芭蕉の句を眺めながら「ぬるまラーメン」を食す『一茶庵』
最後に本当にある≪ぬるい≫ラーメンをご紹介します。最上地域にある新庄市ではあっさりめの醤油スープとよく煮込んだ「とりもつ」との絶妙なバランスがくせになる「(とり)もつラーメン」が地元の方々に長年愛されています。
もつラーメンの発祥と言われる「一茶庵(いっちゃあん)支店」にあるのが「ぬるまラーメン」。20年ほど前最初にメニューを見たときは冗談かと思いました。熱いスープに冷たい麺を入れるのでぬるくなるとか。猫舌の人にはぴったりかも知れませんが、実際食べると程よい温度でそれほど違和感がありません。
何よりもほんのり甘じょっぱいスープと柔らか目の麺の相性がばつぐんで、「箸が止まらないとはこのことか!」という感覚に見舞われます。加えて日によってサービスされる手作りお漬物のなんと美味しいこと。
同店ではパッケージに松尾芭蕉の句が印刷されているカップ酒がメニューにあり、新庄市のほど近くで詠まれた「五月雨をあつめて早し最上川」を眺めながら日本酒をチビリ、お漬物をポリポリ、ぬるいラーメンをズズズ。山形グルメツアーの最終日、新幹線搭乗前に至福の時間を過ごしたのであります。
「とりもつラーメン」はさすがに東京では今のところ発見できず。なんなら自分でやってみようと思うほどの感動を覚えつつ帰路につきました。
今回はラーメン王国山形が誇る、「冷」「熱」「温」ラーメン3選でした。次回はこれも山形名物、「蕎麦」を取り上げたいと思います。麺が続きますが冷たーい蕎麦をご紹介しますので、暑い夏に免じてお許しを。
文・取材/十朱伸吾
おとなの週末専属ライター。旅と食とビールと競馬をこよなく愛する。ツーリングとゴルフも趣味。ツーリングの成果でダイエットにも成功。