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小説『バスを待つ男』や、講談社の「好きな物語と出会えるサイト『tree』」の連載エッセイなど、作家生活25周年を迎えた西村健さんは、路線バスをテーマにした作品の書き手としても知られています。『おとなの週末Web』では、西村さんが東京都内の路線バスを途中下車してふらり歩いた街の様子と、そこで出会った名店のグルメを紹介しています。「商店街編」の第2回は、足立区の「神明通り商店会」です。あの焼肉の名店はすごい行列。しかし、その斜め前に、風情のある町中華を発見し……。

鹿が群がっていた水辺だった?! 足立区鹿浜を目指す

「陸の孤島」なんて言ったら住んでる人に怒られてしまいそうだけど、東京23区内なのにどこの駅からも遠く、ついついそう呼びそうになってしまうところは確かにある。足立区鹿浜(しかはま)もその一つだろう(失礼!)。新交通システム「日暮里・舎人(とねり)ライナー」が通って少しはマシになったとは言え、それでも最寄りの「西新井大師西」駅から徒歩20分。開通する前はバスを使わねばとても行けないようなところだった。

ここの名がよく挙がるのは、それだけ不便(失礼!)なところにもかかわらず、物凄い行列が出来るので知られた焼肉屋があることだ。ある意味、東京でも一番、有名な焼肉屋さん。「神明通り商店会」の中にあるという。まさに今回の企画にピッタリ、ではないか。

「鹿浜」という地名も面白いので調べてみたら、『足立風土記稿-地区編3 江北』(平成12年、足立区教育委員会)によると、「鹿」という字は元々「シカ」という読み方ではなく、古くは「シシ」。「危険な獣を意味し、特に鹿のほかにも猪(いのしし)や、空想ではあるが獅子のことを言った」とあります。「ししおどし」の「シシ」ですね。「浜」は水分を大量に含んだ土地を連想しますし、『足立風土記稿』にも「鹿浜という地名は、鹿が群がっていた水辺だったのであろうか」との推測が載っています。これまた辺境感、バリバリ(返す返すも失礼!!)。もう行ってみない、というテはないでしょう。

東京23区の交通の要衝、北区王子から都バス「王49」に乗車

そこでやって来ました、北区王子。23区北部の交通の要衝ですね。JR京浜東北線に地下鉄南北線、更に都営荒川線が王子駅を通る。おまけにバスの路線も多いので、私もしょっちゅう来ることになる。実は鹿浜も、通過したことはあったのでした。ただ、降りるのは今回が初めて。

乗るのは都バス「王49」系統。王子駅と千住車庫とをつなぐ路線で、王子駅前のターミナルを出ると北本通りを北上。環七(かんなな)通りに出ると右折して、鹿浜橋で荒川を越える。渡り終えてちょっと行くと「鹿浜三丁目」バス停で、そこが商店街の最寄りになる。

都バス「王49」系統

1回、通りを右折するだけ。極めて単純な旅程と言っていい。あまり面白くないが、まぁ仕方がない。

ところがたまたまやって来たのが同じ「王49」でも、「ハートアイランド廻り」でした。これはぐねぐね曲がりくねる路線で、乗っていて楽しい。やった、ラッキー。今日もいいことがありそうだ。

王子駅前を出てまずは北本通りを北上するところまでは普通の「王49」と一緒だが、「王子四丁目」を出たところで、右折。更に「トンボ鉛筆前」で左折して隅田川を渡り、「ハートアイランド新田」の敷地に足を踏み入れる。もともと工場のあったところを独立行政法人UR都市機構が開発した、新しい街だ。団地群を中心に新たな橋や道路、公園、学校などが整備されている。

この、各拠点をつなごうと走るから、もうバスは曲がる曲がる。あっという間に方向感覚がなくなり、自分が今どっちを向いているのかも分からなくなる。前回も言いましたが、いやいやこれこそ路線バスに乗る醍醐味、ですなぁ(あくまで個人的意見)。

王子駅前を出て鹿浜へ

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「鹿浜三丁目」で下車 「鹿浜」の地名を全...
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