本格カレーを食べたことがない“初心者”が考案
最近、注目すべきサバトレンドがある。都内を中心に「サバカレー」を提供する店舗が増えてきているのだ。
なかでも今、話題を集めているのが、2021年6月、仙川にオープンした「ホクトカレー』。なんと看板メニューが「サバカレー」。チキンでもポークでもなく、絶賛「サバカレー推し」! そもそも通販からスタートして人気を呼び、店舗でも毎日完売の大人気!
『ホクトカレー』を運営するのは、大津北斗さんと、藤原優太さん。
もともとは飲食店のコンサルティングなどを行っているふたりが、カレーの道に入ったのはひょんなことがきっかけだった。
「たまたまインドカレー店のコンサルティングを担当したことから始まったんです」と語るのは、調理担当の大津さん。和食居酒屋、焼肉店での経験をいかして経営改善を行っている最中に、新型コロナウィルスが猛威を振るい始めた。
そんな折「『間借りカレーのオーナーさんたちが、営業できなくて困っている』という話を聞いたんです」と大津さん。何か役に立てないかと、コンサルティングを行っていたカレー店に掛け合って、藤原さんと一緒に間借りカレーのコラボイベントをスタートした。
イベントはオーナーにも参加者にも好評。カレー業界のネットワークも増え、販売サイトも立ち上げるなどの活動をしているうち、次第に「カレーに興味が湧いてきました」と大津さん。
ん?
じつは、大津さんはそれまで本格的なカレーを食べたこともなければ、そもそもそんなにカレーに興味がなかったらしい。「でも、インドカレー店のオペレーション改善でインド人スタッフと一緒に、厨房に入ってスパイスのことを教えてもらいながら調理をしているうちに、カレーって面白いなあと思うようになりました」。
そしてある日、運命のカレーに出合った。「サバカレー」だ。
「たまたま、コラボイベントで提供されていたサバカレーを食べて、あ、これ美味しいなあ、作ってみたいなあと思ったんです」。
人生で初めて食べたというサバカレーにピンときた大津さんは、さっそく開発にチャレンジ。
まず、目指したのは、「サバの味わいをとことん楽しめる」カレーであること。
そして、基本は「スパイスカレー」ではあるけれど、「毎日食べられる」「老若男女問わず食べられる」味わいのサバカレーだ。
「僕のなかで、スパイスカレーって、毎日食べるものというイメージではなくて。刺激が強くて特別な感じがするんです。それよりも、毎日食べられる、子どもでも食べられるようなサバカレーに仕上げようと思いました」。
スパイスカレーはスパイスを楽しむもの。でも目指すのは「サバを楽しむためにスパイスが存在する」カレー。
「サバが主役のカレー」は大津さんのこだわりが満載。いたって「ホクト流」である。
「僕はもともと、飲食には関わってきたけれど、料理人ではありませんし、カレーの修業を重ねていたわけでもありません。ある意味、自由。常識にとらわれていないと思います」と笑う大津さん。
主役となるサバは、ダブル使い。居酒屋店勤務時代に魚を仕入れていた市場から、厳選した国産のサバを仕入れこんがり焼いてほぐしたもの、そしてサバ水煮缶を汁ごと使う。
「焼きサバを加えることで、風味と食感がアップします」(大津さん)
スパイスは9種類。クミン、フェンネルシード、マスタードシード、コリアンダー、ターメリック、チリペッパー、ガラムマサラ、チャットマサラ、カストリメティ。
インドカレー店で身に付けたスパイス技を駆使するも、敢えて、スパイス感は前面に押し出さない塩梅にとどめた。
前面に出したいのはサバの味。そのために「かつおダシ」をプラス。「サバの風味が引き立つんです」と大津さんが説明する。
サバ以外の具は、たっぷりの玉ネギと、たっぷりの長ネギ。
な、長ねぎ!?
「あんまりカレーで使ってないですよね。でも僕、長ネギが大好きなんで、どうしても入れたかったんです」と大津さん、いきなりの「長ネギ愛」を告白。
どちらも食感をいかすべく、炒めすぎないのもホクト流。「玉ネギは飴色になるまで炒めません(笑)」。
さらに珍しいことに、「トマト不使用」。
「トマト……あんまり興味ないんですよ……」とまたまたの告白。「生のトマトはいいんですけど、トマト煮ってあんまり好きじゃなかったんで、入れるのやめました」。
けれど、この選択は「目指す味が見えていた」大津さんにとって好結果だった。「サバの旨みが強く出たんです。肉のようなパンチがストレートに感じられる仕上がりになりました」。
藤原さんも完成したサバカレーについて「毎日食べられる、ちょっとホッとする味になりました」と語る。「試行錯誤するなかで、スパイスをかなり利かせた時期もあったけれど、僕らが求めるのはお母さんが、お父さんと子どもに出したときに『いつものカレーとちょっと違う、でもホッとするね』』と言ってくれる味、でした」
さっそく当時、ふたりで運営していたバーで提供してみたところ、お客さんに大好評。手ごたえを得て、「ネットで販売することにしました」と藤原さん。
オンラインショップから火が点き、実店舗をオープン!
