チャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介する「ニッポン“チャーラー”の旅」。第46回の今回は、久々に東京へ。神保町にある町中華の名店で、チャーラーではなく「半チャンラーメン」をいただきます。
画像ギャラリーチャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介する「ニッポン“チャーラー”の旅」。第46回の今回は、久々に東京へ。神保町にある町中華の名店で、チャーラーではなく「半チャンラーメン」をいただきます。
御三家、四天王と呼ばれる「半チャンラーメン」の名店
筆者が原稿と写真を提供しているWebメディアの忘年会へ出席するため、約半年ぶりに東京へ行った。最終の新幹線で帰ろうと思ったが、東京のチャーラー、あ、東京では「半チャンラーメン」だな。半チャンラーメンを食べようと思って1泊することにした。
東京の半チャンラーメンについて調べてみると、千代田区神田神保町が「聖地」であることを知った。神保町には集英社や小学館をはじめ多くの出版社が数多くあり、筆者はフリーになる前からよく足を運んでいた。大学や専門学校も多く、神保町の飲食店は安くて旨いイメージが強かった。
そんな神保町にかつて「半チャンラーメン御三家」、または「半チャンラーメン四天王」と呼ばれる店があったらしい。それが半チャンラーメン発祥の店といわれる『さぶちゃん』と『伊峡』、『成光』が御三家とされ、これらに『たいよう軒』を加えて四天王として長年にわたって多くの人々に愛されていた。
ところが、『さぶちゃん』は2017年に、『たいよう軒』は2024年1月に閉店し、現在は『伊峡』と『成光』のみとなってしまったのだ。
では、その2店でどちらへ行くべきか。めちゃくちゃ悩んだ挙げ句、『伊峡』にした。『伊峡』の創業は、『成光』よりも11年早い昭和41(1966)年。2019年に建物の老朽化で同じ神保町内に移転したが、昔と変わらない味は今もなお多くの人々に支持されているようだ。
店に到着したのは、11時を少し回ったくらい。店の前に掲げられたメニューを見て驚いた。なんと、ラーメンが500円! そりゃ筆者の地元、名古屋にもそんな店はあるけど、東京でこの値段はすごい。
ちなみにチャーハンは550円で、半チャーハンは250円……。ということは、半チャンラーメンは750円……と思いきや、メニューのいちばん下に「半チャンラーメン…700円」とあった。セットなら50円割引となるのだ。
だんだんとおいしくなっていくワンタンメン
カウンター席のみの店内は7割ほど埋まっていた。ふと、店内の壁に貼られたボードに目をやると、ランチメニューが書かれていた。
11時から14時までタンメン+半チャーハン(通常850円)、ワンタンメン+半チャーハン(通常850円)がそれぞれ800円、チャーシュー麺+半チャーハン(通常900円)が850円になるらしい。直前まで「半チャンラーメン」を注文しようと思っていたが、「ワンタンメン+半チャーハン」に決めた。
まず、目の前に運ばれたのはワンタンメン。この日は寒かったので、丼から立ち上る湯気が何とも心地よい。具材はチャーシューとメンマ、ネギ、海苔。そしてワンタン。
まずはスープをひと口飲んでみる。おや? 味付けがかなり薄い? いや、きっと筆者がラーメン店の濃い味に慣れてしまっているからだろう。ややちぢれのある細麺をズルズルと吸い込みつつ、スープを飲んでいるうちにスープの旨みや醤油のコクが感じられて、だんだんとおいしく感じるようになってきた。
昔、筆者が通い詰めていたラーメン店もここのように味付けが薄かった。それは食べ終わったときに「おいしかった!」と感じてもらえるようにと店主がこだわっていたと知って、ラーメンの奥深さを知った。
ところが、今のラーメンの多くはひと口目のインパクトを重視しているように思える。結果、途中で飽きてしまうことも少なくはない。どちらが正解なのかはわからないが、食べているうちにおいしくなっていくラーメンがあってもよいと思う。
スープとの相性を考慮したチャーハンも旨い
時間差で運ばれたチャーハンもひと口。これもまた味付けはやや薄めだが、ラーメンのスープとの相性を考えてのことだろう。さすがは御三家、四天王といわれるだけのことはある。
チャーハンの具材はチャーシューとネギ、卵。注文ごとにご主人が中華鍋を振っていた。その隣で女将さんが麺類の盛り付けなどをアシストしつつ、同時進行で接客もこなしている。母子なのかチームワークも完璧だ。
特筆すべきはワンタンメンのワンタン。値段のことを考えると、せいぜい3、4個くらいと高を括っていたが、丼の底の方にもたっぷりと入っていた。途中まで数えていたが、わからなくなってしまった。しかも、厚めの皮を使っていて、ボリュームも満点。ラーメンの大盛りくらいの量はあるかもしれない。おかげで腹パンになり、冷えきっていた身体も暖かくなった。
また東京へ行く機会があれば、つぎは『成光』へ行ってみたい。あ、それまでに筆者の地元である名古屋のチャーラー御三家と四天王について考えてみようと思う。まとまり次第、この連載で紹介するのでお楽しみに。
取材・撮影/永谷正樹
1969年愛知県生まれ。株式会社つむぐ代表。カメラマン兼ライターとして東海地方の食の情報を雑誌やwebメディアなどで発信。「チャーラー祭り」など食による地域活性化プロジェクトも手掛けている。
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