「オムライスって、こんなに美味しいんだ!」その一言を聞いた瞬間、胸がいっぱいになった。息子は10歳。この日、生まれて初めてオムライスを食べた。目の前にあるのは、誰が見てもオムライス。でも、このオムライスには卵と乳が使われていない。横浜・元町にある「M’s Table(エムズ ターブル)」で出会った、植物由来の食材だけでつくられた一皿だった。
オムライスは、ずっと憧れの料理だった
オムライス。
子どもなら、一度は食べたことがある料理かもしれない。ケチャップで名前を書いてもらったり、お子様ランチにのっていたり。私にとっては、ごく当たり前の料理だった。
でも、卵と乳のアレルギーのある息子にとって、オムライスは「食べられない料理」の代表格だった。
だから、外食でオムライスを見かけても、自然と目をそらす料理になっていた。食物アレルギーがあると、「食べられないもの」に目が向いてしまう。
でも、本当にうれしいのは、「食べられるもの」が一つずつ増えていくことだ。それはきっと、どんな家庭にも共通する喜びだと思う。ただ、食物アレルギーのある家庭では、その喜びは少しだけ特別だ。
一つの料理と出会うまでに積み重ねてきた時間があるからだ。
横浜で育った私にとって、身近なパン屋さん
1969年に横浜・元町で創業したポンパドウルは、焼きたてフランスパンを日本に広めたことで知られる、横浜を代表するベーカリーの一つだ。横浜で暮らす私にとっても、とても身近な存在である。
焼きたてのパンの香り。ショーケースに並ぶ色とりどりのパン。子どもの頃から親しんできた、横浜の風景の一つだった。
ただ、息子と一緒だと、少しだけ違う景色になる。パンには卵や乳を使ったものが多い。もちろん、息子が食べられるパンもある。
それでも、「好きなパンを自由に選ぶ」という当たり前の楽しみを味わえる機会は、決して多くなかった。
だからこそ、そのポンパドウルが、同じ元町で「M’s Table」というレストランを営んでいると知ったとき、とても驚いた。





