「雲を呑む」が如くの心地よい食感と喉ごし
ワンタン、好きです。自分でもたまに作るし、まあまあよく食べる方でしょう。
でも世間的には餃子、焼売、春巻きに比べてなぜか不思議と影の薄いワンタン。今日はとことんワンタン喰うゾ!とか、ワンタンのこと考えたら口がもうワンタンになちゃってさ、とかならない日陰モノーー好きだって言いながら今までゴメンと、ワンタン探しの旅に出た。
ワンタン麺を出す店が、茹でワンタンも提供するパターンはある。しかし、ワンタンが一品料理としてキャラ立ちしていることはまれだ。
『ふーみん』の「ねぎワンタン」は、同店にてスター級の存在だ。常連だったイラストレーター・和田誠さんが、「ねぎそばの麺をワンタンにしてみたら」と提案したことで誕生したメニューだという。
ダシの風味が利いた醤油ダレ、シャキシャキのネギと共にいただくワンタンは、“ツルッ&モチッ&シャキッ”の小気味よい食感がたまらない。口にじんわり広がる滋味は、お酒にも、ご飯にも合うこと請け合いだ。
ときに、「雲を呑む」と書いて雲呑(ワンタン)と読む。ワンタンの唯一無二の個性は、はかなくも繊細な食感とのど越し。まさに言い得て妙のネーミングだ。ワンタンがワンタンらしいゆえんは、皮の餡が入っていない部分にあることは間違いない。この部分を当記事では「ふりそで」と呼ぶことにする。
ワンタンスープ専門店『くぬぎ屋』のワンタンは、そのふりそでの大きさ、火の入り方が秀逸。
“ツルンッ”を超え、もはや“トゥルンッ”の域に達した甘美な味わいだ。
ワンタンは豚肉メインの「オリジナル」とエビ+豚肉の「海老」の2種。スープは塩味と醤油味から選べる。
どちらのスープも鶏ダシだが、鶏ガラではなく、鶏の肉部分のみを使用。
上品かつ濃厚な鶏の旨みがワンタンと一体となってトゥルンッと喉を通っていく感覚は、背徳的ですらある。
美味しさの秘訣は「その日の手仕事を徹底しているからかしら」とスタッフの伊藤さん(恥ずかしがりつつ苗字だけ教えてくれた)。その日挽いた豚肉、保存水を使わないプリプリのエビを一つひとつ丁寧に包む。
真心いっぱいのワンタンスープは、そのポテンシャルに驚くこと間違いなしだ。
ワンタン好きを公言していたが、好きな食べ物ランキングでいえば、正直30位くらいだった。
でも、いまや十指に入るほどランクアップ。品書きに見つけたら、即ご指名だ。
『中華風家庭料理 ふーみん』@表参道
ねぎワンタン(1360円)
豚肉や椎茸、タケノコなどの餡を玉子麺の生地でくるんだワンタン。たっぷりのネギと合わせ醤油のタレが見事なコンビネーション
麺の代わりにネギとがっちりタッグを組んだ名作ワンタン
レシピ本などでも多彩なオリジナル中華風家庭料理を提案してきた、“ふーみんママ”こと斎風瑞さんの店。
1971年の開店以来、やさしい味わいと独創的なメニューで人気を集めている。
納豆チャーハンやランチ限定の豚肉の梅干し煮など、ここでしか味わえない必食中華がめじろ押し。
帆立貝ときのこのXO醬炒め(2550円)
火の入り方が絶妙な帆立貝とキノコの炒めもの
『中華風家庭料理 ふーみん』
店内は地下ながら天井が高く、開放感いっぱい
[電話]03-3498-4466
[営業時間]11時半~16時20分(16時LO)、18時~21時半(21時LO)
[休日]日・祝、第1月
[交通]地下鉄半蔵門線ほか表参道駅B3出口から徒歩5分