「全日本さば連合会」広報担当サバジェンヌこと池田陽子さんによる「サバジェンヌが行く〜至福の鯖百選〜」第82回。4回に渡った福井のサバ旅。最後は、さまざまなサバ料理と福井市内の地酒が楽しめる居酒屋と、へしこを使った調味料から派生した新商品の数々をご紹介します。
画像ギャラリー福井県内全33蔵元の地酒とサバ料理を堪能
福井に来たからには、福井の銘酒とともにサバを味わいたい……。そんなときに超おすすめなのが『錦輝(にしき)』。なんと福井県内全33蔵元の地酒とともに、福井ならではの食の幸を堪能できる。
福井ならでは! というわけで、もちろんサバメニューも豊富。
刺身、しめさば、へしこ、焼き鯖寿司などサバ心を満たすラインナップが、利き酒師の資格をもつ店主厳選のお酒とともにいただけるなんて、たまらんだろう、サバファン!
まず、タイミングが合えばぜひ味わっていただきたいのが福井の天然サバ。「越前海岸に面した鷹巣漁港で水揚げされたサバは、身に透明感があり、サッパリした味わいが絶品です」と語るのは、店長の近藤正典さん。
キリリとエッジがたった、美しいサバの刺身を食べてみる。
……。
ピュア! おっしゃるとおりの透明感。脂のりはしっかりありつつ味に、深みがあってキレのいい味わい。いうならば「サバ界の大吟醸」的な味わい!
錦輝では、そんなサバをさらに至高の酒肴に仕上げた名物がある。「〆鯖のぬた」だ。
じつは、「さばのぬた」は福井県若狭地方の郷土料理でもある。それはさておき、近藤さんいわく「日本酒のつまみに最高」ということで提供されているぬたは、〆鯖をからし酢味噌で和えたもの。
〆鯖も錦輝の名物。まず、砂糖で〆てから、塩をして30分。米酢に20分漬けてフレッシュ感ある〆鯖に仕上げ、ワカメ、紅蓼(べにたで)とともにからしを利かせた酢味噌で和えて完成。
爽やかなサバをますます爽やかにしたようなきらめく味わいの〆鯖に、キュッとした辛みのある酢味噌が加わると、悶絶モノの日本酒の友に!
日本酒ラバーの心をわしづかみにする味わいだ。
サバを香ばしく焼いて、大葉とともに仕上げた「焼き鯖寿司」も絶品。
めくるめく福井の銘酒×サバを堪能していただきたい。
■『錦輝(にしき)』
[住所]福井県福井市大手3-14-6
[電話番号]0776-28-2829
[営業時間]17時~24時(23時半LO)
[休日]日(祝前日が日の場合は営業)
[交通]福井鉄道福武線市役所前駅から徒歩2分
https://hitosara.com/0005007024/
へしこのぬかを再利用した調味料からさまざまな加工品が誕生
福井市といえば「一乗谷朝倉氏遺跡」など、見どころがたくさん! そこへサバのお弁当を携えて向かうのはいかが?
福井市内に2店舗を展開する「食のセレクトショップ『日々色々』」は、市内で高い人気を誇る飲食店のお弁当や、福井ならではの食材を使った加工品を取りそろえたお店。
サバのお弁当もいろいろありますが、なんといってもジェンヌイチオシは「へしこ飯」!
福井ならではの郷土料理・へしこ(サバのぬか漬け)を使った調味料「食べるへしこオイル」を使ったお弁当だ。
食べるへしこオイルは、日々色々を運営する「Fumidas」代表である宮守雄也さんが開発した商品。たんにへしこをオイルに漬け込んだわけではなく「へしこのぬか」を使用しているのが大きな特徴だ。
福井市内で多くの飲食店のプロデュースに関り、人気店として育てあげてきた宮守さん。じつは無類のへしこ好き。
かねてから、へしこ好きとして気になっていたことがあった。へしこは、塩漬けしたサバを、ぬかに漬け込んで作られる。当然ながら、ぬかにもサバの旨みが浸み込み「絶品のぬか」になっているにもかかわらず、多くは廃棄されている。
そんな「へしこのぬか」を何か利用できないかと考えた宮守さん。新たな「旨み調味料」の開発にチャレンジした。
使用するへしこは、「絶品のへしこ」として多くのファンをもつ『民宿かどの』(小浜市)のへしこ。
おおおお。かどののへしこ!! 知ってますとも、大好きですとも!
