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「飛騨の匠」の古川には170種類の「雲」がある?

再び、元気よく街歩きを開始するや、家の軒下に不思議な彫刻を発見。よく見ればその隣も向かいの家にも。

これは屋根を支える「肘木(ひじき)」に雲を模した古川の大工さんの“サイン”なのだとか。それぞれ微妙に模様が異なり、その数は約170種類ほど。

天正14年頃、金森家により城下町として整備された。「飛騨の匠文化館」には「雲形肘木」が一堂に

「ワシが建てたんじゃ~」と声が聞こえてきそうで微笑ましい。同時代の建築なのかと思っていたら実はバラバラ。古川の人は周囲と調和しない“そうば(相場)崩し”を嫌うから、新築でも町の雰囲気に合わせて家を建てる。そのため年が経つほど調和のとれた町並みになるそうだ。

その家々には「飛騨の匠」の技術が今も受け継がれている。市内の9割を山林が占める飛騨市では昔から作物がとれず、朝廷へ租税が払えなかった。代わりに送り込まれたのが大工さんである。奈良時代、都の人は彼らを「飛騨の匠」と尊敬を込めて呼んだ。万葉集にもその名が登場し、江戸時代には大胆なSF小説『飛騨匠物語』まで出版された。主人公の匠が「からくり」で対決する奇想天外な話で、葛飾北斎の挿絵も冴えている。

話はそれたが普段は調和を重んじ静かに暮らしている古川の人々は、リオの人のように年に一度、春の古川祭で大暴れするのを楽しみに生きている。どんな祭なのかと聞いたら、「起し太鼓」と呼ばれるクライマックスの行事では、千人ものさらし姿の上半身裸の男たちが、酒を飲み続け深夜までもみ合うという。なんともカオスな奇祭である。

ああ、山に陽が落ちて、富山行きの最終便の時間だ。駅へと走りながら飛騨の魅力は何だったのか振り返る。三町三様、町ごとに性格が違うのもおもしろいが、歩けば歩くほど歴史と謎が沸き、地下から宇宙、縄文から果ては未来までネコ型ロボットとタイムマシンに乗って旅した気分であった。時空を漂う不思議な町、それが飛騨の魅力なのだ、と。

『蕪水亭(ぶすいてい)』

北平瑠実さんの父、北平嗣二さんが長年、研究していた薬草ならぬ“役草”料理を受け継いだ婿の一樹さん。今では自らイタリアンの調理法なども取り入れるなど工夫を凝らしている。この日のランチ「飛騨の薬草ミニ会席」は、ドクダミや桑、スギナの薬草出汁を使った飛騨牛の豆乳鍋や、えごまと桑の葉のエスプーマを添えたトマトの薬草出汁煮、メナモミのかき揚げなど全9品。全く薬草を感じないさっぱりとした味わい。これで3300円はお得(要予約)。1日3組の宿泊も。

『蕪水亭(ぶすいてい)』

[店名]『蕪水亭(ぶすいてい)』
[住所]岐阜県飛騨市古川町向町3-8-1
[電話]0577-73-2531
[営業時間]11時半~14時、17時半~21時
[休日]無休
[交通]飛騨古川駅から徒歩10分

『お箸処いなほ』

飛騨名物の漬物ステーキ「つけすて」と、味のついた油揚げ「あげづけ」は一度食べてほしい。すっかり古川になじんだ岡崎出身のご主人だが、「どて煮だけは八丁味噌」だとか。

『お箸処いなほ』飛騨名物の漬物ステーキ「つけすて」

『お箸処いなほ』飛騨名物の漬物ステーキ「つけすて」

[店名]『お箸処いなほ』
[住所]岐阜県飛騨市古川町金森町11-22
[電話]0577-73-0174
[休日]水
[営業時間]11時半~14時、17時半~22時
[交通]飛騨古川駅から徒歩2分

写真・文/白石あづさ…大学卒業後、地域紙の記者を経て3年間の世界一周後フリーに。著書に『逃げ続けていたら世界一周していました』(岩波書店)、『中央アジア紀行』(辰巳出版)、『佐々井秀嶺、インドに笑う』(文藝春秋)ほか

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

※画像ギャラリーでは、古川町の画像をご覧いただけます

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