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50を過ぎると足が遠のき始める濃厚ラーメン。が、世の中は家系、二郎系が流行中だ。そこで意を決して体に鞭打ち、家系はさておき、二郎系に潜入実食を試みた。これはひとりの冒険家の手記である。

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挑戦の結末はふたつだけ、勝利か敗北。そんな物語

たとえそれがどんなに魂を削るような依頼であろうとも、金銭の報酬があるとなれば、受けざるを得ない。それが、しがないフリーの物書きの宿命だ。だが言っとく。俺はすでにあと2カ月で63歳だ。『50歳から』自体が遠い昔話でしかない。

ただ家系は簡単だ。10代の頃に近所にあった横浜の本家も、今、家の近所にある有名直系店も、自販機で好きなヤツ買って食券をカウンターに置けば完了。年寄りにも丁度いい。

やっかいなのは二郎系だ。行列、大量の麺に具、コールとかいう複雑な注文方法。50過ぎには全てが不得意科目だ。50歳どころか、無経験なら、まだ親のスネをかじってる小僧にすら、四回戦ボクサーが世界ランカーに立ち向かうようなものだ。なんて感傷に浸っている暇も文字スペースも既にない。俺は練習試合のつもりで、近所の二郎インスパイア系という店の前に立った。

店頭には麺の量の説明書がスコッチテープで貼られていた。『小』で普通の店の大盛りだという。小という漢字の概念がここにはないらしい。『御来店の皆様へ』という但し書きもあった。冒頭の一文は『怖くありません』。恐いのが前提。それが二郎系のステレオタイプなのだ。

時の運か店に行列はない。入店し、例の説明書にあった「普通の店の一杯分」だという『ミニ』を自販機で選び、食券を置く。するとカウンターにも説明文が貼られていた。『コール』と呼ばれる『ニンニク』『野菜』『あぶら』『カラメ(カエシの事)』の増減についての注文は、ラーメンが出てくる時に聞くとある。ただ「そのままで」と返答すれば、店のスタンダードが躊躇なくやってくるそうだ。もはや記憶もおぼつかない初老にとって、「そのままで」以外の選択肢はない。

10分弱でやってきた「そのままで」は、丼の上にもやしがフジヤマを作っていた。だがその霊峰の味には震えた。

家近インスパイア系/麺ミニ&そのままで

啜られることを拒絶するかのように頑強に捻じれた麺は、資産家どもが飼っているチワワの大腿骨ほどの太さだった。それを噛み砕くように胃に運び続ける作業に俺は取り憑かれてしまった。

気付くと目の前には、無造作に割り箸が横たわる空の丼があった。二郎系を半ば宗教のように信奉する『ジロリアン』というゲゼルシャフトがいるという。彼らの気持ちが今初めてわかった。ただ胃袋はその日一日グロッキーだった。

とはいえ、インスパイアではない直系の二郎系に足を運ぶのが、俺の次の役回りに違いない。

世田谷の上野毛にある、その直系の店の前には13時を30分過ぎたというのに、(おそらくではあるが)ジロリアンが12名、列を成していた。その最後尾に付いてから25分。入店まで残り3人程になったら自販機で食券を買うルールがこの地にはあるようだ。選べる麺の量は3種。小と大。そして『半分』だ。

俺は躊躇なく半分のボタンを押し、5分後にカウンターに座り、10分後に「ニンニク入れますか?」と聞かれた。これが二郎系独自のコールへの問いかけだった。難解なことに「入れますか」と問われても、入れたい時の返答は「入れます」ではなく、ただ「ニンニク」だった。そのルールの複雑さは残った文字量で説明できる程ネンネじゃない。知りたければ自分でいくらでも調べればいい。50を過ぎた大人ならば。

『二郎上野毛店』/麺半分&ニンニク、野菜少なめ

「ニンニク、野菜少なめ」…インスパイアで胃がグロッキーになった俺が、大人として調べて導いたコールがコイツだった。それは間違いではなかった。それが証拠に4日後、俺は最終目的地・三田の『二郎本店』の前にいた。

そこには店の外周に沿うロンバートストリートさながらのVの字に曲がる行列があった。何人?1、2…20、21 …。35を過ぎたあたりで数えるのを辞めた。俺には連中ほど人生に残された時間はないのだ。本店の行列は63歳には長すぎる道のりだった。調べれば二郎を模した屈強な麺やカップ麺もあるという。年寄りにはそれでお釣りがくるほど充分だった。とはいえ…(最初に戻り繰り返す)。

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【これが家系ラーメンだ!
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『おとなの週末』Web編集部
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