チャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介する「ニッポン“チャーラー”の旅」。第29回となる今回は、岐阜県中津川市へ。本誌2023年11月号の特集「ちょいと足をのばして湯とメシの旅」で岐阜・下呂温泉を訪れた著者が名古屋への帰りに立ち寄ったお気に入り店のチャーラーです。
画像ギャラリー下呂温泉から筆者が暮らす名古屋へ車で帰るには、何通りかのルートがある。そのひとつが国道257号線を使って中央道中津川インターまで出るというルートだ。
下呂から中津川インターまで1時間ほどで到着する。ということで、下呂温泉を取材した帰り道に中津川市で立ち寄った、筆者オススメのチャーラーを紹介しよう。
「おいしい!」が伝わってくる店構え
中津川にはこれまで何度も訪れていて、実はお気に入りの店がある。それがJR中津川駅前にある『中華そば まるなか』だ。
筆者が初めて足を運んだのは、4、5年ほど前。黄色い看板と赤いのれん。この店構えを見て「絶対においしい!」と確信したことを今も覚えている。それは見事に的中し、中津川方面へ行くたびに立ち寄っている。もうね、筆者ほどのレベルに達すると、店構えを見ただけで旨いかそうでないかがわかるのだ(嘘)。
店内の奥に券売機があり、購入した食券を店長へ手渡して注文完了。ちなみに筆者がいつもオーダーするのは、シンプルな「中華そば」(700円)と「セットチャーハン」(300円)。これが本当に旨いのだ。
店内はカウンター席が8席と4人掛けのテーブル席が2卓。筆者はひとりなので、必然的にカウンター席へ座る。そのカウンター席が特等席なのである。なぜなら、店長が中華そばやチャーハンを作る様子が眺められるのだ。この日もタレや調味料の量をしっかりと計っていて、実に丁寧な仕事ぶりが伝わってきた。
スープが染みた極細ちぢれ麺が旨い
10分ほどで目の前に運ばれたチャーラーがこれだ。ノスタルジックで見るからにおいしそうである。「セットチャーハン」以外にも「セットどてめし」や「セット叉焼めし」(各250円)などもあるが、チャーハンが圧倒的に人気だという。
チャーハンについては後ほど触れることにして、まずは中華そばからチェックしてみよう。具材はチャーシュー2枚とばら海苔、メンマ、ほうれん草、ナルト、ネギと盛り沢山。デフォルトのラーメンが800円台といわれるこの時代に、この内容で700円というのはお値打ちだ。
スープは丸鶏と和風ダシのWスープ。丸鶏のコクとサバ節や煮干しなど魚介の風味が一層ノスタルジックな気分にさせる。卓上のコショウや一味唐辛子を加えてもおいしい。
中華そばの特徴は、極細のちぢれ麺。スープが良く絡む上に、加水率が低いためスープが染みるとよりおいしくなる。下呂市にある大正7年創業の老舗製麺所『まるなか製麺所』の麺を使用している。店名に冠した「まるなか」からもわかるように、ここは製麺所とのコラボによって生まれた店なのである。
焦がし醤油の香ばしさがたまらない
こちらは、取材する前のリサーチ時に食べた「特製中華そば」(850円)。中華そばと同じスープが使われているが、チャーシューが増量されるほか、たっぷりの背脂ものる。これだけでまったく別物になるから不思議。あっさり系の中華そばでは物足りない方やガッツリと食べたい方におすすめだ。
さて、Wスープの余韻が口の中に残る状態でチャーハンを頬張ってみる。うっ、旨いっ! 焦がし醤油の香ばしさがたまらない。チャーハンはここの系列店の中華レストランのシェフによる直伝だそうで、ラーメン店のサイドメニューのレベルを完全に超えている。
「たかがチャーハン」とばかりに調味料も目分量でテキトーに作っている店も少なくはない。カウンター越しに店長が中華鍋を振るさまを見ていたが、中華そばと同様にとても几帳面で丁寧、かつスピーディーに作っていたのが印象的だった。いつ来ても味が変わらないからこそ通いたくなるのである。
これにて下呂温泉&チャーラーのレポートは終了! 記事を書くのに思い出していたら、また行きたくなってしまった。次のオフにでも行こうかな。
取材・撮影/永谷正樹
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