表を歩くのがなんとも気持ちいい。東京のおすすめのお散歩コースはズバリ「庭園」です。今回は高尾駒木野庭園をご案内。日頃から庭園めぐりにいそしむ『おとなの週末』ライター渡辺高が独自の視点でご紹介します。
『高尾駒木野庭園』 @高尾 池泉も露地も枯山水も日本庭園の見どころがギュッと凝縮
『渡辺篤史の建もの探訪』は住宅へのこだわりを渡辺氏が紹介する長寿番組。以前、知人宅が取り上げられたが、収録当日、渡辺氏は初見の一発撮りでこだわりを見抜いてひたすら褒めちぎり、知人はあまりの気分の良さにおかしくなりそうだったとか。
渡辺氏ばりのナビゲーターになったつもりで、『高尾駒木野庭園』でRPG(ロールプレーイングゲーム) 庭園めぐりをしてみよう。
元々こちらは戦前に建てられたお医者さんの自宅。「石畳のアプローチがいぃ〜風情です」(渡辺氏の口調で)。伝統的な日本家屋を回り込むと、一気に視界が開けて庭園が広がる。高尾山の借景が、園の外周をぐるりと囲む樹木と一体となり、まるで広大な自然の中にいるような気分になれる。
「これぞ周辺環境を生かす日本庭園のダイナミズムですねえ」
池泉(ちせん)回遊式庭園には、縁起の良い鶴島と亀島、石橋が配され、心字池(しんじいけ)には色鮮やかな錦鯉が悠々と泳ぐ。最奥部には石を組んで滝に見立てた滝石組(たきいわぐみ)が。鯉が滝を登り切ると龍になる中国故事にちなんだ龍門瀑(りゅうもんばく)の様式だ。
「修行を重ねて悟りに至る禅の思想が、池に緊張感をもたらしています」。「そして池のほとりに藤棚ときましたか。ここで視点を水面レベルから、頭上へと移動させる算段。なんとも楽しい遊び心です」
家屋の縁側の前には、手入れの行き届いた盆栽が等間隔で鎮座する。樹齢120年の五葉松を筆頭に、真柏(シンパク)、ケヤキ、野梅(ヤバイ)、モミジなどいずれも堂々たる個性派揃い。
「いわば盆栽のアベンジャーズ。このクオリティの盆栽群を無料で鑑賞できるとは、いやはや感服いたしました」
茶室に付随する庭、露地も見事。手水鉢には地下に仕込まれた瓶に排水を落として水音を響かせる水琴窟の仕掛けもある。
さらには一転、幽玄な世界へと誘ってくれる枯山水も……「コンパクトな敷地に見どころ凝縮。日本庭園の宝石箱やあ」。最後はキャラがブレるほど満喫した。
[住所]東京都八王子市裏高尾町268-1
[電話]042-663-3611 指定管理者駒木野庭園アーツ
[営業時間]4〜8月/9時〜18時、9・10月は〜17時、11〜3月は〜16時
[休日]年末年始
[交通]JR中央線・京王高尾線高尾駅もしくは京王高尾線高尾山口駅から徒歩15分
撮影/松田麻樹、高尾駒木野庭園指定管理者 駒木野庭園アーツ、取材/渡辺高
※2024年5月号発売時点の情報です。
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。