令和の『青春のトマト焼きそば』はアオハルの爽やかさ
「では『青春のトマト焼きそば』は、きねやの焼きそばと同じなのか?」と問われれば、明らかに違う味だ。
これはある意味当然で、地元産のトマトの魅力を引き出すことを目指せば、昭和のカリスマ焼きそば同様の重さになるわけがない。あくまで爽やかさが主役だ。令和と昭和では時代の背景も違う。認証店の中には金属の皿をサンプル写真に用いている店もあり、ニヤリとさせられるが、シルクの皿は陶器。そしてフォークではなく割り箸だ。
ただ、全く関係がないとも思わない。焼きそばとトマトソースの取り合わせは、中華料理とも日本食ともつかない印象を残す、もちろんイタリアンでもない。国籍不明の美味という意味では通じるものがある。
この「なんだかよくわからんが旨い」感覚が、青春のトマト焼きそばを『青春』たらしめているのかもしれない。もしかすると貴方の青春も「いろいろあったけど、振り返ると楽しかったよ」というものではないだろうか。
文・写真/深澤紳一(ふかさわ しんいち):PCゲーム雑誌から文芸誌、サブカルチャー誌まで幅広い寄稿歴をもつライター。レーシングスクールインストラクターなども務めつつ、飼犬のために日々働く愛犬家。