かぶとそぼろの炊き合わせ

自慢の定食は、割烹料理店のそれのように端正な姿だ。西京味噌と濃厚な魚の脂の旨みが溶け合う銀鱈は、立派な厚みに驚く。鯖の味噌煮だって半身でドーンと太っ腹。カウンターの中心に陣取る特注の羽釜で炊き上げるご飯は、粒立ちがよくツヤツヤ。小鉢や付け合わせもひと手間かけた料理ばかり。定食と思うと価格はやや贅沢だが、お値段以上の内容に食べれば大満足できる。

夜は刺身や藁焼きなど魚料理で飲むのもいいし、ご飯セットもあるので、深夜にしっかり食べたい時にもうれしい。「遅い時間でも炊き立てのご飯が食べられる店があったらいいなと思って」と福嶌さん。ときには釣り仲間の釣果が持ち込まれることもあるというから、出合えればラッキーだ。

『青山 おとと』

[住所]東京都渋谷区神宮前3-1-28 ベルタウン青山地下1階
[電話]03-6804-1914
[営業時間]12時~15時(14時半LO)、18時~24時(23時半LO)
[休日]不定休
[交通]地下鉄銀座線外苑前駅1b、2a出口から共に徒歩5分

『一汁三菜』 @南青山

ひと口ごとに深く染み渡る これぞ真の豊かさ

飯と汁物、主菜と副菜二品で一汁三菜。和食の基本献立であると同時に、贅沢せずともこれで十分、的な表現で使われることが多い気がするこの言葉。いや、本気で作ってあるとこれ、たいそう贅沢でしょ。それをしみじみ実感するのがこの店だ。

鮭粕漬け定食 1520円(夜は+300円)

『一汁三菜』鮭粕漬け定食 1520円(夜は+300円) ご飯は白米か玄米のみでも、ハーフ&ハーフでも。夜は、日本一の稲オタクと称される篤農家・松下明弘さんの米に代わる

こちらは昼夜共に、主菜を焼魚とする定食屋。千葉と静岡の歴史ある魚屋から仕入れるという魚は、一夜干しや醤油干し、粕・味噌漬けと、どれもがそれぞれ最も美味であろうひと手間をかけている。じっくり焼かれた身の旨さはこの上ないが、皮なぞ、ツマミ用に別注したいほどだ。

そして副菜と呼ぶには申し訳ないくらい丁寧に作られた日替わりの小鉢とおひたしに、自家製ぬか漬けと、味噌汁のダシを取った後の昆布で作った佃煮。これにとびきりのご飯と味噌汁が付く。完璧である。この行儀よく配膳されたお膳の、なんとも美しいこと。気がつけば、椅子の上でも正座している自分がいる(心の中で)。箸を置いた後のえもいわれぬ充足感は、最上の口福。

『一汁三菜』

[住所]東京都港区南青山7-12-13
[電話]03-5467-9187
[営業時間]12時~14時LO、18時〜20時半LO
[休日]土・日・祝
[交通]地下鉄日比谷線広尾駅3番出口から徒歩10分

『Kitchen QH』 @白金高輪

毎日でも通いたい 野菜豊富なおばんざいの体を思いやるゴハン

「毎日来てくれる方もいますし、うちのご飯を食べて体が楽になったと言われることもあるんですよ」と言うのは、割烹着がキュートな店主の吉井南美さん。南美ちゃんの愛称で親しまれる彼女は、ちょっと異色の経歴を持っている。実はニューヨークでバーテンダーをしていたこともあるとか。

帰国してポップアップでおばんざいを作ったところ、それが評判となって間借り営業で店をスタートさせたのだ。京都出身の彼女が作るおばんざいは、野菜中心で体に染み入るやさしい味。それがズラリ9種類も並ぶ定食は圧巻だ。

本日のおばんざいランチ 1200円

『Kitchen QH』本日のおばんざいランチ 1200円 定食の主菜は肉か魚から好みで選ぶ。9種類のおばんざいと無農薬玄米、味噌汁付き。この日の魚料理は「しゃけカマの豆乳煮」

おばんざいはオーソドックスなものから、キャベツのアンチョビレモンバターソテーとか、りんごとビーツのクミンサラダなど、目を引くメニューも絶妙に加えられている。肉か魚の主菜が付いて、ボリューも申し分なし。しかも実家の母が作ってくれるという野菜や無農薬玄米などを使うのでとても健康的。これぞまさに理想の定食といえる。毎日通えるご近所さんが本当にうらやましい。

『Kitchen QH』

[住所]東京都港区高輪1-1-3
[電話]03-6450-2312
[営業時間]11時半~17時半LO、水~20時
[休日]日、月
[交通]地下鉄南北線ほか白金高輪駅2番出口から徒歩6分

撮影/西崎進也(ふ定食屋)、大西尚明(青山 おとと)、貝塚隆(一汁三菜、Kitchen QH)、取材/岡本ジュン(ふ定食屋、青山 おとと、Kitchen QH)、編集部(一汁三菜)

※2023年2月号発売時点の情報です。

※全国での新型コロナウイルスの感染拡大等により、営業時間やメニュー等に変更が生じる可能性があるため、訪問の際は、事前に各お店に最新情報をご確認くださいますようお願いいたします。また、各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いいたします。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

画像ギャラリー

この記事のライター

関連記事

『キクヤ』の「スパイスおでん」ってなんだ!?濃厚な鰹ダシ×スパイスは店のオリジナルビールと相性抜群!

『しみる 丸の内』の鶏ダシは旨みの塊!「鶏串おでん」と名物フルーツサワーで乾杯

渋谷『えんらい』の「季節限定おでん」には燗酒一択!店主が選ぶ酒は揚げ物にも刺身にもピッタリなのだ

日本料理界の重鎮が監修 『都橋 おでん 久』の名物「エビ進上」は自慢のツユとの相性◎

おすすめ記事

名古屋のコーヒーは量が多い!?コーヒー好き女優・美山加恋がモーニングでその真相を知る

肉厚!もつ煮込みがうまい 創業70年の老舗『富久晴』はスープも主役「ぜひ飲み干して」

東京、高田馬場でみつけた「究極のラーメン」ベスト3店…鶏油、スープ濃厚の「絶品の一杯」を覆面調査

禁断の2尾重ね!「うな重マウンテン」 武蔵小山『うなぎ亭 智』は 身がパリッと中はふっくら関西風

この食材の名前は? やせた土地でも育ちます

満腹でも気分は軽やか!東京産食材にこだわったヘルシービュッフェ を提供 八重洲『ホテル龍名館東京 花ごよみ東京』

最新刊

「おとなの週末」2024年12月号は11月15日発売!大特集は「町中華」

全店実食調査でお届けするグルメ情報誌「おとなの週末」。11月15日発売の12月号は「町中華」を大特集…