国産木材で作る本物の器を作る「山源木工」
蛇淵の滝近くにある「山源木工」は、100年以上続く木工所だ。一枚板のテーブルや木鉢などを、4代にわたって作り続けてきた。
店に入ると、輪切りのテーブルや飾り棚、そば鉢、天然木の器がずらりと並ぶ。使われている木材はすべて国産で、トチノキ、黒柿、カエデ、ケヤキ、エンジュなど。なかでもトチノキが6〜7割を占めるという。
私の手元には、ここで4年前に買った木製のティーポットがある。飴色に育ち、艶を増し、手にしっくり馴染むようになってきた。壊れたら買い替え、飽きたら手放すのが当たり前の時代に、 使うほど味わいが深まる道具は、私のモノ選びの基準をちょっと変えてくれた。
「そうなんです。うちの商品は、ずっと持つ。だから、一度買うと次の世代が買い替えない限り、なかなか売れないよ(笑)」
そう笑うのは、3代目の石沢哲(ひとし)さん(74歳)。初代は秋山郷で名の知れた“木挽き”。2代目は鍬の柄や甑(こしき)―酒米などを蒸す木のせいろ―を作っていた。そして、哲さんは樹齢300年以上の木を加工した輪切りテーブルを、日本で最初に売り出したのだそう。
「当時は輪切りにするのは技術的に難しくて、なかなか作れなかったんです。いろいろ試して、一番適したトチノキで作り始めたのが昭和30年代。考案したのは父で、私が流通ルートに乗せました。全国からお客さんが来て、爆発的にヒットしたんですよ」。
昭和50〜60年代には「木製の回る椅子」や「秋山木鉢」もヒット。当時の秋山郷には木鉢職人が25人ほどいて、できた木鉢はすべて買い取ったという。
「初めは35〜45cmくらいの木鉢が家庭の主婦に売れました。90年代後半から2000年代前半の手打ちそばブームの頃には、そば屋を開業する人たちが60cmほどの木鉢を買い求め、すごい勢いで売れました」。1年で200個ほど売れた時期もあったそうだ。
現在は4代目が、木工の技を次の世代へと繋いでいる。今の主力商品は3000〜6000円ほどの木製皿や菓子皿、お椀など、暮らしに寄り添うアイテム。トチノキは木目が美しく、手頃なのに長く使えるのが魅力だという。旅の途中に立ち寄って、暮らしを豊かにしてくれる道具を探してみるのもいい。
『山源木工』
住所:新潟県中魚沼郡津南町大赤沢丁97
電話:025−767−2091
営業時間:8時〜17時(食堂10時〜15時)
定休日:なし(不定休)
文・写真/野添ちかこ
温泉と宿のライター、旅行作家。「心まであったかくする旅」をテーマに日々奔走中。「NIKKEIプラス1」(日本経済新聞土曜日版)に「湯の心旅」、「旅の手帖」(交通新聞社)に「会いに行きたい温泉宿」を連載中。著書に『旅行ライターになろう!』(青弓社)や『千葉の湯めぐり』(幹書房)。岐阜県中部山岳国立公園活性化プロジェクト顧問、熊野古道女子部理事。













