すっかり市民権を得た自動車技術の一つが「ハイブリッド」だろう。エンジンの余剰出力や減速時のエネルギーで発電することでバッテリーに電力をため、発進時や加速時にモーターでアシストを行う技術だ。効率が高まることで燃費が向上してガソリン代が安くなる代わりに、数十万円の価格増となってしまう。ハイブリッドグレードとエンジンのみのグレード、お買い得なのはどちらなのだろうか?
今や半数を超えるハイブリッドなどの「電動車」
2023年に国内で新車として販売された乗用車(軽自動車+小型車+普通車)の内、約47%をマイルドタイプを含めたハイブリッドが占めた。充電可能なPHEV(プラグインハイブリッド)や電気自動車を加えた「電動車」になると、乗用車市場全体の50%を超える。
ちなみに日本では、総世帯数の約40%が集合住宅に住むため、自宅に充電設備を設置しにくい。そのために充電の必要がなく、モーター駆動のメリットを受けられるハイブリッドの販売比率が圧倒的に多い。
また日本では、1997年にトヨタが世界初の量産ハイブリッドとして初代プリウスを発売した。1999年にはホンダも初代インサイトを投入している。日本が早い時期からハイブリッドを手掛けたことも、普及が進んだ理由だ。
ヴォクシーなど人気のミニバンにおける損得勘定
そこで気になるのが、ノーマルエンジンとハイブリッドの損得勘定だろう。これは車種によって異なる。
例えばヴォクシーのハイブリッドS-G(2WDの価格は344万円)とノーマルエンジンのS-G(同309万円)を比べる。WLTCモード燃費はハイブリッドS-Gが23km/Lで、ノーマルエンジンのS-Gは15km/Lだ。
ハイブリッドS-Gの価格はノーマルエンジンのS-Gに比べて35万円高いが、前者は購入時に納める税額がノーマルエンジンよりも約13万円安い。従って実質的な価格差は22万円に縮まる。
そしてレギュラーガソリンの価格が1L当たり160円とすれば、1km当たりのガソリン代はハイブリッドS-Gが7円、ノーマルエンジンのS-Gは10.7円だ。ハイブリッドは、ノーマルエンジンに比べて3.7円安い。
そうなると22万円の実質価格差は、約6万kmを走ると、燃料代の節約で取り戻せる。1年に1万kmを走るユーザーでは約6年間、1年に1.5万kmを走れば約4年間で取り戻すことが可能だ。
しかもハイブリッドはノーマルエンジンに比べて加速が滑らかでノイズも小さい。ヴォクシーのハイブリッドであれば、災害時に役立つ100V・1500Wの電源コンセントも装着できる。このようにヴォクシーのパワーユニットは、ハイブリッドが買い得だから、2023年に国内で新車として売られたヴォクシーの約70%をハイブリッドが占めた。