本誌『おとなの週末』の連載『往復書簡』でもおなじみ、タベアルキスト・マッキー牧元さんの「立ち食いそば」連載。第4回は山梨・小淵沢駅の駅そばについて。今回もまた珍しいメニューを食べております。
画像ギャラリーお目当ての「海賊そば」はなかった。
信州名物「山賊焼(鶏の唐揚げ)」が乗った、「山賊そば」に対抗して生まれた種そばである。
「海賊そば」は、サメのフライが2枚乗っているという。
みなさんサメですよサメ。全国広しといえど、他に例を見ない希少な蕎麦ではないですか。
だが、おばちゃん曰く「今日はないのよねー」である。
仕方なく自動販売機の品書きボタンを見ていたら、「肉(馬)そば」とあるではないか。
これはなんとしても頼まなくてはいけない。
馬ならうどんもいいなと、再びボタンを見ると、「肉(馬)黄そば」というメニューがあるではないか。
「この黄そばとはなんですか?」と、おばちゃんに聞けば
「ラーメンの麺です」と、何当たり前のこと聞いてんのよという顔して、答えられた。これはなんとしても頼まなくてはいけない。
「肉そば黄そば」(590円)に紅生姜天(130円)を追加してオーダーした。
肉はたっぷり、紅生姜天は巨大で、ネギはこんもりと、奉仕精神に富んで、うれしいじゃありませんか。ツユは甘口で、そこに甘辛く煮た肉の煮汁が溶け込んで、さらに甘くなる。
さあ、果たして、蕎麦ツユに中華麺は合うのだろうか?
最初は妙な感じだった。日本の古民家に住んでいる中国人といった感じで、どこか無理がある。
ところが半分ほど食べ進んだら、馴染んできた。そばを食べているのにラーメン気分となってくる。
黄そば、おそるべし。
そこへ白胡椒をかけたら、さらにラーメン感が強まった。
肝心の具の馬肉は、噛み応えがあってしぶとい。肉を噛みしだいている喜びがあってよろしい。
巨大紅生姜かき揚げ天は、途中でバラバラに千切り、肉と合わせて食べてみた。甘辛い味を生姜の辛味が締めて、なかなかよろしい。
さすが駅弁に初めて生野菜を入れた「高原野菜とカツの弁当」や「元気甲斐」といった名駅弁を生み出している『丸政』である。
次回は、なんとしてもサメを食べたい。
取材・撮影/マッキー牧元
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