【オーディオセットにこだわる】喫茶 Watch(最寄駅:中村駅)
伝説のJBLパラゴンでジャズとコーヒーを
『ウオッチ』には、特に表立って謳ってはいないゆえ、知る人ぞ知るとも言えるもうひとつの顔がある。遠くからそのために足を運ぶ人もいる、マニア垂涎のオーディオセットを備えているのだ。篠川さんの父親にあたり、9年前に他界した先代のマスターがオーディオ好きで集めたものだ。
まずは、1950年代後半に開発され、いまや伝説とも言えるJBLパラゴンのスピーカーだ。当時の価格で150万円以上。独特のカーブを描く形状の巨大な木製スピーカーは、しっかりした音量でも耳に当たらない、とてもやわらかで心に響く音を出す。そして、それを鳴らすのが、やはりプリメインアンプ界の王者とも呼ばれるマッキントッシュ。漆黒のフェイスにブルーライトのクールなデザイン。傍らのオーディオルームにはそれがなんと12台もある。日によって組み合わせを変えながらこのセットで流されるジャズはなんとも艶やか、そしてさり気なく心地いい。
さらに、そんな空間に身を落ち着かせながら飲むコーヒーが、ゆったりと味わい深く、コクがあって旨いことも付け加えておかなければならないだろう。「自分がコーヒー好きやけん、あれもこれもやるうちに自然と増えたんやねえ」というメニューは、種類も豊富。ていねいに淹れられたコーヒーをじっくり味わいながら、耳を澄ませたい。
【薔薇にこだわる】イングリッシュガーデンローズカフェ(最寄駅:国分寺駅)
咲き誇る薔薇庭園は魔法が詰まった空間
『イングリッシュガーデンローズカフェ』は敷地内だけで300~400種、500本近い薔薇が咲き誇っているだけでなく、店の近隣にも石坂さんが植えた薔薇が150本ほど咲いており、一帯がバラ園化している。壮観だ。
また薔薇は通年ではなく、夏はユリ、冬は日本スイセンやクリスマスローズなど様々な花が咲き、1年を通じて愉しめるようになっている。ただ、これだけの花である。「水やりや消毒など、手入れは毎日2時間くらいかかります。でも、皆さんに楽しんでもらうためですから」と、その労力は苦でもないと笑う。
さて、同じように注力しているのが「薔薇の香りの邪魔にならないよう、でも味わい深く美味しく食べてもらえるような味を揃えています」と、10数種揃う紅茶や、パスタにカレーなど30種近い食事メニューである。なかでも「イングリッシュローズティー」(490円)は、石坂さん自身がブレンドした自信作だ。
癒しと優雅さと美味。このおとぎの国は訪れるものを幸福にする、魔法の国でもあったのだ。
【古民家にこだわる】古民家カフェ 蓮月(最寄駅:池上駅)
未来へと歴史をつなぐ「時代の伝承」が使命
『古民家カフェ 蓮月(れんげつ)』は木造の家は昭和8年に宮大工が建てた貴重な建築様式。
元は蕎麦屋だったが、店主が高齢で閉店を余儀なくされたことから有志らが建物活用のプロジェクトを立ち上げ、2年前、再び家に”命”が吹き込まれた。それが蓮月誕生のきっかけだ。
流行りのカフェと一線を画すのは地元の交流の場でもあることだろう。内装はほぼ当時のまま。1階は近所の子供も放課後自習に通う居間のような空間で、2階は大広間。料理研究家がレシピを考案した豚丼も評判を呼んでいる。
「テーマは家族。ここが家、学校、職場、旅先となる存在に」と代表の輪島さん。地域の心が宿る店は今や街の宝だ。
【玩具にこだわる】空想カフェ(最寄駅:入谷駅)
江戸時代からの伝統と あの頃の楽しさを伝える
江戸時代、浅草寺の参道で売られていた民芸品がやがて玩具となり、さらに外貨獲得のための主な輸出品のひとつになっていった。浅草には玩具の街という顔もあったのである。大人が子供に戻れる秘密基地。そんな喫茶店も悪くない。
その歴史を今に伝えたいと、店主・神谷僚一さんが6年前に開いたのが、ここ『空想カフェ』だ。
奥の部屋には、ソフトビニール人形やブリキのおもちゃ、面子に塗り絵など、浅草が活気を呈していた60年代のものを中心としたコレクションが並ぶ。
ドーナツドリップで丁寧に淹れられたコーヒーを手に取る間もなく、奥の空間に足を踏み入れ、歓声をあげながら時を過ごす人も少なくないという。
大人が子供に戻れる秘密基地。そんな喫茶店も悪くない。
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。