脂のりのよい国産のサバを使用し、地元・小浜の農家が無農薬で栽培したお米のぬかを昔ながらの技を駆使して1年じっくり漬け込んで仕上げる。
加えるのは塩と、トウガラシのみ。美しい飴色に仕上がったへしこは、芳醇な旨みをたたえつつも、どこかキリリとした味わい。ジェンヌもファンだ。あのへしこのぬかなら、おいしさ間違いナシ!
宮守さんは、ぬかを低温乾燥させて旨みを凝縮したパウダー状の「魚塩」などさまざまな加工品を開発。「魚塩」は、ご飯にかける、ダシ代わりに使う、刺身や焼魚につけたり、ドレッシングにちょい足ししてもバツグンに美味しくなる魔法の粉だ。
そして、「食べるへしこオイル」。「へしこをまるごと1匹買っても、使いきれなかったり、料理法がわからないという方に、手軽に使ってもらえる商品があれば、と考えました」と宮守さん。
グレープシードオイルにへしこのぬか、ニンニク、白ゴマをプラス。
さらに宮守さんならではのこだわりがある。おしゃれな瓶を開けてみると、ゴロンと大きなへしこの身……ではなくサバそのものの身!
「ぬかにもへしこが入っていますが、サバの身の味わいも楽しんでいただきたくて」と宮守さん。生のサバの皮目を炙って、酢で〆たものをカットして入れ込んであるのだ。「焼きサバではなくて、生のしっとりした食感がわかる炙りサバをおいしいオイルで食べてもらいたい」という配慮だ。
食べるへしこオイルは、ごはんにのせるのはもちろん、パンにのせたり、パスタに使ってもおいしく仕上がる。「いわばアンチョビのイメージで使っていただけるといいかと思います」と宮守さん。
そのまま食べてみると、まろやかなコク、やさしい甘み、単調ではなく複雑なグラデーションを描く旨み。身を崩し、ぬかと全体を混ぜるとまたフレッシュ感のある「レアな」味わいに。へしこのぬか恐るべし。
そんな魅惑的な、食べるへしこオイルを使ったお弁当が「へしこ飯」。いろいろなバージョンを用意しているが、今回ご紹介するのは「とうもろこしと枝豆のピリ辛へしこ飯」。ごはんを食べるへしこオイルとともに炊き込み、スイートコーンと枝豆を混ぜ、マグロ節の醤油漬けをトッピング。キャベツの山椒炒めを添えたお弁当だ。
デビュー早々、大人気。毎日完売というからすごい。
さっそくいただきます!
「うまいっ!」ドストレートに叫びたくなる味。オイルの効果でチャーハン風な仕上がり。でも、そんなに単純なものではなくて、へしこの旨みが奥深い風味を醸し出す。
アンチョビだと「パンチ」のある味わいになるけれど、へしこだと「マイルドでやさしくジワジワ旨みがあっちこっちからやってくる」感じ。コーンと枝豆との相性がいいのも驚き。追いかけるようにコクをプラスするマグロ節もいい感じ。そして、キャベツの山椒炒めがまたまた、へしこ風味にとんでもなく合う!
完成度の高さはへしこオイルのなせる技!
ふわっとした厚切り食パンの上に、自家製の食べるへしこオイルをのせてたっぷりチーズをかけた「へしこチーズトースト」も人気商品だ。
ぜひとも、「福井へしこピクニック」を楽しんでいただきたい。
■『日々色々 二ノ宮店』
[住所]福井県福井市経田1-707
[電話番号]0776-28-9050
[営業時間]11時~19時
[休日]不定休
[交通]えちぜん鉄道三国芦原線八ツ島駅から徒歩20分
https://www.instagram.com/hibiiroiro291/?hl=ja
※福井市役所前に本店あり
※「食べるへしこオイル」、「へしこ飯」、「へしこチーズトースト」、「魚塩」などはお取り寄せ可能
https://uoshiojapan.official.ec/
■池田陽子
全日本さば連合会広報担当 サバジェンヌ/薬膳アテンダント
サバを愛する消費者の集まりである「全日本さば連合会」(全さば連)の広報を担当。日本各地のサバ情報の発信、サバ商品のPR、商品開発等を行う。北京中医薬大学日本校を卒業、国際中医薬膳師資格を持ち、薬膳アテンダントとしても活動。水産庁「海の宝!水産女子の元気プロジェクト」認定メンバー。著書に『サバが好き!~旨すぎる国民的青魚のすべて』(山と渓谷社)、『ゆる薬膳。』(日本文芸社)など。全さば連HP:http://all38.com/
取材・撮影/池田陽子
画像ギャラリー