オンラインカレーショップ「Re.Works」。
ホクトカレーのサバカレーや、間借りカレー店などの絶品カレーを販売中
通販サイト「Re.works」を立ち上げ、サバカレーは「身体が喜ぶ鯖カレー」の名前でデビューを果たした。
大津さんのサバカレーは「サバを楽しむホッとする美味しさ」を追求した結果、使ったのはサバ、玉ネギ、長ネギ、スパイス、かつおダシのみ。小麦粉、卵、牛乳不使用。いたってヘルシーなサバカレーだったからだ。
発売開始から売れ行きは上々。リピーターが続出した。
2021年2月、青山シェアキッチンで提供をスタートすると、毎日完売。仕込みが追いつかないほどだった。「店舗を構えたほうがいい」と確信した大津さんと藤原さんは、同年6月、仙川に『ホクトカレー』をオープン。
もちろん看板商品は、身体喜ぶ鯖カレー。定番カレー、月替わりのカレーも用意しているもののともかく基本はサバカレー!!
「カレーを食べに来たよ、ではなくサバカレーを食べに来たよ、といってもらえるお店を目指しています」と藤原さん。
そのとおり、ホクトカレーには、老若男女が「サバカレー」を食べに訪れる。
「小さな子どもを連れた若いご夫婦から、サバカレーを初めて食べて『美味しい!』と喜んで通ってくれるおばあちゃんまでいらっしゃいます」と大津さん。リピーターも多く、毎日「サバカレーを食べにくる男性」もいるのだとか。
そんな幅広い年代がやみつきになるサバカレー。お客さまからどんな声があるのか聞いてみた。
「『思ってたサバカレーと違う。初めての味。美味しい』と、よく言われますね」と藤原さん。
「サバが好きな人にも好評です」と大津さんが続ける。
「以前、サバが好きだという男性のお客様がお越しになられました。お店でサバカレーを食べて、いったん家に帰ったのに、またお店に戻ってきて冷凍のサバカレーを10個買ってくださったんです」。
その男性は、こう言ったそうだ。
「『サバカレー食べたい』って口の中が言ってるんだよね」
そこまで虜にするサバカレー、ど、どんな味なの!? いざ、ジェンヌさん、実食!
ジェンヌ、サバカレーを実食!
「身体喜ぶ鯖カレー」はアーリーレッドと小ネギをトッピング。レモンが添えられている。実はこのレモンもポイント。
「途中で絞って食べてみてください。サッパリして美味しいですよ」と大津さん。味変が楽しめるのである。
まずは、ひと口。ん? んんんん? 口の中いっぱいに、しっかりとした輪郭があるサバの風味、旨みが広がる。そのあとに、スパイスの風味が爽快に立ち上がる。
カレーなのに「カレー風味」から始まっていない。えーーーー????
あくまで「サバ至上主義」な味わい。食べたことのないサバカレー、というか、食べたことのないカレー!!
さらに、食感がいい! 焼きサバの身のホクホク感と、「炒めすぎない」玉ネギと、長ネギのザクザク感がベストマッチ。
そして、全体的に「とんでもなく、やさしい味わい」。
スパイスの風味はちゃんとあるのに、「どうだ、スパイスだ!!」という主張がなく、ダシの効果かおふたりが言うとおり「ホッとする」日常的な味わい。例えは妙だけれど、「超料理上手な友だち」が作ってくれるカレー、のような親しみに満ちあふれている。
さて、味変。レモンを絞ってみる。おっ。爽やか! 酸味が加わると、おつまみになりそうな味わいに。「そうなんです、レモンをたっぷりかけるとハイボールのつまみに最高なんですよ!」と大津さん。
さらに味変の秘密兵器がある。オリジナルスパイス「トラマサラ」だ。
基本は、身体が喜ぶ鯖カレーに使用しているスパイスだが、配合を変えてクミンを強めに仕上げてある。
ふりかけると、「カレー感」がアップ。辛みではなく、より「深み」のある味わいに。うむ、楽しい!
そして特筆すべきはこのサバカレー、食後感がまったく重くない! なんなら、もうひと皿いけちゃう?という軽さ。「背中に羽根がはえてきそう」なほど軽いカレー!!! ホクト流、恐るべし! 「唯一無二のサバカレー」である。
身体が喜ぶ鯖カレーは、オンラインショップでも引き続き販売中。冷たくても美味しいのでそのままおつまみに、あるいはホットサンドにしたり、いまの時期ならそうめんに使ってもイケるそう。
さらにこの夏は、なんと「茶漬け風鯖カレー」も提供予定!
ぜひ、身体も心も喜ぶ、唯一無二のサバカレーを食べてみて!
おまけ。念のため(?)サバカレー以外の定番をご紹介。
「10種野菜のスパイスカレー」(1000円)
玉ネギ、長ネギ、ショウガ、ニンニク、トマト、カリフラワー、ナス、ピーマン、エリンギ、パプリカ、小ネギ、アーリーレッド入り。大津さん曰く「ぼくの好きな野菜を全部入れてみた」のだとか
「JAPANチキンカレー」(700円)。日本のカレーをベースにスパイスをブレンド。
大津さんの「その日の気分」でスパイスをアレンジする。「それを楽しみに通ってくる方もいらっしゃいます(笑)」と大津さん
※9月中旬にホクトカレー稲田堤店(川崎市多摩区)、9月末にはホクトカレー渋谷道玄坂店もオープン予定
https://blue-connect.stores.jp/
取材・撮影/池田陽子
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