オックスフォードの街での雅子さまの“即席記者会見”
ちょうど、1989年9月のこと。35年前のことですが、このときオックスフォードの街で、日本のメディア4社(女性週刊誌1社、テレビ局3社)の取材に対し、雅子さまは、即席の記者会見のような場を持たれました。
活字メディアは私だけでしたが、各社の待ち伏せ取材や追っかけ取材が続くなか、「もうこれ以上追いかけない、と約束してくれるなら……」という大学関係者の仲介で実現した、オックスフォードのある図書館前での光景でした。
記者:パリで皇太子さま(当時)と再会されると伝えられていますが?
雅子さま:わたくしは、そのことには関係ございません。
記者:皇太子さまの「お妃候補」としてお名前があがっていますが、ご連絡などはありますか?
雅子さま:まったくございません。わたくしは、この件につきましてはまったく関係ございませんので、できればもう取材をやめていただき、そっとしておいていただきたいのですが……。
記者:30日(1989年9月30日)に皇太子さまはパリに着きますが、お会いになるのですか?
雅子さま:わたくしはずっとオックスフォードにいる予定です。大陸(パリのあるフランスの意味)のほうへ行く予定はございません。こちらにおります。
「外務省の省員として仕事をしていく」と雅子さま
当時、天皇陛下は、皇太子殿下としてベルギーで開かれていた博覧会「ユーロパリア・ジャパン」の開会式に参列のため、ヨーロッパに滞在中でした。その帰路に立ち寄られるパリでは、「雅子さまとの再会の場が設けられる」との噂が広がっていたのです。
この朝、オックスフォードの閑静な住宅街、バードウエルロードに借りていたワンルームのアパートから出かけた雅子さまは、待ち構えていた日本からの記者やレポーター、カメラマンの質問を受け、そう言葉を返されました。さながら東京の代官山のような街並みを足ばやに歩く雅子さま。そんななかに35年前の私もいたのです。
記者:これまでに何度か殿下とはお会いになっていますが、どんな方ですか?
雅子さま:申し訳ありませんが、そういう質問にはお答えできません。とにかくわたくしはお妃問題には関係していないと思っておりますので……。
記者:英国から帰国されても同じ状態でしょうか。今後も外務省で仕事を続けられるということですか?
雅子さま:わたくしは外務省の研修生として研修している身でして、研修が終わりましたら、外務省の省員としてずっと仕事をしていくつもりです。
記者:つまり、宮内庁からオフィシャルなお話はないということですね?
雅子さま:はい。ですから、みなさまも、もう取材はなさらないでください。
雅子さまはそうよどみなく話され、丁寧なお辞儀をして図書館前から去って行きました。