女人禁制を死守するのは賢明な選択である
「どれほど偉大な女性でも、不満の心だけは隠せないもの。不満は女性の本質ともいえるだろう。第二次大戦後、多くのコースが女性を受け入れるようになった。最初、彼女たちは殊勝にもオズオズと上目使いでやってきた。ところが早くも翌週になると、トイレとシャワーに文句をつけ、半年後には理事に女性を加えろとフロント前で気勢を上げ始めた。彼女たちはコースに不満を持ち込んでくる。亭主、嫁姑問題から同じ女性ゴルファーに対する確執まで、すべての不満をコースに持ち込んで恥じるところがない。世界中の女性団体から非難されようとも、当イギリス国内において、多くのコースが女人禁制を死守するのは賢明な選択である」(コラムニスト、S・ジン)
「わしは、オバさん族のフォームを見て興奮するほど変態ではない。よってここに退会届を送付する」(バインフィールドGCの記録より)
「このままの勢いで女性ゴルファーが増加した場合、おっつけ抜本的解決法というやつが必要になるだろう。21世紀の中ごろには、恐らくイギリス男性の過半数がアラスカでプレーに専念するかも知れない。なぜアラスカだって? 見ての通り木も少ないし、第一寒いから女性のフォーサムなんて皆無だと思うよ」(漫画家、ピーター・ジョナサン)
「結局、この偉大なるゲームをどう考えるか、その人物の知的尺度が問題になる。女性と一緒に歩くのがうれしい奴は、ゴルフなんて二の次なのさ。なんでもいいから身近に女さえいれば満足ってタイプ、よく見かけるね。反対に果敢な精神の持ち主は、過酷な自然と自分自身が相手、女なんかにかまってるヒマがない。こう考えていくと、軟派師がゴルフを破壊した張本人かも知れないね」(プロゴルファー、ラディ・ルーカス)
「森の奥から、幾度となく黄色い悲鳴が聞こえた、あれはレイプ事件に間違いないという通報があった。そこで急遽パトカーを派遣したところ、四人の女性ゴルファーが深いバンカーにてこずっているだけだった。本官の個人的意見だが、早急にルールを作って女性ゴルファーの悲鳴を禁止していただきたい。さもないと、本物のレイプ事件が発生してもパトカーは動かないだろう」(エアシャー分署の話)
「イギリスに来て、コースで女性を見るまで、この国の人口の半分が女性だってこと忘れていたよ」(プロゴルファー、レイ・フロイド)
「私どものコースでは、女性の入会になんら制限がございません。1822年の開設以来、確か5人ほど入会されたそうですが、どなたも一日プレーされただけで即日退会したとか。はい、今後も女性用のトイレを作る計画はございません」(マッセルバラのさるコースで)
「これらのコメントが、1980年以降に語られたものであることは、私が証明しよう。アメリカや日本では男女共存の時代を謳歌しているようだが、それはそれで国民性の問題。イギリスについても同じように考えていただきたい。ゴルフは男性主体のクラブ組織によって運営、発展したものであり、その伝統を守ることが、とりも直さずゴルフのゆるぎなき精神を守ることでもある。私たちのことを“石頭”と呼ぶ向きもあるようだが、一方、こちらにも女性に城を明け渡して平気な日米人を指して、“腰抜け”と呼ぶ向きがあるの、ご存知かね?」(エディンバラ・ゴルフ協会理事、R・シモンズ)
(もちろん、次は男性ゴルファーの番だ。 筆者)
(本文は、2000年5月15日刊『ナイス・ボギー』講談社文庫からの抜粋です)
夏坂健
1936年、横浜市生まれ。2000年1月19日逝去。共同通信記者、月刊ペン編集長を経て、作家活動に入る。食、ゴルフのエッセイ、ノンフィクション、翻訳に多くの名著を残した。毎年フランスで開催される「ゴルフ・サミット」に唯一アジアから招聘された。また、トップ・アマチュア・ゴルファーとしても活躍した。著書に、『ゴルファーを笑え!』『地球ゴルフ倶楽部』『ゴルフを以って人を観ん』『ゴルフの神様』『ゴルフの処方箋』『美食・大食家びっくり事典』など多数。