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潮の香りと山の緑が寄り添い、四季ごとに異なる表情を見せる美しい場所、古都鎌倉。歴史と自然が織りなすこの街には、古寺や神社が点在し、老若男女が訪れるたびに心を動かされる観光地だが、人気の小町通りの最新スイーツ食べ歩きはその喧噪に圧倒されることもある。そんな鎌倉の中心にありながら、静けさと懐かしさに包まれた、ひっそりとした大人の隠れ家があるのをご存じだろうか。

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「懐かしさ」と「安らぎ」が満ちる古民家カフェ

鶴岡八幡宮の東側、鳥居をくぐり30秒、細い路地を曲がったブロック塀の先に小さな看板と小さな木の扉のお勝手口の『麻葉屋の勝手口 縁側cafe』が佇む。

まさに日本家屋の台所の小さな出入り口「勝手口」そのものがカフェの入口だなんて、つい見過ごしてしまいそうだが、自分だけが見つけた優越感と冒険心にワクワクする。

小町通りの喧騒を離れた鶴岡八幡宮の鳥居前でパチリ

このカフェは、築100年の歴史を持つ古民家をそのまま活用したもので、明治期のある著名な一族が長く大切にしてきた家らしい。その佇まいには、時代の流れに耐えてきた家屋ならではの品格が漂う。オーナーマダムは東京神田鎌倉町の材木商「麻葉屋」の七代目。東京生まれの彼女は幼い頃から「田舎のおばあちゃんち」に憧れを抱き続け、奇遇にも亡くなられたお父様の誕生日の日にこの数寄屋造りの古民家を見た瞬間、「麻葉屋」の屋号でカフェをと即決したそうだ。

荒れ果てた庭や使われていなかった古井戸、家屋の朽ちていた部分などは職人の手によって丁寧に4か月かけて修復された。新しい建材は一切使わず、もともとの趣きを保ちながら再び息を吹き返したこの古民家には、過ぎ去った時代の温もりがそのまま残され、時代の重みを感じさせる空間は「懐かしさ」と「安らぎ」が満ちる特別な場所となったのだ。

入口からは想像できない手入れの行き届いた広い庭にはシンボルツリーの紅白の梅の木、しだれ柳、季節の様々な木々が茂る。

鎌倉の四季を感じられる庭

暖かい日には縁側が人気だそうだが、ランプが灯る古い畳の部屋に一歩足を踏み入れると、静寂の中に時折聞こえる古時計のリズムや、庭から響く鳥の囀りがなんとも心地よく一瞬にしてノスタルジックな世界にタイムスリップしてしまう。しばらくすると部屋のダウンライトにも目が慣れてきて、ふと部屋の中を見渡すとどこか懐かしい椅子やテーブル、ミシン、桐箪笥が控えめに並び、床の間には日本画家・金子国義さんのリトグラフや、個性的な小物が置かれている。

どれもオーナーの実家から持ち込まれたもので、色合いや風合いが馴染むのも日本家屋の懐の深さを感じる。深い軒先から差し込む光が窓の縁で揺らめき、朝から夕にかけて日差しの移ろいによって微妙に変わる影が、まるで時の流れをそのまま映し出しているかのようだ。ここには、ただ静かに流れる時間を見つめるだけの贅沢がある。瞑想の家と呼んでも過言ではない。

いつまでも長居をしたくなる趣のある室内
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昭和レトロな雰囲気の中で一休み、縁側文化に癒される...
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おとなの週末Web編集部
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