全店実食調査!『おとなの週末』が自信を持っておすすめするお店をご紹介します。今回は、東京・浅草の中華料理店『餃子の王さま』です。
画像ギャラリー全店実食調査!『おとなの週末』が自信を持っておすすめするお店をご紹介します。今回は、東京・浅草の中華料理店『餃子の王さま』です。
軽やかな皮と野菜の甘みの極上ハーモニー
3代目:佐々木光秋さん。1973年生まれ、51歳。気さくで飾らないお人柄はまさに江戸っ子。一流商社の会社員を経験するも30代で店に戻って伝統の味を守っている。店は今年で創業70周年。当初は屋台風の店構えで看板の餃子は1人前50円だったとか。現在は外国人観光客も多い。
店を離れてみてうちの餃子の旨さに気づいたんです
かれこれ10年以上、浅草に行くとこの餃子を食べているのだが、毎回まるで初めてかのように感動してしまう。これってすごいことなんじゃないかと思う。香ばしいそれが仲よく整列する姿にまず拍手、パンパンに詰まった野菜餡の繊細さにまた拍手、パリッとした皮&クリーミーな餡の相反する食感と旨さに大喝采!
王さまの餃子(1人前)490円
すかさずビールをプハッとやれば脳内で歓喜のファンファーレが鳴り響く、パンパカパーン。だいたい、いつもこんなふう。
店名の由来は「この旨さは餃子の中の王さまだ」と表現した常連客の言葉から。戦後復興期の1954年、それまで浅草になかった焼餃子の店をやろうと初代が閃いたのが始まりで、現在は3代目の佐々木光秋さんが切り盛りする。
銀座の中華で修業して24歳頃に家業に入ったものの、2代目の父と考え方の違いから浅草「ほおずき市」(かき入れ時!)の日の営業中に厨房で取っ組み合いの大喧嘩、店を飛び出し商社に転職……と聞くだけで2時間ドラマの脚本が書けそうだが、そんなこんなで再び店に戻ったのが30代前半。
「今思えば自分もデタラメでしたね。離れたからこそ改善点など気づきがあった」。餃子への思いもそう。「大人になってよそで餃子を食べたら子供の頃から味わっていた旨さと何か違う。ある時気づいたんです。よそが違うんじゃない、うちが違うんだって。これだけ旨い餃子を売ってるんだから、もっと知ってほしいと強く思うようになりました」
特徴的な餡の“黄金比”は?
特徴的な餡はキャベツが9割、後はニラ、ニンニク、ショウガ、実は豚肉もほんの少し。キャベツは時季で産地を変え、1~2ミリ単位に細かくカットする。これが繊細な舌触りの秘密。
「11月頃からは愛知の渥美半島産を使う。身が締まって芯が甘く、うちの餃子に適している。だから今から冬にかけての餃子は最高に旨いよ」。知らなかった、餃子に旬があるなんて。もっともこの店だけの話だけど。
作り方も独特で、「皮の際の際までたっぷり餡を乗せて野菜の水分だけで握るんだ」。お気づきだろうか。この店では餃子を“包む”でなく“握る”と言う。「何でだろうね、寿司ネタのように餡を皮に乗せる様子からか、ひとつずつ真心を込めて“握る”という教えだと思います」
1日で3000個ほども作る!
そんな“握りたて”を生のまま焼くのもまた特徴だ。1日で2~3000個を作るが、冷凍や冷蔵の保存は一切しない。全ては自慢の餃子をおいしく食べてもらうため、初代の手法を守っている。
実は取材前、店先で声を掛けてくれた男性客がいた。「ここの餃子は絶品、さすが王さまだよ」。70年前の常連客を思わせる言葉は色あせない味わいの証拠。そう、時代が変わっても、この旨さは変わることなく「餃子の王さま」なのだ。
浅草『餃子の王さま』
[住所]東京都台東区浅草1-30-8
[電話]03-3841-2552
[営業時間]11時15分~14時LO、16時~20時LO、土・日・祝:11時15分~20時LO
[休日]火
[交通]地下鉄銀座線ほか浅草駅3番出口などから徒歩5分
撮影/浅沼ノア、取材/肥田木奈々
※2024年12月号発売時点の情報です。
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