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バック・コーラスに沢田研二が参加、圧倒的な存在感

『SOMEDAY』には様々な形の都会人の孤独や青春が描かれている。オーソドックスなロックンロール・サウンドに、当時流行していたシティ・ミュージックのエッセンスも盛り込まれている傑作だ。一過性のヒットで終わらない、21世紀の今聴いても優れたジャパ ニーズ・ロック・アルバムだと思う。

ここで描かれた青春は、現代の若者に通じる不変性がある。特に8分を超える大曲「ロックンロール・ナイト」は、いつの時代にも変わらない若者の心情が詰め込まれている。

ユニークだと思ったのは「ヴァニティ・ファクトリー」だ。軽快なロックンロール・サウンドのこの曲には、バック・コーラスとして沢田研二が参加している。リード・シンガーより目立ってはいけないバック・コーラスなのに、沢田研二の声は一聴して分かるほど強烈にアピールしてくる。沢田研二ってどこまでもリード・シンガーだなと思わされた。

「アメリカに住みたい」ニューヨークで傑作アルバムが誕生

『SOMEDAY』がヒットした翌年、1983年に東京は原宿の喫茶店で佐野元春と個人的に会った。周囲は大反対しているけれど、しばらくアメリカに住みたいと思うがどうだろうと訊かれた。そりゃ周囲は反対するだろう。 せっかくヒットが生まれたのにアメリカに 拠点を移したいと言ったら、関係者の多くは 反対するに決まっている。

でも、ぼくは当時の佐野元春のあくなき音楽的探求心を分かっていた。“別に音楽活動を辞めるわけじゃないので、アメリカでアルバムを作ればいい”。ぼくはそうアドバイスをした。こうして『VISITORS』(1984年)という『SOMEDAY』に並ぶ傑作がニューヨークで生まれた。その 後も、そのメッセージ性を含めて、佐野元春の音楽は進化し続けて止まらない。

『SOMEDAY』は佐野元春という人間の人柄が生んだ、都会人への癒しと青春のアルバムだと思う。

佐野元春のサードアルバム『SOMEDAY(サムデイ)』のレコード

『SOMEDAY(サムデイ)』
01.シュガータイム
02.ハッピーマン
03.ダウンタウンボーイ
04.二人のバースディ
05.麗しのドンナ・アンナ
06.サムデイ
07.アイム・イン・ブルー
08.真夜中に清めて
09.ヴァニティ・ファクトリー
10.ロックンロール・ナイト
11.サンチャイルドは僕の友達

岩田由記夫
1950年、東京生まれ。音楽評論家、オーディオライター、プロデューサー。70年代半ばから講談社の雑誌などで活躍。長く、オーディオ・音楽誌を中心に執筆活動を続け、取材した国内外のアーティストは2000人以上。マドンナ、スティング、キース・リチャーズ、リンゴ・スター、ロバート・プラント、大滝詠一、忌野清志郎、桑田佳祐、山下達郎、竹内まりや、細野晴臣……と、音楽史に名を刻む多くのレジェンドたちと会ってきた。FMラジオの構成や選曲も手掛け、パーソナリティーも担当。プロデューサーとして携わったレコードやCDも数多い。著書に『ぼくが出会った素晴らしきミュージシャンたち』など。 電子書籍『ROCK絶対名曲秘話』を刊行中。東京・大岡山のライブハウス「Goodstock Tokyo(グッドストックトーキョー)」で、貴重なアナログ・レコードをLINN(リン)の約400万円のプレーヤーなどハイエンドのオーディオシステムで聴く『レコードの達人』を偶数月に開催中。近著は『岩田由記夫のRock & Pop オーディオ入門 音楽とオーディオの新発見(ONTOMO MOOK)』(音楽之友社・1980円)。

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